update H20.07.17
どのような展覧会ですか。
長野県小布施町は長野市の北隣に位置し、栗の産地として有名です。近年はこの地を愛した葛飾北斎の作品を展示した北斎館が人気を集めています。小布施には、昔から北斎を始め、芸術家を集める力があるのでしょうか。5年前から小布施町にある玄照寺において「境内アートin玄照寺」と呼ばれる活動が町ぐるみで行われています。この「境内アートin玄照寺」は、50年前から縁日として行っていた苗市が発展し、苗を売ることだけではなく、音楽家やアーティストなどの表現の場として開放し、より多くの人が集うきっかけにしようということで始まりました。
今回、この取り組みに櫻ヶ岡中学校の2年選択美術の生徒も参加し、「よみがえり展〜一度死んだ物たちが、中学生のココロを通って、お寺でよみがえる」という名前の展示を行いました。
「廃材アート2008」からどのように発展していますか。
2年選択美術の生徒は2008年2月、長野市リサイクルプラザ(リフレッシュプラザ)で行われた「廃材アート2008」に参加し、廃材を使った作品を多数制作し展示しました。「廃材アート2008」の会期中に、櫻ヶ岡中学校の活動を知った「境内アートin玄照寺」関係者から「ぜひ、中学生の作品を展示したい」という参加の要請がありました。私自身は、以前から「境内アートin玄照寺」の存在を知っており、何回か見に行ったことがあったため、ぜひ参加したいという気持ちはあったのですが、生徒は「廃材アート2008」の出品が終わった直後から作品を制作しなければならず、生徒のモチベーションが続くのかどうかということが不安でした。また、お寺に作品を展示するということで、生徒の中には会場を嫌がる者もいるのではないかということが心配でした。
「廃材アート2008」での学習や経験とお寺をつなぐうまいコンセプトはないものか?と私は思案に暮れました。そこでひらめいたことは、「お寺は、一度死んだ魂がよみがえる場所である。廃材も一度捨てられた、いわば一度死んでしまった物である。それらを中学生の五感や第六感を使い、作品として命を与えてよみがえらそう」というコンセプトでした。私は「よみがえり展」という名前をつけました。
生徒に展示コンセプトと、お寺からの要望について話したところ、「ぜひお寺でやってみたい」と喜んでいました。お寺での展示ということが生徒の興味を引いたということもありましたが、自分たちの行った活動に社会から反応があったという実感が、次への活動のエネルギーになっていると感じました。
生徒がどのようにアイデアを考え制作したか教えて下さい。
生徒は、「廃材アート2008」への取り組みを通し、廃材を使って作品制作することには慣れていたようです。材料も多様になり、使い方も工夫していました。
ある女子2人グループは、「廃材アート2008」の時、自転車のチューブを使ってシンデレラのカボチャの馬車をつくりましたが、「よみがえり展」でも再び自転車のチューブを使って『チャリサン』という作品を制作しました。この作品は、自転車のチューブとベッドの板を加工し、さらに使われなくなった造花を付け加えた、実際に履くことができるサンダルです。自転車のチューブをサンダルに変えるという、もともとの使い道をまったく変えてしまっているところに、「よみがえり」というコンセプトを達成しているように感じました。
男子6名のグループは、長野オリンピック記念長野マラソンで使用され、大量に捨てられそうになっていた紙コップを使うことを思いつきました。いろいろなアイデアを考え、試行錯誤を繰り返した末、ある男子生徒の身長と同じ高さの塔を作品にしようと考えました。さっそく生徒は組み立て作業を始めましたが、壊れないように組み立てるには、さまざまな工夫が必要であることに気づきました。丈夫な作品にするには、紙コップに亀裂を入れ、そこにはめ込むように組み合わせなくてはいけないということや、接着剤を塗らないと壊れやすいなど、つくりながらさまざまな工夫をしていきました。最終的に生まれ変わったイメージを演出するために金色で着色し、迫力のある作品が完成しました。作品は『紙コップの逆襲』という題名になりました。
どのような作品が見られましたか。
女子生徒2名のグループは、当初、新聞紙や使われた割り箸など身近な廃材を使おうと考えていましたが、素材を検討しているうちに、自分の家にあった賞味期限切れのお菓子類を使い作品としてよみがえらせることを思いつきました。家にあったもう食べられないお菓子を使って、天に昇る龍をつくりました。「蟻が食べてくれると、本当に土に帰る感じがして、いいのになあ」と作者は言っていました。
男子2名のグループは、お寺と聞いて「お賽銭箱」をイメージしました。いらなくなった段ボール箱を持ってきて、真っ赤に着色し、白い絵の具で、まるでお経のように漢字を書いていきました。言葉がわからなくなると、辞書を引いて調べます。時には自分や友達の名前も書きました。箱の4面すべてが字で埋まるまで何時間も黙々と書き続ける姿は、まるで写経に没頭する修行僧のような風貌でした。お賽銭箱だけではなく、その上の鈴のような物も、空気が抜けて使えなくなったボールに着色してつくりました。この作品は『地獄のサタも金次第』という題名になり、「お賽銭箱」ということで、展示会場に入り口に置かれました。
女子3名のグループは、お寺に展示するということで、生まれてくることができなかった小さな命が楽しめるような作品をつくろうと考えました。題名は『小さな命にささげる』で、モチーフは「おままごとセット」です。この作品は扉が開いたり、スイッチが回転したり、触って楽しむことができるので、来場した小さな子どもたちに好評でした。またこの作品は強度にもこだわり、作品の内部に何枚もの段ボールを入れて補強してあります。楽しめる作品づくりだけでなく、作品が壊れないよう配慮しながらつくっている点に、「廃材アート2008」からの成長を感じました。
さいごに…
展覧会の会期中に、長野市デイセンター「風の森ギャラリー」から「よみがえり展」の作品を展示してほしいという問い合わせがありました。新しくできたギャラリーなので、地元の方々の作品をぜひ展示したいということでした。さっそく会期終了後、作品を運び、ギャラリーに展示しました。地元の方々にも好評だったようです。
「小布施ハイウェイミュージアム」から「廃材アート2008」、そして「境内アートin玄照寺」から「風の森ギャラリー」での展示。一つの活動がまた次の活動を呼び、子どもたちが意欲を高めてさらによい作品をつくろうと一生懸命になる。そんな学校、地域、生徒が、アートや美術で繋がっていく様子を体験できたことは、私自身、言葉に言いようもないほど幸運だったと思います。
中平千尋(長野市立櫻ヶ岡中学校教諭)
