福島県須賀川市立仁井田小学校 / 國井伸行
図画工作3・4下、30・31ページに掲載している「木から生まれた世界」を基にした実践事例です。「自分が一番輝いたとき」をテーマに初めての木版画に取り組ませています。
本校は、江戸時代に活躍した銅版画家亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)が生まれ育った地であり、その業績を顕彰して毎年版画展が開催されている。児童はこれまでに紙版画での表現を経験し、出品された様々な種類の版画の鑑賞をしている。
しかし中学年の児童にとって木版画は初めての経験であり、「彫刻刀の使い方」や「思いや願いをどのように版で表現したらよいか」などの戸惑いもある反面、「はやく木版画をやってみたい」などの期待も大きい。本題材では、下絵をつくり、彫刻刀を使って彫り進めていく楽しさや刷ることの面白さなど、木版画ができ上がっていく過程の中に表現することの喜びを味わわせながら、児童の思いや願いをのびのびと表現させたいと考えた。
(1)「自分が一番輝いたときは、どんなとき?」
児童と教師の対話の中から児童は思いを高めイメージを具体化していく。上記のような発問をすると、「吹奏楽部でチューバを吹いているとき」「音楽の合奏のためにリコーダーを一生懸命練習したとき」「バスケットボールをしているとき」など、様々な思いが出てきた。
(2)「今話したことをスケッチで教えて」
児童はたくさんの話を聞かせてくれた。そこでそれを木版画に表すよう働きかけをした。児童は思いをのびのびとスケッチに表した。
(3)「スケッチをもとに下絵をつくろう」
スケッチの中には、あまりに小さく描かれた人物や細かな線描があり、彫刻刀で彫ることが難しいものも見られた。そこで、描き直すのではなく児童のスケッチを生かしながら下絵にまとめていくために次のような支援を行った。
スケッチをもとにAとBの手立てを組み合わせることで、画面の中で確認しながら下絵づくりを行うことができた。
(4)「版木に下絵を写そう」
版木への転写は、まず、下絵を裏返し、窓ガラスで透かせながら鉛筆でなぞり反転させる方法を提案した。そして版木にテープで固定し、なぞりながら転写し、さらに油性のサインペンではっきりと線描きした。版木に転写してみて、うまく彫れそうもないところは、さらにカラーペンで修正した。
(5)「彫ってみよう」
彫刻刀の安全な使い方を指導したあと、いよいよ彫りの活動を行った。児童がとても楽しみにしていた活動である。彫る楽しさを十分に味わいながら黙々と彫っていく。
(6)「彫ったように描いてみよう」
木版画の場合、「彫った部分が白くなること」「画面が反転すること」の二点が理解できず、彫る段階で活動が停滞してしまう児童が見られた。そのような児童に対しては、白絵の具で彫ったように描いてみることを提案した。すると、白と黒のバランスが分かる。この時点で線がつぶれてしまう場合は、彫刻刀でも彫ることも難しいので、版木に大きく描き直すこともできた。
(7)「協力して刷り上げよう」
教師の演示により、刷るときのポイントを確認した。
などである。刷り上げた作品を見て児童は、大はしゃぎであった。
(8)「ミニミニ美術館開館」
作品を机の上に並べ、付箋紙を一人3枚ずつ配布した。そしてメッセージを書きながら互いの作品を鑑賞した。「一つの作品に対して3枚になるまでは付箋紙を貼ることができる」というルールをつくり、全員がメッセージを受け取ることができるように配慮した。最後にメッセージを発表し合う。A子は「『楽器を吹くときのほっぺがふくらんでいるみたいで上手です。』と書いてもらいました。」と、にこにこして発表した。
ひとこと
須賀川市には優れた木版画の実践をされてきた先輩が多く、退職されたばかりのベテラン教師を招いて実技研修会を行いました。木版画の下絵づくりから彫り、刷りまでを実際に行ってみて、白絵の具ではなく、白チョークを使うことで、手軽に消したり、書き足したりできること、最後の「刷り」が大切であることなどを実感しました。また、用具の扱い方や片付け方など先輩方が長年の実践で積み重ねたノウハウを学ぶことができました。
木版画は作業が丁寧な児童や大胆な児童などの特性によって創作に要する時間に差があります。作業が遅れている児童に対しては、安全に配慮しながら授業時間以外の活動も行うようにしました。
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