小学校 生活

小学校 生活

「おおくぼたんけんだん!~まちじまんカルタをつくろう~」(第2学年)
2014.07.24
小学校 生活 <No.008>
「おおくぼたんけんだん!~まちじまんカルタをつくろう~」(第2学年)
東京都 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名/時数・実施時期

おおくぼたんけんだん!~まちじまんカルタをつくろう~/全20時間 1月~2月

2.単元のねらい

 本校はスーパーやコンビニ,居酒屋,チェーン店などが立ち並んでいる繁華街の中心に位置している。飲食店が多く,店舗の入れ替えが頻繁に行われる。観光客など人の出入りも激しい。一方で,昔からこの地域に住み,地域への愛着や思いを抱いている方も多い。しかし,そのことは子どもたちにとっては無自覚のものであり,そのよさにはなかなか気付いていない。
 本単元は,地域の探検にでかけ,町の人や場所と関わることで自らの思いや願いをもち,地域への愛着をもつことをねらいとしている。地域の人の思いや町への愛情にふれることで,自らも町のよさに気付き,愛着を抱くことができるようにしたい。そこで,本単元では,地域の方と地域交流会を行ったり,一緒にまち探検にでかけたりした。また,まち探検という体験活動を通して気付いたことをカルタづくりやカルタ遊びで表現するという活動を取り入れた。体験と表現という活動が「カルタをつくる」というめあてに向けて双方向に作用する。体験と表現がカルタによって効果的につながれていくことで,児童の気付きの質を高めたり,地域への愛着を深めたりすることができると考えた。

3.単元の目標

・生活への関心・意欲・態度
 地域の様子,学校生活を支えている人々や地域の人に関心をもち,かかわろうとしている。

・活動や体験についての思考・表現
 公共施設の利用や,地域の人とのかかわりなどについて,自分なりに考えたり,振り返ったりして,それをすなおに表現している。

・身近な環境や自分自身についての気付き
 地域の様子や,地域に愛着や思いをもっている人のことがわかり,それらと自分とのかかわりに気付いている。

4.事前準備,活動計画,学習環境の設定

●他教科との関連
 本単元の導入場面では,国語科「冬を楽しもう」を活用した。カルタを楽しむ活動を体験することで,児童は自ら「カルタづくりをしよう」と課題を設定した。自分たちでめあてを決めたことで,児童は主体的に,探究的に活動することができた。

●指導計画の工夫
 体験活動と表現活動が相互に作用するように単元を構成した。地域体験を繰り返し行い,また児童同士の伝え合いの場面や振り返りなどの表現場面を意図的に設定する。本単元では,「とっておきのカルタをしょうかいしよう」というカルタを発表する活動を単元の中間地点に設定した。「これはみんな知らないだろう」とか,「このことはみんなに教えてあげたい!」という「とっておきのカルタ」をグループごとにひとつ選び出す。児童はグループの共通体験をもとにわくわくしながら一枚のカルタを選びだした。「私たちのグループのとっておきのカルタはこれです。公園でみつけた○○がおもしろいと思いました。私たちは知らなかったので驚きました」と発表グループの児童が説明すると,聞いている児童からは「どこにあったんですか?」「知らなかった!」「面白いと思いました!」「いいなぁ!行ってみたい!」など,感想や質問が活発に交流された。個々の気付きをクラス全体で共有することができた。
 体験活動(まち探検)と表現活動(カルタづくり・発表)のスパイラルを繰り返していくことで,単元を通して児童は気付きの質を高めていった。それはカルタの内容をみるとよくわかった。最初の探検で「かたまった かわいいつめたい しもばしら」と書いていた児童が,4度目の体験後には「○○のどうぶつはかせ ひみつを教えてくれたよ」と,その気付きが目に見える事象だけではなく,まちの人やその内面に触れていたからである。振り返りにも「そこには日本語がうまい人ややさしい人がいました。それでわたしはとても安心しました」「さいしょにつくったカルタは文がじまんじゃなかったけど,2回目とかはじまんとひみつがかかれているからいいなと思いました」とあるように,児童自身がまちたんけんの質的な高まりを実感しているようであった。
 こうして体験と表現を意図的に構成していくことで児童の「気付きの質」も高まっていく。

●環境設定
○地域マップ
 地域マップを拡大したものを教室に掲示しておく。マップには新しく見付けた場所などを書き込んだり,探検に行った場所や人の写真や絵を貼り付けたりしていくようにする。

