update 2008-12-12
「一中美術館」とはどんな展覧会ですか?
「一中美術館」とは、第一中学校の校舎を美術館に見立て、全生徒が美術の授業の中で制作した作品を中心に公開したものです。生徒作品だけでなく、地域の方々から出品していただいた作品も展示するなど、地域とのつながりを大切にしていることも大きな特徴です。
今年で3回目となる「一中美術館」は、おかげさまで回を重ねるたびに来館者数が増えてきています。
「一中美術館」は、どのように生まれたのですか?
実は授業の中で、美術室にたくさんの作品を一斉に乾燥させる場所がなかったため、制作中の作品をいつも廊下に広げて置いていました。そうすると、自然と生徒が互いの作品を鑑賞し合い、語り合う光景が見られました。それが次第に他学年の生徒や先生方にも広がって、学校全体に作品を見合い、語り合う雰囲気が生まれたのです。
生徒の中に育まれた「お互いの作品を大切にする心」と、「自分の作品を他の人にも見せたいという心」を大切に考え、美術科の全題材の展開を「制作」→「展示」→「鑑賞」という形に変えました。このことで、生徒たちはさらに「自分の作品を人に見てもらいたい」という気持ちを強くしたように思います。
生徒の成長をさらに伸ばすために、また、ちょうど2年前に第一中学校の校舎が新しくなったこともあり、「学校を地域に開いて、生徒の作品と地域の方々の作品を一緒に展示し、お互いに気軽に鑑賞し合える場をつくりたい」と考え、「一中美術館」プロジェクトを実行に移すことにしました
どのように開催しているのですか?
3回目となる今年は、「美術作品で学校を地域の憩いの場にして、館内にいる全ての人の心と心がひびきあう場にする」ことを目標に、美術部の部員と有志生徒28名が「一中美術館」キッズ学芸員になり、準備・運営をしました。
1ヶ月ほど前から準備にとりかかり、宣伝用のポスターやチラシをつくって地域に配り、来館を呼びかけたり、地域の方々へ出品の依頼をしたりしました。
また、展覧会の当日は、来館者と一緒に校内を案内してまわり、作品の表現意図や工夫などについて説明したり、作者の心情について語り合ったりしました。
どのような作品がありますか?
大町は山とダムの町なので、2年生は地域の素材である流木を、旧校舎で使われていた下駄箱や荒縄と組み合わせた作品を共同で制作しました。数年をかけてできた流木が持つ歴史と、人々が昔から使ってきたものを組み合わせることで生まれる新たな物語をテーマにしました。生徒玄関前に展示した下駄箱の作品は、ボックス1つ1つを開ける前の期待感と、開けたときの意外性も魅力となっています。また、北アルプスの山々をモチーフにして自分の気持ちを表現した絵画作品も展示しました。昨年度、大町市立大町山岳博物館から大町出身の画家が描いた山岳画を3点借りてきて、作者の気持ちを想像しながら模写や鑑賞の授業をしました。その経験をもとに、今年は北アルプスの山々から感じた気持ちを大切にして描いた作品を展示しました。
このほか、感情を線で表す学習をもとにした山岳絵画(1年)、墨の濃淡を使って野菜や果物を描いた作品(2年・選択美術)、絵の具と紙を主材料してその時の気持ちを直感で表した抽象絵画(3年生)、幅約50cm、高さ約150cmの扇が4枚の屏風作品(3年・選択美術)、特別支援学級生が壁紙に墨で描いた抽象画や、美術部員の油絵などがあります。
また、生徒の作品だけでなく、
「一中美術館」キッズ学芸員の出品依頼に応えて地域の方々からも多数の作品が寄せられました。大町市長と副市長による手彫りの作品、東京電力や建具店の方々による流木や廃木でつくったベンチ、印刷会社の方々による折鶴の作品、襖屋さんによる広告で作られた掛け軸のほか、地域在住のご夫婦からは流木の玄関プレート、卒業生からも水彩画や油彩画が寄せられ、本校の教職員や地域の小中学校の図工美術の教職員から絵の具や流木をつかった作品が集まりました。
展示するときの工夫について教えてください。
