update H20.05.19
どのような展覧会ですか。
長野市清掃センターには、長野市内のゴミや廃材が集まってきます。その敷地の一角にリフレッシュプラザがあります。この施設は、長野市のゴミの減量化とリサイクルを目的として建てられました。ここには、自転車やベッド、タンスなどまだまだ使えそうな廃材が大量に眠っています。そこにある廃材やゴミを自由に使い、アートにして、リフレッシュプラザに展示しようとNPOが中心に呼びかけて行われたのが「廃材アート2008」です。一般の方々とともに、櫻ヶ岡中学校2年生39名(選択美術)も参加しました。
廃材と生徒の出会いについて教えてください。
まず「廃材アート2008」に参加するにあたって、実際に生徒全員でリフレッシュプラザへ行き、廃材の吟味から始めました。材料に十分ふれ合い、そこでひらめいたことを大事にしながら、アイデアスケッチを行いました。目の前に見える具体物はすでに空間的存在ですので、無から作品を生み出さなければならないという脅迫感や不安感がないため、生徒は比較的安心して制作に入ることができるようです。
どのような作品が見られましたか。
自転車が好きな男子生徒は、廃棄されそうなたくさんの自転車を見て、すぐ自転車を使った作品づくりに取りかかりました。改造したいけれど、部品などをどう分解したらいいかわからないので、自主的に何回もリフレッシュプラザを訪れ、所長さんに質問していました。彼は、自転車を分解し、捨てられていた楽器などを組み合わせて《チャリンコ・モンスター》という作品を完成させました。この作品は、単に乗って楽しむだけでなく、自転車の部品からつくった武器を自分の身体に装填し、運転することができます。ボディーは金と赤で塗装されており、まさに「未知の世界からの物体」となりました。
また今回、希望する数名の生徒に対して、アートディレクターという役割を与えました。事前に自分たちで展示会場を見て、作品のコンセプトを考えました。女子チームのアートディレクターは、一つ一つの作品をばらばらに展示しても面白くないので、「シンデレラ」というキーワードを決め、5つのグループがそれぞれのお話の場面を自由に制作するというアイデアを発想しました。新聞紙を天井まで繋げて貼った部屋の作品。自転車チューブをボール状に組み合わせて紙を貼り、中から光で照らしたカボチャの馬車。石けんかすに絵の具を混ぜて溶き、粘土のようにしてつくったよい香りのするシンデレラの靴など、こちらの想像を超えた作品ばかりでした。シンデレラのストーリーが柔軟な発想を促したと思います。また、男子チームは、アートディレクターを中心に「ある中学生の男子部屋」というコンセプトで制作しました。「こんな部屋があったらいいなあ」という願望が発想の出発点です。《夜のハンバーガー》という作品は、廃材のベッドを使い、仰向けで天井を見ると、まさに目の前に大きなハンバーガーとポテトがぶら下がっているという「男子の食欲を満たす願望」が作品に表現されています。その他の作品群すべてが「ある中学生の男子部屋」を表現しています。
作品制作や展示の際にどのような指導をしていますか。
「廃材アート2008」のような学校以外で作品を展示する場合の作品制作では、生徒に対し「どう見られたいか」「何を見る人に感じてもらいたいのか」を考えさせています。そうすることにより、生徒は作者でもあり鑑賞者でもあるという状態で、制作をすることができます。教師は、生徒に断定的に声を掛けるのではなく、「君はどうしたいのか」と質問し、色や形を自己決定させていく質問形式の指導を行います。生徒はなんとなくつくるのではなく、はっきりした意図やテーマを持ってつくることができます。
展示の場面では、教師の役割がとても大きいと思います。すべての作品がよく見えるように、ライティングを工夫したり、作品を置く場所や角度を考えたりします。教師が客観的な目で作品をよく見せるために展示を工夫すること、それが教師の重要な仕事だと考えています。
地域とのつながりについて教えてください。
中学生は、作品を見られることにより、よく見るようになると思います。見られることで制作意欲も高まるので、常に不特定多数の方々に中学生の作品を見てもらいたいと私は考えています。今回「廃材アート2008」への参加のきっかけは、リフレッシュプラザからの出品要請でした。昨年中学2年生の選択美術の授業で制作した作品を小布施ハイウェイミュージアム(長野県小布施町)に展示する機会があったのですが、それをリフレッシュプラザの方が聞かれたことがきっかけです。地域に作品を展示することにより、新たな地域とのつながりが生まれる。地域の方々は中学生とつながりたいと考えているようにも感じています。
今後どのように発展していくのでしょうか。
今回の「廃材アート2008」の後、「境内アート2008」というお寺で行われる展覧会への参加要請の話がありました。よい意味で地域の方々からのお誘いが続いています。不特定多数の方々に作品を見ていただくことに興味を感じ始めた2年生は、この4月に3年生になりました。今年の8月には本校を会場に「ながのアートプロジェクト2008~学校を美術館にしよう」を計画しています。私はこのプロジェクトをさらなる発展の場と考えています。中学生が「キッズ学芸員」となり、作家に出品依頼をし、作家と共同制作をします。その後自分たちで作品を展示して、当日は会場で作品解説も行いたいと考えています。美術を通して作品づくりの楽しさを感じるだけでなく、美術を通して不特定多数の方々とコミュニケーションする力を育てていきたいと思います。このプロジェクトは長野県全域へ、さらに全国へ広げたいと思います。
中平千尋(長野市立櫻ヶ岡中学校)