○50音表
 カルタづくりを続けるうちに「50音全部つくりたい」という願いを児童がもつだろう。そこで,50音表を用意し,使った言葉にシールを貼っていく。「今日はこの言葉で始まるカルタをつくるぞ」「まだ7つことばが残っているからまちのじまんをたくさん発見しなきゃ」という願いや思いをもち,複数回の探検も意欲的に臨むことができる。

○カルタ
 カルタは読み札を色画用紙,取り札を厚紙にした。色画用紙は,1回目の探検は青を。2回目は緑,3回目はピンクと,探検ごとに色を変える。そうすることで探検ごとの児童の気付きの変容が見取りやすくなる。また,読み札と同じ色のシールをマップ上に貼る。これまでにどこに探検に行き,カルタにしているかが色とシールの量で把握することができる。このシールは,50音順の表を埋めていく際にも活用する。シールで埋めていく活動を楽しむことができるとともに,児童が,今どの言葉がカルタになっていないかを視覚的に理解することができる。シールで埋めていくこのような活動を低学年の児童はとても楽しむことができる。こうしたことからも児童の意欲の向上が期待できる。

5.単元の流れ

活動[時数]

対話にみる活動の様子(子どもの思考の流れ)

1.おすすめの場所にいこう[3時間]
●地域マップにおすすめの場所を書き込む。
●おすすめの場所にみんなでいく

『大久保のおすすめの場所や好きな場所はありますか?』
「僕はここにあるおおくぼつつじが好きだなぁ」
「通りにあるペットショップがおもしろいよ!」
「八雲公園!」

『みんなでおすすめの場所に行ってみましょう』

2.まちのじまんをみつけよう[7時間]
●まち探検の計画を立てる。
●まち探検をする。
●まち探検で気付いたことや見つけたことをもとに「まちじまんカルタ」をつくる。
●もっと知りたい場所や新しく行きたい場所について話し合い,探検の計画を立てる。

『グループごとにどこにまち探検に行くか相談しましょう』
「僕は消防署の方に行きたいなぁ」
「ペットショップの店員さんにお話が聞きたいよ」

『まち探検でみつけたまちのじまんをカルタにしましょう』
「八雲公園にある小泉八雲の銅像がすごかったよ」
<カルタ:ものすごい はくりょくの こいずみやくもの どうぞう>
「まちにはおおくぼつつじがたくさん植えてあるのがいいと思ったよ。」
<カルタ:ロマンチックな おおくぼつつじ>

3.みつけたまちのじまんを伝えよう[3時間]
●まち探検で気付いたことをもとに「まちじまんカルタ」をつくる。
●つくった「とっておきのカルタ」について発表し,グループごとに遊ぶ。
●地域の方を招き,地域の人とカルタで遊ぶ。

(児)「ちいきのみなさん,今日はぼくたちのつくったまちじまんカルタで一緒にあそびましょう」

(地)「今日はありがとう。私たちも知らなかったまちのことがカルタになっていてとても面白かったです」
「気になるなぁと思ったことがあったらすぐ地域の人に聞いて,まちのことをもっともっと知っていこうね」
「まちの物やお店のことが多いから,地域の「人」をカルタにするのも面白いかもしれませんね」

(児)「今日はアドバイスありがとうございました!もっとまち探検に行きたくなりました。またカルタで勝負してください!」

4.すてきだなわたしがすむまち[7時間]
●地域の人に会いにまち探検しよう。
●地域の人のアドバイスをもとにカルタをつくる。
●探検で関わった地域の人に手紙やカルタを送る。
●まち探検を振り返る。

『地域の人のアドバイスを生かしてカルタづくりができるといいですね』
「ペットショップに行ったら,動物にすごく詳しい動物博士がいて,たくさんお話を聞かせてくれたよ」
<カルタ:プロの動物はかせは すごいぞ!>

『カルタが完成したら,したいことはありますか?』
「友だちのカルタで遊びたい!」
「地域の人が,完成したら教えてねって言っていたし,ありがとうの手紙が書きたい!」

6.評価について

1.カルタから児童の気付きの変容を見とる!
●2回目で<めいろだ 大久保北公園の いすにあったよ>というカルタをつくっていた児童が,3回目のカルタづくりでは,<ゆいいつ きせきてきに のこったから なくならないでほしい>と,まちへの自らの思いをカルタで表現していた。カルタは児童が探検をして感じたことや気付いたことが如実に表れている。まちのどこ(何)を写真に撮り,カルタにしているのか。読み札に書かれている文章から児童の気付きの質の変化や深まりを見とることができる。児童の気付きは探検の回数を増すごとに広がりと深まりをみせた。

