高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展―印象派を魅了した日本の美
2014.07.03
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.059特別号 教科書に関連する作品に出会える展覧会>
ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展―印象派を魅了した日本の美
関連作品「日本趣味・梅の花(広重による)」フィンセント・ファン・ゴッホ作
「Art and You 創造の世界へ」P.21掲載

「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」 竪大判錦絵/37.2×24.3㎝/江戸時代 安政4年(1857)11月/ボストン美術館蔵
William Sturgis Bigelow Collection 11.20206
Photograph©2014 Museum of Fine Arts, Boston

 1639年より鎖国状態にあった日本は1850年代に開国します。世界との貿易が始まると、日本の陶磁器、掛け軸、浮世絵、団扇といった輸出工芸品は西洋人の関心をとらえ、流行となりました。その頃の西洋における日本趣味をジャポニスムと呼びます。
 浮世絵の構図や色彩などは当時の西洋の画家に多大なインパクトを与えたことが知られています。特に印象主義の画家たちは大いに影響を受け、自己の作品に生かしました。クロード・モネ(フランス・1840~1926)、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(フランス・1864~1901)、フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ・1853~1890)の作品には、浮世絵の色彩や構図を参考にしたものや、作品の背景に描き込んだもの,模写がいくつも残されています。
 さて、ここで紹介する歌川広重(1797~1858)の「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」は開国して間もない1857年に発表されました。近景、中景、遠景と奥行き方向に区分された構図を持ち、近景に画面からはみ出すほど大きく梅の枝を描いているのが特徴です。中景と遠景の対象は小さく描かれており、近景のクローズアップを強調しています。この作品がフランスに住んでいたゴッホの目に留まるのは約30年後のこと。1887年にゴッホはこの作品を油彩で模写しました。
 西洋美術に影響を与えた浮世絵ですが、実は当時の日本美術も西洋美術から影響を受けています。鎖国状態の日本もオランダとは貿易を続けており、海外文化を蘭学として取り入れていました。同時に西洋の絵画技法も伝えられたのです。例えば、蘭学の普及期ともいえる1759年頃、円山応挙(1733~1795)は一点透視図法に従って描いた「三十三間堂通し矢図」を残しています。葛飾北斎(1760~1849)も三つわりの法という、消失点や水平線が複数存在する独自の透視図法を編み出し、北斎漫画に記録を残しているのです。広重も多くの作品で西洋的な遠近法を構図に取り入れています。
 東西の文化が互いに影響し合ってきた歴史を踏まえて、本展覧会を見ると、鑑賞がより深まるはずです。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展
  • 2014年6月28日(土)~9月15日(月・祝)

展覧会概要

  • 19世紀後半から20世紀初頭にかけて日本美術が西洋で流行し、多くの芸術家に影響を与えました。その現象はジャポニスムと呼ばれています。本展ではボストン美術館の所蔵品から、ジャポニスム関連の作品,150点を展示し、西洋美術に日本美術が何をもたらし、何が生まれたのかについて迫ります。

世田谷美術館ico_link

  • 所在地 世田谷区砧公園1-2
  • TEL 03-3415-6011
  • 休館日 月曜日(7月21、9月15日は開館、7月22日は閉館)

<次回展覧会予定>

  • 松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて
  • 2014年9月30日(火)~11月24日(月)(予定)

その他、詳細は世田谷美術館Webサイトico_linkでご覧ください。