●いま学校で
豊かな感性を育む
茨城県東田町立西小学校
矢野努志雄



人を思いやる豊かな心を育てる

 教育は子どもの個性を尊重し,個に応じた対応をしながら一人一人を伸ばしていくことが大切である。こうした中で,最近,子どもたちを見ていて,我が儘と個性を履き違えているのではないかと感じることがある。
 人が人として生活していくためには,知・徳・体のバランスが必要である。とりわけ,自分勝手な考えではなく,人を思いやる豊かな心を持ち,広い視野に立った自主性を育てることが大切であることは,自明の理である。本校の実践をもとに豊かな感性を育むことの意義について考えてみたい。
 本校は稲作中心の水田地帯にあり,創立110余年の学校である。昭和6年に「校歌」が制定され,現在に歌い継がれている。70年以上も前に作られたものだが,歌詞の中に今の時代につながる《原点》を見ることができる。
 『至誠のこころ 勤労の くわふり上げて打ち下ろす そこには拓く 協同の げにうるわしき 自治の花。色とりどりに咲かせては 体験全我の実を結び 向上進展 ゆるぎなく………。』
 当時,「生命体験の教育」という本を出版し,体験することにより学を磨く精神を培ってきた経緯がある。今,改めてこの歌詞の中に生命体験教育の大切さと真髄が感じられる。まさに,不易の部分の良き伝統が受け継がれていると言える。


研究の取り組みから

 本校は,総合的な学習の時間を中心に,地域(心のふるさと)再発見を目指し,豊かな感性と生きる力の育成を研究主題として,実践している。
 感性豊かな子を育成するために,次の4点を目指すものとして取り組んでいる。

 1.物事に感動できる心を持つ子
 2.人の痛みが分かり相手の立場に立って考えられる子
 3.自然や動植物を愛し育てられる子
 4.思いやりの心を持ち自分のめあてにそって推し進められる子

 目で見,体で触れる多くの体験活動を通し,喜怒哀楽の感情が自然に表現できる子の育成は,何事にもかえがたいものである。共育(共に育つ)共生(共に生きる)を合言葉に,地域との触れ合いを大切にしている。
 本校の近くには,水郷荘(特別養護老人ホーム)という施設があり,ボランティア活動や里孫活動(身寄りのない老人,活動に参加できない事情がある家庭の里孫になること)を定期的,継続的に行っている。 (子どもの作文より)

 はじめてSさんにあった時,正直,何を話したらいいか迷ってしまい,自己紹介すらできませんでした。でも,だんだん心のやさしいおばあちゃんだとわかってきて,私も,ちゃんと話を聞いたり,話をしたりしよう。今日は,おばあちゃんのお世話をちゃんとしようと思いました。(以下略)

 体験した作文を読むと,こうした学習の中で,人を思いやる気持ち,感謝する気持ち,人として大切なものを理解する心などが育っている様子が文章の中の随所に感じられる。
 「なすことによって学ぶ」とはよく言われるが私は,子どもたち一人一人が多くの体験活動を通し,そこから,自ら課題を見つけ,学び,気付いていくことの過程の中で,感性を磨き,人や地域や社会のよさを再発見し,今後に生かすという活動をさらに深めていきたいと考えている。
 体験活動がすべてではないが,豊かな感性を育てるためには,必要不可欠なものと考えている。教師自らも感性を磨いていくようにしながら。




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