2.ふりかえりカードから
●単元のまとめの場面では,ふりかえりカードを書くようにする。ふりかえりカードは絵だけのもの,文字だけのもの,絵と文字が書き込めるものなど,数種類用意しておく。児童は,カードを自ら選択,決定することができる。振り返りは単元のまとめの場面と,中間地点の「とっておきのカルタを発表しよう」で行った。

●児童の振り返り
 「みんながつくったカルタは,写真も文も心がこもっていました。おもしろかったり,頑張ってつくったり,色んな人に色んな事を聞いてつくっていました。(中略)みんな「カルタをつくろう」と思って探検していました。まちたんけんの間,たくさんの人に色々してもらいました。カルタをもっとつくりたいです。これからもカルタを大切にしたいです」
 振り返りには,これからの探検や活動への思いや願い,友だちのグループのカルタを聞いた感想などが書かれていた。また,まとめの場面の振り返りでは,地域の方への感謝の気持ち,カルタが完成したことへの喜びの言葉がみられた。

3.地域の方とのかかわりから
 探検では,地域の方にご同行していただいたり,地域交流会を開いたりと,地域の方とかかわる場面を意図的に設定している。児童は探検を数回繰り返すことで,地域の方との関係を深めていった。自ら積極的にコミュニケーションをとったり,自然と会話したりする姿がみられた。単元のまとめの場面で児童は「地域の人にありがとうの手紙を書きたい」と考えた。地域の方にあてた手紙には「わたしはUさんが大好きです」「またカルタで勝負しましょう」「Mさんのおかげでおもしろいカルタができました」というように,地域の方への愛着や思い,感謝の言葉があふれていた。

7.教師の手立て

●じまんはっけんカメラ!
 探検に出かける際,児童一人一人に手づくりのカメラを「まちのじまんが見つかる不思議なカメラだよ」といって配布した。児童はとても喜び「ほんとだ!」「がんばるぞ!」とつぶやきながら意欲的に活動していた。こうした「探検グッズ」のようなツールは特に低学年の児童にとって楽しいものであり,意欲の向上が期待できる。

●地域の方とまち探検を!
 探検活動では,地域の人に御同行して頂いた。それは地域の方とかかわることで地域への愛着を抱いて欲しかったからである。地域の方と探検を行うことで「Uさん(地域の方)とまたいきたいなぁ」「Mさんといくと楽しいなぁ」と地域の方への親近感をもつ児童がどんどん増えていった。また,地域の方からも「探検がすごく上手になった」「ふだん気付かないことや長年住んでいる私たちでも知らないことがカルタになっていてとてもおもしろいと思った」と活動に初めからかかわって頂いたことで,児童の成長を実感し,褒めてくださった。外部評価を得た子どもたちは本当にうれしそうにしていた。

●地域交流会を開こう!
 単元の中間地点では,地域の方と交流会を行った。地域の方には,児童の意識が地域の「物・こと」から「人」へと向かうようお話して頂いた。アドバイスを受けた児童たちはその後の2回の探検で地域の人を意識するようになった。カルタには地域で気付いた物事だけではなく,「八百屋のおじさん 元気です」というように,人をテーマにしたカルタも増えていった。地域の方との交流会後,児童は「Tさんとまたカルタがしたい」「今日はIさんに会えるかな」と,地域の方と交流することをとても楽しみにしていた。
 ある日,探検をしていたら地域の神社の神主さんが歩いていた。以前お話を聞きに行っていた児童は自然と挨拶を交わす。また,別の日には最寄りの消防署の隊員の方とすれ違った。その方々は以前訪れた際にはお会いしていなかったが,子どもたちは自然と挨拶を交わす。まち探検という活動そのものが児童と地域の人をつないでいるのだと感じた。児童がこんなことをつぶやいていた。「いきなり入ったのに超ラッキー! 消防署もそうだったし,まちの人がみんなやさしくしてくれてすごくうれしい! 大久保っていいなぁ」 探検をしている際,まちの人が大変親切にしてくださったのでとても喜んでいたのだ。これは一度や二度の探検では抱かなかった「地域への愛着」であるといえるだろう。繰り返し体験し,表現すること。人と触れ合い,体験と表現を繰り返すことが児童のこうした思いや願いを育んだと考える。