社会科教室

>> No.50 >> 座談会

※当ページは年3回発行する機関誌(冊子)のWeb版です。
毎回、その号の冊子の中からピックアップしてご案内しています。

社会科教室50号記念座談会
これからの社会科を考える Page.1

コーディネーター(歴史的分野) 筑波大学附属中学校 前副校長 / 山口 正
コメンテーター(小学校社会科) 兵庫教育大学大学院 教授 / 關 浩和
コメンテーター(地理的分野) 筑波大学大学院 教授 / 井田仁康
コメンテーター(公民的分野) 茨城大学 教授 / 木村勝彦

山口正、關浩和

 

社会科教室発行50号企画として座談会を開催しました。いずれも経験豊富な4人の先生方に新しい学習指導要領をふまえた新たな時代の社会科について大いに語っていただきました。

子どもを取り巻く状況と社会科の役割

山口
最初に、一般的に先生方が今の子どもたちをどのようにとらえているのかということをお聞きしたいと思います。
 私は、「学力低下」など大人が言っていることに振り回されている気がするので、もうちょっと伸び伸びしていいかなと思っています。そういうなかで子どもたちは、社会に対する批判的な目をもっと自由に出してほしいと思っています。
井田
今の学生は、いろいろな情報がたくさんあるけれども、反対に選択肢が多すぎて、どれを取っていいかわからないという状況にあるように見えます。学習の方法にしても、 「何でもやっていいよ」と言われると、結局何をやっていいかわからないというのが現実だと思います。多様な価値観と言われていますが、言われながら自己中心的になってしまい、ほかのことを見られない、ほかのことを考えられないという、ある意味かわいそうなところはあります。
 自由という名の過保護の中の子どもたちをどう教育していくかというのはけっこう難しい問題で、そういう意味での社会科の役割は、非常に大きいのではないかと考えています。
木村
今、いろいろな情報が氾濫して、PISA調査のデータもいろいろ出てくるなど、以前は一部の教育関係者のみが持っていた情報が、すぐに地域や保護者全体に広がっていく状態になっていることから、子どもたちは方向性が見えにくくなっているかなと思います。社会科というのは、そういった社会を映し出す鏡のような役目をもっているのだろうと思っております。
情報化社会というものが、子どもたちを取り巻く状況のなかで一番大きいことだと思います。そして、子どもたちはその社会に対応できていない。それは、子どもが大人からの厳しい指導を受けていないからだと思います。大人が子どもに色々と気配りしすぎて、成長が止まっているような感じを受けます。ですので、子どもたちが自分で考え、自分の言葉で話せるよう、指導していくことが求められ、そして情報化社会に参画できるようにするために、これからの社会科の役割があると考えています。

ページトップへ

井田仁康、木村勝彦

新学習指導要領の感想とポイント

山口
では、今回の学習指導要領の改訂について伺います。
今回の特徴としては、「教育基本法」や「学校教育法」の改正があります。それを受けての改訂は非常に大きいと思います。中学校の地理はすごくいい改訂になっていると思います。小学校の方は、もう一歩踏み出してほしかったです。例えば、3・4年生の目標がまだ中学年として一括して示されている点など、物足りない印象はありますが、これまでの改訂に比べ、プラス面のほうが多いのではないでしょうか。
木村
「教育基本法」の改正が影響している部分があり、それから、PISA調査をかなり意識しているような感じがしました。
 「生きる力」ということを表面だけで受け取って、それがある意味で放任主義になってしまう。これは当然、学力問題その他とかかわってくる状態が起きてきたのではないかと思っています。それと、伝統と文化の尊重といったような部分が入ってくることで、実はそこが少し、その流れのなかで融合しにくいところかとも思っています。
井田
全体的な印象としては、まず、基礎・基本をどう学習指導要領に反映させているかということで、地理については内容的には非常に充実した内容になってきたと思います。つまり、日本を扱って、かつ世界を扱う。今回は日本と世界とを両立させるようなかたちで出てきたということです。それから、系統地理、地誌というのがありますが、系統地理的な見方も地誌の内容もすべて組み込まれています。反対に、それだけ内容が入っているので、ちょっと増えた時間数でそれが消化できるかというのは、やはり問題になってきますが、基礎・基本に関しては工夫されていると思います。
 また、コミュニケーションはすべての教科に共通するということで、社会科でも、コミュニケーションが自己表現や発表力も含めて重視されていると思います。
 そして社会参画です。それが、特に社会科の分野では強調されてきたかなという感じがします。
山口
今度の学習指導要領はいい方向に向いているという話ですが、各分野で具体的なところはどうでしょうか。

Copyright © 2007 Nihon Bunkyou Shuppan Co., Ltd.All Rights Reserved.