●小学校における実践

かかわりを大切にした横断的学習の取り組み
〜政治学習における地域の教材化を通して〜

沖縄県与那原町立与那原東小学校
慶田 盛元

 

1 はじめに

 わたしたちは,人や社会,自然,文化等様々なかかわりをもって生きている。このような社会生活について総合的な理解を図ることを通して,「公民的資質の基礎を養う」ことを究極のねらいとしているのが,社会科の学習である。社会科は,人間と人間,人間と社会・自然・文化等とのかかわりを学ぶ教科であり,様々なかかわりを大切にし学習活動を組み立ててきた。そのことは,われわれ教師が,子どもたちの生きる家庭や地域社会から社会的事象などの素材を教材化し,子どもたちにかかわらせ,教室だけでなく地域社会を学習活動の場としてきたことでもわかる。

 子どもたちが,問題解決的な学習過程の中で,社会的事象との出会いを大切にし,教師や友だち,家族や地域の人々とかかわっていくことで,社会的な見方や考え方が育っていくだろう。そのかかわりで得た知識を,今後の生き方に生かしていくことができる子どもたちを育てていきたい。

 

2 具体的な取り組み

 教室の窓から,毎日船が動いている。漁船ではないらしい。子どもたちに聞いてみたら,ほとんどの子が知らない。ただ,埋め立てをしている事だけはわかっているようである。調べてみると,マリンプロジェクトで,町・県・国のかかわる一大プロジェクトであることがわかった。この素材をどうにか教材化して子どもたちにぶつけてみたい。そんな思いから授業化を試みた。

★単元名「マリンタウンプロジェクト」

(1) 教材について

 子どもたちは,くらしや政治の学習として生活科の地域探検活動,第3学年「わたしたちのくらしとごみ」,第4学年「くらしの中のごみと水」や第6学年の歴史学習にも現れ学習してきた。本小単元は,第6学年「わたしたちのくらしと政治」の第一小単元「身近なくらしと政治」として,教科書では「公民館」を教材に政治が身近でも行われていることを学習していく。しかし,あまり子どもたちに人気がないように思われる。それは,子どもたちと政治とのかかわりが,日常生活の中で形として見えにくいため,児童にとってなじみにくく興味関心が薄いためであろう。

 そこで,マリンタウンプロジェクトを教材化することで,子どもたちが地域に出かけ,地域にかかわることで,より身近に政治が感じられる活動ができると考えた。

 

(2) 単元の指導にあたって

 子どもたちに主体的・意欲的な学習をさせるためには,具体的な事例を取り上げることが大切であろう。そのためには,子どもたちを地域に出し,聞き取り調査をさせ,その地域と人とのかかわりを通して社会事象をとらえさせていく。子どもたちが地域と直接かかわることで,そこで働いたり生活している人の様々な願いや様子に接し,考え,認識を深める。これらの活動を通して,身近に政治が行われていることを感じとらせたい。また,そのことが子どもたちの社会的な見方や考え方を育てることにつながると考えている。

 

(3) 総合的学習を意識した単元構成

 本小単元は,これから教育現場に導入される総合的学習への取り組みの対応として横断的な学習法を試みた。社会科を核として国語,道徳,学級活動の領域を相関させて本小単元を構成した。社会科の問題解決的な学習における「つかむ段階」に学級裁量で見学をいれ,調べる段階に国語の単元「目的をはっきりさせて聞こう」を組み込み,さらに,道徳を取り入れることで,与那原町に対する愛着を育てる授業を行う。また,学級活動で1時間とって町づくりについての話し合いの時間をとることにした。そうした学習をすすめることで,教科内容が子どもたちに統合化されるだろう。

 

★小単元の構成

・社会科(8時間): 小単元「マリンタウンプロジェクト」

目標@

身近にある「中城マリンタウンプロジェクト」について調べ,与那原町や沖縄県,国の政治の働きが反映されていることについて理解する。

A

地域で働く人(建設現場,漁業,役場,商店街,親など)と積極的にかかわりをもたせることで,社会的事象に対して自分なりに意味づけして見たり考えたりする力を育てる。
・国語(3時間): 単元名「目的をはっきりさせて聞こう」

目標@

大事なことはメモを取りながら目的をはっきりさせて聞くことの大切さを理解することができる。

A

大切なところを落とさずに,話の内容と相手の意図を正しくとらえながら聞くことができる。
・道徳(1時間): 「与那原町をよりよくする心情を育てる」
・学活(1時間): 「将来,みんなが住みたい町を考えよう」
・学校裁量(1時間): 「与那原の埋め立て地を見に行こう」

