●鏃 YAJIRI
造形教育用語必携
東京都足立区立千寿小学校
辻 政博
あ 「愛」は,むずかしい。与えすぎても,少な過ぎてもいけない。しかし,子どもたちを見ていると,この微妙なバランスが崩れてきている。甘やかしと放任の二極化が進んでいる。もっとも,子どもだけではなく,大人たちも愛が足りないのだから,それを分かち合うことができない事態が多々生じている。愛に満ちた教育者はたくさんいるが,愛の押し売りだけは禁物。うまく活用すればすごい原動力となる。→類語【恋,性愛,義,仁】い 「意識」は,人間の代表的な能力の一つ。反対に,無意識は,フロイト先生が発見したもの。意識も愛と同じく,過剰すぎると,自意識過剰や自己中心的な状態に陥りやすい。最近の様子として子どもも親も教師もこの傾向が増えてきている。その結果,円滑な人間関係が図れなかったり,自身も抑うつ傾向になったりしている。人間の全体性を考慮して捉えないと危険である。一般的な傾向に反して造形・美術関係者は,無意識,情動系が多く散布していて,むしろ,意識化を図ったほうがよいかも知れない。→類語【理性,知性,自我,言語】
う 「上を向いて歩こう」は,亡き坂本九が歌ったヒット曲。アメリカでもヒットチャートを躍進し流行した。悲しくても,涙がこぼれないように,上を向いてあるこうぜ!と歌いかける。R・C・サクセションの忌野清志郎もカバーしている。造形美術の重要な側面に,この歌のような機能,すなわち,子どもたちを励ます側面があり,それを十分に生かして活用したいものである。また「歌は世につれ,世は歌につれ」と,流行歌によってその時代の世相が刻印される。同じく,ある指導法もある世相傾向を表していると言えよう。だとすると,最近の「基礎基本」というキーワードから何が透けて見える?→反語【怨歌・弱肉強食】
え 「絵」も最も基礎的な人間が人間たりうるための能力の現われの一つ。だが,その捉え方は多種多様で,「えー」というものも多い。その一つに教育現場では,今だ「上手でいわゆる写実的なもの」が価値観を占めている。この幻想は手強い。わかりやすさを否定するものではないが,「わかりにくいものもこの世にはあって,それも大切だ」と認識することが大事。→関連語【身体・イメージ】
お 「大人」。いつの間にか子どもは大人になる。大人の中にも子どもはいる。「子ども」という概念が生まれてきたのは近代になってから。元服があった頃は,その境が明確であったが,現代は境界が曖昧になってきた。よい大人とは,「子ども心」をその懐にもっているということも言える。類語→【秩序・制度】
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