update H20.04.25
どのような内容だったのですか?
川口市では2003(平成15)年度から市内学校にアーティストを派遣し、作品制作のワークショップを実施しています。これは、美術作品が制作される過程への児童・生徒の関心を促し、美術への理解を深め、豊かな創造性を育てることを主旨としています。2006(平成18)年度からは川口市立アートギャラリー・アトリア主催で行われ、こうした学校での成果を展示し、広く市民の方々にご観覧いただいています。
2007(平成19)年は川口市立東中学校に黒田征太郎氏を派遣しました。黒田氏はイラストレーターとして有名ですが、野坂昭如氏と共に「忘れてはイケナイ物語」プロジェクトを発足し、戦争童話集を絵本化および映画化するなど、さまざまな活動も行っています。そこで今回のアーティスト・イン・スクールでは「平和」をテーマとし、絵を通して生きることや戦争についての強いメッセージを生徒たちと考えていきました。自分の感じたままに絵を描くということは、シンプルそうで、実はとても難しい挑戦でしたが、感情と向き合い、感じたことを表現することの楽しさと、描くことが自分を解放する手段になるということを知る体験につながりました。
アトリアとはどのような施設なのですか?
アトリアは小さな美術施設です。収蔵品はありません。このまちに住む一人ひとりが、暮らしの中で思い描く「こういうアートと出会いたい」というアイデアや意欲を実現しつつ、かつて鋳物産業や植木で栄えた、ものづくりのまち川口の新しい表現の場として成長していくことを目指しています。また、単に美術作品を展示するところではなく、アトリアの中で美術に出会い、考え、作品をつくり、あるいは発表をする。世代をこえ、さまざまなかたちで美術を体験する施設です。これからの時代を担っていく子どもたちが、美術と楽しく触れ合いながら、学び成長していく施設です。
学校との連携について教えてください。
アトリアではアーティスト・イン・スクール以外でも学校との連携に力をいれています。年に数回行う教育連携会議では、小学校・中学校・高等学校や教育委員会から代表者が集まり、アトリアで行う企画展やワークショップにおいて学校や子どもたちとどのように関わっていくべきなのかを話し合ったり、子どもたちの現状やニーズについて情報を集めたりしています。また、2007(平成19)年には教育委員会が主体となって企画された「川口市立小・中・高合同中央作品展」がアトリアで開催されました。各種美術展で選ばれた優秀作品を集めて展示し、また、学校の積極的な美術実践活動の紹介も行われました。学校での美術教育の意識や授業内容の向上、指導者間の刺激にも繋がるように企画された展覧会でした。アトリアではこのような場の提供も行っています。
今後どのような展開を考えていますか?
アーティスト・イン・スクールの優れた特徴は、一日で完結しないところです。1クラスにつき、6コマの授業をアーティストと共に過ごします。クラスが多ければそのクラスの数だけ授業の数が多くなります。そのため、数ヶ月前から学校との連携が始まり、先生と共に授業の中で大切にしたいことを話し合っていきます。このような地道な作業が、学校・先生・生徒・アーティストとの信頼関係になり、一時的な華やかさではなく、根のある花となって、それぞれの心に残ることになるのです。今後はさらに、このような授業を一般公開し、多くの方々に授業の様子を見ていただき、参観者としてこのアーティスト・イン・スクールに参加していただけるようにと考えています。
さいごに…
最近の子どもたちの生活の中には、美術館へ行かずとも刺激の多い遊びやゲームが身近に溢れるほどあります。もちろんそれは悪いことばかりではありませんが、是非もっと外へ出て、人が生み出す創造性に触れて欲しいと思います。そこには人の持つ生命力や、他人と過ごす中で生まれる時間が待っています。
アーティスト・イン・スクールをはじめ、アトリアの企画展で関わってくださるアーティストの方々と過ごす中で、美術・芸術が、生きる上で重要な役割をもっていることをつくづく思い知らされます。我々のような施設はそれらのことを、もっともっと多くの人に伝える役目があると痛感しています。
川﨑久美(川口市立アートギャラリー・アトリア美術専門補助員)