小単元名「マリンタウンプロジェクト」(13時間)

○社会科(8時間)○国語(3時間)○道徳(1時間)○学級活動(1時間)○学校裁量(1時間)

内容 教科 時数
・子どもたちのアンケートから与那原町の町づくりに興味関心を高める。 社会
・実際に埋め立て現場を見学する。
・学習問題をたて,予想をかく。
学裁
社会

・学習問題を解決するための学習計画を立てる。 社会
・情報収集のやり方を考える。 国語
・聞き取り調査や資料集めをする。 国語
・与那原町をよりよくしようとする心情を育てる。 道徳
・聞き取り調査や資料集めをする。 社会
・ディベート的討論会に向けてのまとめをする。 社会
・ディベート的討論会をする。 社会
・町づくりについて意見書をつくる。 学活

 

3 授業の実際

(1)  つかむ段階

 導入で,マリンタウンプロジェクト埋め立て現場に全員で行き,どうしてこれをつくっているのか,問題点はないのか発問した。また,自分がこの土地を利用するならどのような利用をしたいか考えさせ,役場の考えの違いから学習問題づくりへと発展させた。

 

(2)  しらべる段階

 子ども自身が地域に出かけ,地域に働く大人(親も含め)とのかかわりを通して調べていった。国語で電話のかけ方やメモの取り方などの学習を進め,道徳では与那原町をもう一度よく見つめ直し,よりよくしていく態度を育てる授業を行った。そして,子どもたちの意欲的な調べる活動を促すために,マリンタウンプロジェクトに賛成か反対かに子どもたちの思いで分け,聞き取りをさせていった。

 子どもたちは,最初,町役場,商工会,漁業組合,与那原署のほうへ出向き聞き取りを行った。子どもたちは,そこで感じとったことは「住民は本当にどう思っているのか」ということである。そこから,親や親戚への聞き取り,スーパー等の前での街頭調査,漁民の方への聞き取り,通り会の店一軒一軒の聞き取り,既存の埋め立て地の調査へと発展していった。聞き取り方は,自分たちで工夫してFAX,ビデオカメラ,テープレコーダー,アンケート等様様な方法で取り組んでいた。

 

<◯個人課題 ☆学習状況の一部>

Y.N
○できるまで何年かかるか?
☆役場での聞き取りで,賛成の立場が固まりFAXを利用して調べる。
M.A
○何年かかり,何を作るのか?
☆建設現場の聞き取りから,海への環境の影響を考える。
M.F
○スーパー,漁民は困らないか?人口が増えても大丈夫か?
☆商店街の聞き取りを行い,全部回る。
Y.Y
○どんな建物ができるのか?
☆役場で公害の話を聞き,下水処理施設に関心がうつる。
Y.O
○みんなは,どう思っているのか?
☆親の意見から疑問を持ち,漁協へFAXを利用して調べる。
R.U
○商店街は,どうなるのか?
☆埋め立ての現状をみて,漁業へ関心がうつる。

 

(3) ふかめる段階

 子どもたちが単なる政治的仕組み・機構調べに終わらないようにする。そうならないために,教師は子どもたちがどのような問いをもち,どのように追究しているのか,ノートや観察を通して支援していった。また,子どもたち同士が調べたことを交流する場をもたせるため,「マリンタウンプロジェクトによって住みよい与那原町になる」の論題でディベート的討論会を行った。相手を納得させるために,写真,ビデオ,紙芝居,ペープサート,TPシート等のいろいろな方法で発表を工夫していた。

(4) ひろげる段階

子どもたちに地域ヘの愛着と関心を高めるため,調べたことをまとめるだけでなく,それを外部に発信していった。ここでは,学級活動の時間に,意見書をつくり町役場に提出した。与那原町の町民の一人として町づくりに参加させた。

 

4 おわりに

 地域素材を教材化することで,これまでになく子どもたちが,地域とかかわり,人とかかわっていけた。特に,親とのかかわりがもて,自分の住む地域のことについて,家族と話し合いがもてた。横断的な学習法を取り組むことでダイナミックに単元を構成することができ,子どもたちにゆとりを持って追究させることができた。感想から子どもたちが政治に関心をもちはじめ,自分たちの町づくりに関心を持ち,もっと住みよい町づくりにしていきたいという態度がうかがえた。

 


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