神奈川県川崎市立向丘中学校 / 高野直美
美術1、28・29ページに掲載している「動く絵の楽しさ」を 基にした実践事例です。『EVAアニメータ・スクールⅡ』は、 形や色・文字などを自由に変化でき、提示型アニメーション作 成ソフトとして活用できます。詳しくは、巻末広告ページ、ま たは弊社Webサイトをご覧下さい。
美術科では絵画、デザイン、彫刻、工芸のどの学習においても、「全体と部分」の関係を考え、形や色、マチエール、かたまり同士を組み合わせ、創造的な「構成」力を育んでいるが、アニメーション制作では「時間軸に対する感覚」を養うことができる。この全体の長さとそれぞれの部分の長さとを関連づけて構成する「時間軸に対する感覚」は映像表現の基礎・基本である。造形的な構成要素からはこのような力を伸ばしていくことが大切であるが、一方、表現するメッセージとしてはどのようなものを大切にしたらよいのだろうか。
アニメーションの醍醐味の一つは、色や形が変化していく、あるものが別な物に変容、変身していく「メタモルフォーゼ」にあるだろう。その変化や変身、変容を鑑賞した人が、楽しい、美しい、さわやか、不思議、あるいはユーモラスだな、温かいなと感じるようなメッセージを届けることが大切であると考えている。
かつて、男性のかぶっていた帽子が風で飛ばされると、頭髪の無い頭が現れ、それを見た生徒達が笑っているというアニメーション作品発表の授業を見たことがある。また、いわゆる戦闘機が空中戦のようなことをしているシーンを制作している様子を見たこともある。絵画やポスター制作では取り上げるはずもないテーマがアニメーションだと出てきてしまうのは、テレビや映画での映像表現に私達の感覚が麻痺しているからだろうか。映像表現の基礎・基本は、時間軸に対する感覚を養う中で、楽しい、美しい、あるいはユーモラスな、温かいメッセージを届けることにある。そのために便利なコンピュータを活用していきたい。
ここで使用するEVAアニメータ・スク-ルⅡはほとんどの生徒は初めて活用するものだろう。生徒が個々にソフトを操作していくと、指導者は使い方の指導に翻弄され、インストラクターのようにコンピュータ室を走り回ることになってしまう。生徒達はアニメーションというと、複雑な動きや細かな部分に気を取られ、本来何を学習するのかを忘れてしまう。あるところまでは操作する部分を制限し、その中で発想を広げさせるような手だてが必要である。
極端な例だが、このソフトはたった2コマ使うだけでも、アニメーション表現の基本であるメタモルフォーゼを学習することができる。
(※参照 教育ナショナル情報センターITナビ中学校美術1年「楽しい不思議なアニメーション」)
生徒達は、○から魚や鳥、動植物、様々なものにイメージを広げていくだろう。この時に制作の目的である、「楽しい、ユーモラスな、温かい」メッセージを心がけるよう言葉を添えていく。そして、全体の長さを10コマに収める、あるいは、20秒以内にまとめるなどの枠を与えることも一方で大切である。
1)の取り組みだけでも十分にメタモルフォーゼの学習ができるが、作品を豊かなものにするには、背景があるとよい。また色彩のグラデーションの効果も使うと美しい表現ができることも知らせていく。
映像表現に音楽は不可欠である。無音のままに映像が展開していくのは、何か寂しい。このソフトには初めから様々な音楽が「うれしい」「かなしい」などのカテゴリーに分類され、多様に用意されている。ある程度の映像ができてきたところで、音を付ける方法を知らせると、生徒達は、一生懸命にイメージに合う音を探していく。
鑑賞する時間が十分とれない場合は、それぞれのコンピュータで操作し、感想カードに記入する等の方法もとれる。しかし、色々な場所で様々な音が入り乱れるので、できれば一斉の鑑賞会の時間をとりたい。作品の長さを15秒程度に決めておくと、制作する時にも生徒は無駄なく集中して取り組み、また鑑賞会でも次々に作品を展開することができる。しーんと静まり返った中、温かな笑い声がわき上がる時に、制作した生徒一人一人は、仲間に認められた嬉しさで、自信を高めていくだろう。
ひとこと
ここではソフトによる描画で制作することを基本にしたが、一方で班ごとに役割分担を決めて制作する方法もある。例えば、デジタルカメラが4、5台準備できるようなら、粘土や紐、砂などの実材料を使った実写アニメを制作することも楽しい。
粘土の色やキャラクターの大きさなどを統一することで、数コマずつを分担して制作しておき撮影すると、効率よく撮影ができる。生徒達は幼い頃に楽しんだ実写アニメも大変好きである。ソフトの操作が得意でない生徒の活躍の場ができ、また班で協力する楽しさも実感できるだろう。
(※参照 教育ナショナル情報センターICTキュービック中高共通美術項目:色や形の動き、変化、変容を工夫させることで、アニメーションに関する学習を展開する際に、ビデオカメラやデジタルカメラなどとアニメーションソフトや動画編集ソフトなどを効果的に活用する。
「粘土アニメーション」)
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