島根県出雲市立久多美小学校 / 宮本崇広
図画工作5・6上、26・27ページに掲載されている「心広がる場面」を基にした実践事例です。
『お話の絵』は、自由に表現する楽しさが味わえ、子どもが想像力を存分に発揮でき、つくり上げた新しい世界に浸れるすばらしい造形活動だと考えている。更に、製作を通して、物語を読みとったり、その話がもっと好きになったりと、副次的な効果も期待できるので、各学年で取り組むようにしている。ただ、導入時に全員で物語の主題にせまることで(とても大切な手立てだと思うが)、ほとんどの児童が同じ場面・同じ構図になってしまったり、ストーリーを忠実に表現しようとするあまり、説明的な描写になっている実践を見ることがある。私は子どもの作品は十人十色、同じねらいに向かいながらも、個性豊かで楽しい作品になることをめざしている。『お話の絵』もそうなるよう試行錯誤を繰り返しているところである。
年度始めの図画工作の時間に、絵の具遊びをすることがよくある。絵の具とたわむれてできたマチエールや模様は、新鮮な驚きがあり、そこから新たな創作意欲もわいてくる。私は、絵の具遊びだけで終わらせずに、できた図柄を次の作品(デザインや立体作品)へと生かすことが多い。『お話の絵』は、まず物語のイメージができてから、表現方法を選択し、製作していく過程が一般的であるが、今回は発想を逆にして、絵の具遊びで生まれた図柄から物語のイメージを再構築する実践を紹介する。
本校の児童は朝自習の時間(登校し、朝礼が始まるまでの約20分)に読書をする習慣が身についている。教室の片隅に、本題材で扱う本のコーナーを特別に設け、事前に数冊は読んでおくよう指示しておいた。教科書にも参考作品がある宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をはじめ、斎藤隆介の『花さき山』など、この時期に触れてほしい文学作品を10冊程度準備した。学年の実態に合わせ、読み応えの幅があり、夢のある物語を複数用意しておくことが大切だと考えている。
まずは、絵の具遊びである。今まで経験したことがなく、5年生が興味を持って取り組め、作風に合いそうな模様づくりができる技法を紹介した( 1)ストローを吹くことによって生まれる枝分かれする模様、2)絵の具をたらしたり、筆を振ったりしてできる模様、3)網とブラシによる霧状の模様※霧吹きでもおもしろい、4)布などで押し付けて跡をつける模様、5)ローラーによる模様、6)塗った水に絵の具をにじませる模様)。すでに「この物語を描きたい。」と決めている児童がいて、例えば星のような模様は紙の上部、土のような色は紙の下部といったように、場面をイメージして表現しようとすることがある。そうすると、どうしてもありきたりの構図になり、こじんまりとした作品になりがちなので、「物語のことはあまり考えなくてもいいよ。思い切って絵の具遊びを楽しもう。」と投げかけていった。次第にストーリーから離れ、純粋に絵の具遊びに夢中になっていくのが分かった。後で修正はできるので、様々な技法を用いて画面全体に模様を施すことがポイントだと思う。用紙は1人2枚以上準備し、段ボール、クラフト紙(更紙などを包装している紙を普段から捨てずにためておく)、色画用紙を児童の要望も聞きながら配布した。複数の用紙があると、多くの技法を試そうとし、描きたいイメージに近い図柄の用紙を選べる。また、余った用紙は切り取って作品の一部として利用できるので、時間の許す限りつくっておく。今回の実践では、網とブラシでつくる模様づくり、ストローを吹いてできる模様づくりが人気であった。その技法の模様は、夜空や木々のイメージなどに合わせやすいようであった。
作品の構想を練るために、事前のラフスケッチは重要であるが、思うように発想できず、つまずく児童が多い。そのような児童には、事前につくっておいた図柄が発想の助けとなる。「この模様は何に見える?」「○○の場面に合いそうだね。」などと助言をしながら、思いを引き出していく。また、絵で表せない場合、場面の様子を文章で書いたり、描きたい要素を書き上げたりすることもあるが、今回はそこまでの支援は必要なく、それぞれの構想を固めることができた。下描きをし、着彩していく過程では、教科書の作品が参考になった。際立たせたい登場人物や物の扱い方、色調のまとめ方、技法の効果的な使い方など、時々全員で話し合いながら、教科書に戻っていくことが大切だと思う。児童は、「きれいな模様が少しなくなるからもったいないなぁ。」などと言いながら、下地にある図柄をつぶして絵を描き込んだり、新たに技法を追加したりしながら、ダイナミックな作品を仕上げていった。
ひとこと
須賀川市には優れた木版画の実践をされてきた先輩が多く、退職されたばかりのベテラン教師を招いて実技研修会を行いました。木版画の下絵づくりから彫り、刷りまでを実際に行ってみて、白絵の具ではなく、白チョークを使うことで、手軽に消したり、書き足したりできること、最後の「刷り」が大切であることなどを実感しました。また、用具の扱い方や片付け方など先輩方が長年の実践で積み重ねたノウハウを学ぶことができました。
木版画は作業が丁寧な児童や大胆な児童などの特性によって創作に要する時間に差があります。作業が遅れている児童に対しては、安全に配慮しながら授業時間以外の活動も行うようにしました。
前のページへ:大切なことはすべて 図工の時間が教えてくれました
次のページへ:文字を生かしたデザイン(中学校1年生向き)
Copyright © 2007 Nihon Bunkyou Shuppan Co., Ltd.All Rights Reserved.