●教材研究

家族のきずなに気づく生活科の学習

〜1年「たのしいかぞく」をとおして〜

東京都稲城市立向陽台小学校
小鷹裕子


1 はじめに

 子どもたちの生活の場は,家庭,学校,地域である。特に家庭は,子どもがあらゆる面での基礎的な生活能力を培う大切な場である。未熟なために失敗し,まわりの迷惑になっても許される。何ができたかよりも,やろうとする意欲がかわれ,認められる経験ができるのは,子どものすべてを認め,温かく見守る家族の愛情ゆえである。

 しかし,こうしたことが期待できるのは,家族とのかかわりがあるからこそ可能なのである。日々の生活に追われ,日常性に没するあまり,子どものさまざまな能力や意識を高めることに気を配ることが不足している家庭も少なくない。 

 そこで,1年生も二学期になって,教室の掃除や簡単な係り活動を始めた。ようすを見ていると,体を動かして活動することそのものの喜びと,そうした活動をとおして,具体的な形で自分を表現し,認めてもらいたい期待とを感じることができた。こうした活動の場をさらに広げ家庭でも,子どもが家族のために仕事をする機会をつくり,家庭生活をふり返り,よりよい生活をしていくことができるようになってもらいたいと考えた。

 また,生活科では,自分とのかかわりで身近な人々,社会や自然をとらえ,自分への気づきを深めることを重視している。そこで,家族の仕事だけでなく,家族のことについて考え,自分のよさを知り,自分自身のよさを伸ばそうとする積極的な自分のイメージを形成していく学習指導にとり組んだ。


2 自分への気づきとは

 小学校低学年児童の自分への気づきを,今までの実践から次のようにまとめた。

(1)自分と対象とかかわるなかで気づくことである。これは,自分と対象とのかかわり方,また,かかわりから気づく自分のことなどである。

(2)自分を見つめて気づくことである。これは,自分の特徴,身体,学習成果,成長などである。



 上記の二点ととらえ,それらによって自分のよさや取り柄に気づき,自分のイメージを形成していくことである。


3 単元の実践

(1)ねらい
 
・家庭での仕事を紹介したり,仕事の実践をしたりすることをとおして,自分と家族とのかかわりについて考え,家族の一員として,よりよく生活することができるようにする。

(2)指導計画(7時間)

(1)先生の家庭での仕事を聞こう
(2)家庭での仕事の紹介の準備をしよう

家庭での仕事を紹介しよう (4)
  ↓

(3)家庭での仕事を紹介しよう
(4)自分の仕事を紹介しよう

仕事をしよう (2)
  ↓

(5)(6)仕事をしてみよう

家庭で,一週間仕事をする。
  ↓
これからもがんばるよ(1)

(7)家庭での仕事の報告をしよう

(3)展開

指導のポイント1

  事前にアンケートをとる

(1)学習のねらい,計画,協力してもらうことなどを知らせ,十分に理解をしてもらう。
(2)児童の家庭での仕事の実態を調査する。
(3)児童の家庭での仕事について,おうちの方の意見もきく。

 子どもの家庭での生活は,まさに十人十色である。子どもに仕事をさせるとかえって手間がかかると反対の意見を述べる母親もいる。配慮すべきことも多く,家庭との連携をていねいにとる必要がある。

指導のポイント2

  児童の間の交流をはかる

 自分と友だちと比較してとらえ,それぞれに特徴があり,よさがあることに気づくようにする。

(1)グループ活動を活発にする
 クラス全員の前で発表をすると発表する人と聞く人という構図になる。すると,自由なつぶやきがでにくくなり,友だちとのコミュニケーションがとりにくくなる。第2時の家族の仕事紹介の絵をかく作業のときや第3時の家族の仕事紹介をグループごとにおこなった。自由なつぶやきや会話からも気づきは,深まっていった。

第3時 家庭での仕事の紹介での会話

M子 「わたしの仕事は,買い物よ」
Y男  「おかあさんがやれっていうの?」
M子 「ちがうわ」
Y男  「じゃ,やらないで遊んでればいいのに」
M子 「じぶんでやりたいから,やるの」

 Y男とM子との会話から仕事のとりくみ方の違いに,Y男が,気づいていることが伺える。

(2)友だちの仕事ぶりを見る
 
家庭でしている仕事を学校でやってみることにした。(第5・6時)やるグループと見るグループに分かれ,前・後半で交代した。Y男は,友だちが包丁できゅうりを切るところをじっと見ていた。その日,家へ帰って「友だちの切ったきゅうりがとてもおいしかった。ぼくも,きゅうりを切るお手伝いをする」と言って,はりきっていた,というY男の母親の話からも,Y男が友だちから刺激を受けて,新たな意欲をもったと考えられる。