「制作」→「展示」→「鑑賞」という、ふだんの美術科の授業展開でも行っているとおり、「一中美術館」でも、展示する場所や展示の仕方については、生徒自身が主体的に考えています。自分たちが作品で表現したことと学校施設の特徴を絡ませて、なぜそこに展示するのか、そこに展示することでどのような効果があるのかなど、生徒どうしで話し合いながら進めていきました。展示するという経験を通して、自分の作品がさらによく見えたり、展示によって校内の雰囲気が変わっていく楽しさを実感できたのではないかと思います。
また、生徒から出てきた「一中生が主役なのだから、自分たちが歌った歌をBGMとして流してはどうか?」という提案を受けて、展覧会の当日は、音楽会で歌った歌をBGMとして流しました。そこには、五感で触れ合うためにはどのようにしたらよいかを考えて、実行に移す生徒の姿がありました。
地域とのかかわりについて教えてください。
地域の方々の作品を展示するだけではなく、「一中美術館」は、地域のさまざまな方々の協力のもとで成り立っています。
例えば、作品に使っている壁紙、和紙、画用紙、製本用の紙など紙類のほとんどは、地元の印刷会社や襖屋で不要になったものを提供していただきました。
絵画作品に取り付けた額縁は、建具屋さんが切り出してくださった木材を使って作っています。また、東京電力高瀬川制御所にご協力いただき、ダム湖にたまった流木を拾いに行かせていただきました。
その他、安曇野市豊科近代美術館や池田町立美術館の学芸員の方には、キッズ学芸員に対話型鑑賞の指導をしていただきました。さらに、大町市立大町山岳博物館には、同館が今年から始めた市内の小中学生の山岳画展「私の心のふるさと山」展の宣伝ポスターやチラシ作成、展示会場の配置計画、作品展示などを貴重な経験をさせていただきました。
会期中には実際に中学生がナビゲーターとなって、お客様との対話鑑賞も経験させていただきました。保護者やその家族はもちろんですが、「昨年も見て、楽しみにしていた」と言って、学校とはかかわりのない地域のお年寄りの方々や小学生も見に来てくれています。そして、生徒の対応や挨拶の仕方、生徒との対話に満足感を抱いてくださったり、我が子の表現に驚きと喜びを持たれたりと生徒との触れ合いを楽しんでいただいています。同窓会の方々や卒業生からも出品したいという声が届いています。徐々に地域に根ざし、地域に広がり、地域を結ぶ美術館になってきました。
「一中美術館」の今後の展開について教えてください。
今年度は、2009年2月21日(土)〜2月22日(日)にも、4回目となる「一中美術館」を開催する予定です。今度は、大町商店街にある築数百年の古民家での同時開催の計画も進んでいます。地域の企業や商店、文化施設などとの連携が広がってきています。この「人とのつながり」を大切にしながら、学校美術館を継続させたいと考えています。
生徒たちは、「一中美術館」を経験することで、普段の授業でも、自分の気持ちや考えを相手に伝えることを意識するようになりました。生徒たちがいろいろな人とかかわり、お互いの気持ちや考えを伝え合える喜びが感じられる授業をこれからも展開していきたいと思います。
千原 厚(長野県大町市立第一中学校)
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- Vol.5 よみがえり展〜一度死んだ物たちが、中学生のココロを通って、お寺でよみがえる(小布施町曹洞宗玄照寺境内・長野県小布施町)
- Vol.4 廃材アート2008(リフレッシュプラザ、東和田情報ステーション、長野市役所2階渡り廊下・長野県長野市)
- Vol.3 アーティスト・イン・スクール2007「カワグチ絵話教室」(川口市立東中学校、川口市立アートギャラリー・アトリア・埼玉県川口市)
- Vol.2 第29回 造形「さがみ風っ子展」(淵野辺公園、女子美アートミュージアム・神奈川県相模原市)
- Vol.1 第44回 造形おかざきっ子展(おかざき世界子ども美術博物館広場・愛知県岡崎市)
