東京都国分寺市立第一中学校 / 大澤 晃
美術1、12・13ページに掲載している題材「見て、感じて」を基にした実践事例です。対象のとらえ方、表現の仕方をどう育てていくのかぜひ参考にしていただきたい事例です。
この題材について一学年の学習計画では、小学校からの流れを考えて対象を客観的に観察することがある程度できるようになっている段階で取組むことを前提とした。これまで本校では、はじめに対象を形体として線や面、陰影などで表すという学習を行い、続いて色の学習を行ってきた経緯がある。これら一連の学習から、対象をしっかり観察し、描写して表現するという題材に取組むことがこれまでの学習成果を生かす意味で大切だと考えた。色彩は明暗や混色と深い関連があり、自分の思いの色を表すという場合に、その学習効果が期待できた。
生徒自身にこの題材で学習する目的をはっきりと意識させ、各自の目標を達成するために試行錯誤を行わせることで新たな発見や喜びが生まれると考え、鑑賞作品を例に挙げた。鑑賞作品として教科書では対象をじっくり観察したヤンセンの「3粒のぶどう」や、対象から感じた印象を強調して表現した作品を作者のエピソードを交えて話し、正確に描写するだけでなく、その対象から感じ取った美しい色や形のよさを自分なりの表現で表すことの大切さを指導した。
対象を観察することが最初から充分にできるとはあまり期待できない。どんな対象もそのものについての理解が深まることで、一層深く観察することができると考えた。そこで形態的にとらえやすい対象として変化に富んだ季節を感じさせる植物の一葉を選び、校庭の落葉から各自気に入ったものを数枚探してくるように指示した。折しも本校では桜の落葉をはじめ数種の秋の彩りがあり、形や色の変化に富んだ対象が容易に採取できた。
対象をよく観察すると様々なことが思い浮かぶ。事前に「葉っぱのフレディ」の本を紹介して興味を持たせることにし、葉がそれぞれの生きている姿、状態について想像しながら観察する。
表現に必要な材料は様々にあるが、水彩絵の具の扱いが充分にできない生徒も多いと考え、100色の色鉛筆セットを3~4名の制作班ごとに1セット用意した。絵の具の混色については小学校でそれほど熟達した様子が見られない生徒が多く、色彩の学習後、基本的な混色についての理解がようやくできるようになっている。この題材では、客観的に対象を観察しつつ、対象を主観的なとらえ方で感じ取り、表現することが重要である。色彩の学習によって対象の色を観念的に表現していた生徒には対象の見方、感じ取り方が深まったように感じられる。しかし、あまり考えすぎて色彩が自由に使えなくなってしまうことも考えた。授業では光の当たった部分と影の色味の違いを認識させ、またその影の形から植物の立体的な形を意識させるなど指導した。対象の葉は全体の形としてはとらえやすいが、よく観察させるために対象の表、裏、横面を一枚の画用紙に構成して描くこととした。葉の形、色彩の美しさを自分なりにどのように表現するかを追求する中で各自の感性の違いが表出し、互いの表現のよさを認識した。時には生徒が対象を観察し、ごく自然に表現としてデフォルメを行うこともある。制作の中では対象を思いのままに独特の表現で描く生徒もいるが、それもまた表現の多様性であると独自性を認める指導をした。彩色の方法は色鉛筆、水彩絵の具を主に使用することとしたが、他の彩色材料を併用することも可能とし、各自が表現の目的に合った方法で表すこととした。特に最初の段階では色鉛筆の色幅が表現上のヒントにもつながる傾向があった。
鑑賞学習はどんな表現のアイデアや方法があるのかを知るためにも欠かせない学習と考え、それに気づかせることを中心に行っている。1年の教科書では、「見ることと描くこと」のページを関連付けて取り上げ、身の回りの対象をそれぞれの作者がどのように観察し、表現しているのかを鑑賞し、同時に対象のとらえ方をどう工夫するかということを考えさせるようにした。制作を終え、各自の作品を並べてみると一葉の描写でも実に様々なとらえ方、表現方法があると気づく。それぞれ表現上の違いと工夫がこの制作を行う中でより深く理解できるようにもなった。
ひとこと
各自が対象を選ぶ場合は、自宅から持ってきた鉢植えや校庭の樹木なども対象としました。基本的に対象のとらえ方や表現について学習がなされていれば、それほど困難ではありません。この題材では対象をどのようにとらえ、どのように描きたいのかを考えていくと創作の方向性が見えてきます。さらに発展的に、観察を基にしながらより独創的な視点で表現を求めていけば、新しい表現にもつながっていくでしょう。しかし、手に届く自然がいつも身近にあるとは限りません。場合によっては植物を育てることから始める指導例もあります。対象の観察から独創的表現にいたるこの題材は、私の場合、やや自然の豊かさに依存した感がありました。
前のページへ:コロコロボックスめいろ(小学校3・4年生向き)
Copyright © 2007 Nihon Bunkyou Shuppan Co., Ltd.All Rights Reserved.