(3)仕事の報告会で友だちの報告を聞く
 
家庭での仕事をVTRで発表した子どももいた。Y男と同じきゅうりを切っているようすを見て,「あっ,きゅうりをの押さえ方が違う」と,つぶやいた。
 「でも,たくさん切ったなあ」ともつぶやいた。仕事が一致していたので,自分の仕事とのようすと重ね合わせ,共感するとともに自分もよくがんばったという満足感を確認できたようである。

指導のポイント3

  家庭で実践する

 家庭でのY男の仕事のようすを,母親が手紙で知らせてくれた。

Y男の仕事ぶり

 2日目 まだ,野菜を切る手つきは,危なっかしいのですが,少しずつ自信がついたようです。きゅうりを食べる人のことを考えて「これはお兄ちゃんの,大きいの」 お父さんの……」と言いながら,厚いのや薄いのを切っていました。 夕食のとき,お父さんにも「おいしかったよ。ありがとう」と言われ,おかずの中で一番に売り切れました。

 Y男が書いた仕事のカードからも,自分の仕事が家族のみんなに喜んでもらえて,満足したことが見てとれる。 

指導のポイント4

  ふり返る活動をとり入れる

 第7時では,仕事の報告会をしたが,報告の方法は,いろいろとあった。

 ・子どもが自分で話した。
 ・家庭での仕事のようすをVTRで見せた。
 ・子どもと母親で紙芝居にして,読んだ。
 ・母親が来てくれて,話した。

 いろいろな方法をとり入れたことは,子どもの多様な活動との接点をより多くもつことができるとよいと考えたからだ。

 母親が来て,話してくれた子どもの表情は,少し照れているようで,とても嬉しそうなまなざしで母親を見つめていた。
教室で子どもの仕事について報告する

 児童は,自分の体験をふり返ってもう一度見直すことによって,自分への気づきを深めていく。ふり返る活動は,体験したときの実感や成就感を確認でき,新たな意欲や自信へとつながる。ふり返る活動によって児童は,自己評価を強化して,自己受容や有用感を味わい自分のよさをさらに伸ばそうと積極的な自分のイメージを形成する。

 児童が,何を自分のよさと気づいているのかをとらえ,それを支えるような指導が重要である。

 第7時は,そのほとんどがふり返りの活動であったが,それまでにも,小さなふり返りは,ところどころに取り入れている。第2時で,家族の仕事の紹介をしようと,日頃の家族の生活をふり返っている。また,学校で自分の仕事を見せあったときにも,自分ががんばったことや友だちのよいところを見つけようとしている。ふり返りは,活動と同時にカードにかかせることも有効である。

指導のポイント5

  評価カードの記入のタイミング

 この単元では,毎時間評価カードを使うことはしなかった。毎時間おこなうことが有効な単元もあるが,ここでは,ふり返る活動と結びつくように次の三場面で活用した。

 ・友だちの仕事に紹介を聞いて
 ・学校で仕事をしたとき
 ・家庭で仕事をしたとき

 三番目のカードについては,家庭での仕事の実践の直後が好機と考え,子どもたちに次の三点を指導して持ち帰らせた。

 (1)自分の仕事をした後で,「仕事をしたときの気持ち」を書くこと。
 (2)書いたら家族に渡すこと。
 (3)家族の人が「おうちの人から」を書いて封筒に入れてくれたら,持ってくること。

 おうちの方には,学級便りで次のようにお願いした。

 (1)仕事をしてもらって,助かったことや嬉しかったことを書く。
 (2)子どもの書いた自己評価と仕事ぶりに合わせたことを書く。
 (3)自分のことができるようになってもらいたいことを書く。
 (4)ひらがなでていねいに書く。
 (5)封筒に入れ,封をして持たせる。

 第7時の報告会の最後にこのカードを読ませた。友だちの仕事の報告を聞いたり,友だちの母親の話を聞いたりして,自分の母親は,何て書いてくれただろうか,読みたいという気持ちが高まったところで読むことが好機と考えた。


4 おわりに

 本単元のまとめで書いたY男の手紙から,自分の仕事ぶりをふり返り,新たな意欲をもったことが読みとれる。

 Y男が家族のきずなに気づき,家族の一員としてよりよく生活をしていこうという気持ちをもった要因を分析してみた。

 この実践から,子どもの思いや願いにそって学習活動をくみ,自らかかわり,考え,行動するように活動の場を設定していくことと,きめ細かな支援が大切であると考えられる。   

 これからも,子どもが表現したものから,さまざまな気づきを見取る努力をしていきたい。

 


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