●いま学校で

「地域の学校」としての働きかけ


青森県弘前市立船沢小学校  小田 光子


 本校は,市の郊外のりんごと水田に囲まれた田園地帯に位置しています。りんごの生産では先覚的地域で,スターキング,金星というりんごの品種の発祥の地でもあります。
 子どもたちの家庭の大半はりんご農家です。そのため,核家族化した現代社会の中で,祖父母等と同居する家庭が多くあります。また地域住民の多くは顔なじみで,お互いの家族をよく知っている間柄と言えます。しかし,近年,農業は祖父母がおこない,父親は会社員,母親はパート勤めをする共稼ぎ家庭が増えています。



豊かさを求めて生活に変化が

 このように豊かな自然と社会環境に恵まれたこの地域も,現代社会の急激な変化につれて考え方や生活様式が変化してきています。経済的豊かさや安定を求めて共働き家庭が増加し,生活に便利さが優先されてきた中で,親が子どもに接する時間が減りつつあります。それが今,家庭教育の在り方が問われる所以のひとつだと思います。
 子どもたちの中には,日の昇らない早朝から起き出して,クワガタやカブト獲りに精を出し,そのクワガタ等をスーパーに売って小遣い稼ぎをしている子がいます。そのことを学校で勧めるのではありませんが,自然の中で遊び,子ども自らが確かな生きる力を培っています。
 その一方で,本校の空き教室に設置されている学童保育「なかよし会」に通う子どもたちがいます。子どもたちは,放課後や土曜休業日そして夏休みや冬休みを学童保育の指導員やその仲間と過ごしています。保護者にとっては安心して仕事に出かけられると,希望者は年々増加しています。
 指導員による健全育成の支援自体までを否定するのではありませんが,子どもの時代には子どもだけの世界をたっぷり味わう体験を大切にしてやりたいのです。限られた枠の中で行動するのではなく,子ども自らの遊びの中で痛さや悔しさ,失敗を重ねながら育つことが,本来の体験から学ぶことではないかと思います。子どもたちには,この豊かな自然と地域のよさの中で,伸び伸びと育ってほしいのです。



家庭・地域の教育力の向上を目指して

 子どもの教育は,学校だけでなく家庭・地域と広く子どもの生活領域全体で育成されなければならないものです。そのため,学校は,これからの「開かれた学校づくり」を推進する中で,家庭地域の教育力の向上を図るための働きかけを重視したいと考えています。教育目標の実現に向けた取り組みや実施状況を機会あるごとに説明し,家庭や地域の理解と協力を得ていくことが大切です。本校では次年度から,学校評議員を設置し保護者や地域住民の意向を把握し,反映させた学校運営に取り組むべく準備を進めています。
 行政による子育て支援政策の充実も一層求められている時代ですが,今こそ大切なのは,ものは豊かでなくとも親が真剣に向き合うことだと思うのです。確かに,農家の農繁期や共稼ぎ家庭は仕事が忙しく,子どもと関わる時間がとれないのも事実ですが,豊かであることが当たり前の時代に生まれた子どもたちの心に,親の仕事の厳しさや真剣さが,どれだけ届いているかは疑問です。「手をかけるより目をかけよ」という言葉があります。子どもの手をとり足をとり大事に育てるのも親の愛情ですが,それより目をかける親の愛情こそが家庭教育で求められているものです。
 21世紀を担っていく子どもたちが,地域の文化や伝統を受け継ぎ,心豊かに健やかにたくましく育っていけるように「地域の学校」として家庭地域への働きかけを大切にしていきたいものです。




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