準備、授業、評価……。日々子どもたちと向き合う中で生まれる先生方の様々な疑問に、ベテランの先生がお答えします。

質問投稿フォームはこちら

Q&A 絞り込み検索

  • キーワードを選択(複数可)して「検索」ボタンを押すと該当するQ&Aのみ表示されます。
  • 絞り込みを解除したい場合は「すべて表示」ボタンを押してください。

検索すべて表示

Q

新学習指導要領では図画工作科にも「知識」が新しく位置付きましたが、図画工作科の「知識」はどのように教えればよいのでしょうか?

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について、学習指導要領
回答者:日本文教出版 編集部

A

学習指導要領解説では、低学年の「知識」は「対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して気付く(下線筆者)」とされています。つまり、教師に求められるのは「知識」を一方的に教えることではなく、子どもが活動の中で学年に応じた「知識」に気付き、身につけていけるような題材を設定することだと言えるでしょう。

日文の教科書では、三つの柱に即した学習のめあての中に、この「知識」を明記することで、育むべき資質・能力を分かりやすく示しました。例えば、『ちょきちょきかざり』(新版教科書1・2上 p.12-13)という紙を切って色々な形の飾りをつくる題材では、「知識・技能」のめあてとして、「きって できる かたちを みつけ,くふうして つくる。」となっています。下線部がこの題材での「知識」に当たるわけですね。ですので、この題材では、教師が「どんな形ができたかな」「お気に入りの形はどれかな」などと投げかけ、子どもたちが活動を通して色々な形を見付けていくことができるようにすることが大切になってきます。

日本文教出版 編集部

「知識」に関しては、「使ってみよう!ずがこうさくの教科書」コーナーでも、教科書紙面を使って分かりやすく説明しています。
<第5回>図画工作科の「知識」って?
https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/zuko_tbs/zuko_tbs005/

題材の設定に関しては、「題材の設定ガイドブック」でも教科書題材を使って説明しています。
https://www.nichibun-g.co.jp/library/abc-series/abc-series_daizai_ex.pdf

Q

図工で英語との連携をするって、用具などの英単語だけ教えればよいのでしょうか。

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について
回答者:日本文教出版 編集部

A

学習指導要領「外国語活動・外国語編」の解説を読み進めていくと、「図画工作科では,絵や立体,工作に表す活動を通して,感じたこと,想像したこと,見たことから,表したいことを見つける学習をしている。そこで,こうした学習を通して児童が作成した作品を,ショー・アンド・テル(発表活動)の中でほかの児童に紹介するなどして,児童の外国語学習への興味・関心を一層高めることができると思われる。」と、図工で連携する際の具体的な場面が述べられています(参考:文部科学省 小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編)。

つまり、ただ英単語を教えていればよいわけではなく、子どもが自分の表現について説明するときに必要になるフレーズ(「私はこれが好きです」「私は○○を使いました」など)と合わせて、必要となる単語(色や用具の名前)を提示することが大切です。また、これらは図工の時間に教えるというよりも、教室の掲示板などにフレーズと単語を合わせて記載しているポスターや掛図などを貼っておき、子どもたちがいつでも見られるようにしておくとよいでしょう。

日本文教出版 編集部

Q

図工でのプログラミングって、ソフトを用いてPCで行わなければならないのですか。

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について
回答者:日本文教出版 編集部

A

新指導要領で実施が求められているプログラミング教育ですが、その中核となるのは「プログラミング的思考」の育成です(参考:文部科学省 小学校プログラミング教育の手引(第二版))。プログラミング的思考を簡単に説明すると、以下のようになります。

  • ★自分が意図する一連の活動を実現するために……
  • ①どのような動きの組合せが必要であるか考える=一連の活動を要素に分解する
  • ②一つ一つの動きに対応した記号を考える=要素を記号に置換する
  • ③記号をどのように組み合わせたらいいのかを考える=記号の組合せ
  • ④記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近付くのかを考える=組合せを検証する

プログラミング的思考については、プログラムを体験して身に付けることが大切ですが、設備の関係等で図工の時間に機器を使用するのが難しい場合も考えられます。しかし、図工でプログラミング的思考を育成するためには、必ずしもPCとソフトを使用する必要はありません。これまでも実践されてきた「彫り進み木版」や「ドリームプロジェクト(環境などを考慮して未来の学校や街を表す題材)」などの、ある程度の見通しをもって取り組む題材では、子どもたちは「プログラミング的思考」を十分に働かせながら活動していると言えるでしょう。

図工でプログラミング的思考を育成する際に気を付けておきたいのは、図工としての資質・能力も同時に育成しなければならないということです。子どもたちは図工の活動において、材料や用具に触れる中でしたいことを思い付いたり、考えを広げたりしています。一度決めたプロセスに縛られることなく、自由なイメージの飛躍や発想の広がりを認めてあげることが大切です。論理的思考と合わせて、そうした直観的な思考を育てることも忘れないようにしなければなりません。

日本文教出版 編集部

Q

教科書での鑑賞の取り扱いはどのようになりましたか?

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について、鑑賞、学習指導要領
回答者:日本文教出版 編集部

A

鑑賞の対象はもちろん、鑑賞の場面や活動内容をこれまで以上に充実させました。具体的には、ポーズに着目する・筆跡に着目するなど、様々な視点から鑑賞を始められる題材を設定したり、表現活動中に相互鑑賞する様子を掲載したりしています。対話的な鑑賞や、表現との関連を重視しながら主体的な鑑賞活動が実現できるように、育成する資質・能力の三つの柱の一つである「思考力、判断力、表現力等」の育成にしっかりつなげられる工夫をしています。

また、発達の段階に応じて幅広く鑑賞の対象を捉えられるように、教科書全体を通して、身近なものから美術作品、生活の中の造形まで、幅広い対象を紹介しています。特に「教科書美術館」ページでは、発達の段階に応じたテーマに合わせて、身近なもの、児童作品、美術作品を掲載することで、対話しながら鑑賞をできるようにし、様々なものを造形的な視点で見ることを促します。

日本文教出版 編集部
新版教科書、教科書紙面について、詳しく知りたい方はこちら!

Q

用具の扱い方を、子どもに教える自信がありません……。

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について、絵・立体・工作
回答者:日本文教出版 編集部

A

用具の扱い方を子どもに伝えるときには、まず先生が使ってみることが大切です。新しい教科書では、各巻末に「使ってみよう 材料と用具」というコーナーを8ページ設け、用具の基本的な扱い方を分かりやすく丁寧に解説しています。もし事前に使ってみる時間が取れなかったとしても、児童と一緒に図版を確認しながら指導することができます。

また、指導書では「材料・用具編」でさらに詳しい知識や、指導に関する留意事項をまとめていますので、こちらも合わせてご覧ください。

日本文教出版 編集部
新版教科書、教科書紙面について、詳しく知りたい方はこちら!

Q

新しい学習指導要領では、子どものどういうところを評価すればよいのでしょうか。

2019.05.29 / 図画工作科(一般)について、学習指導要領
回答者:日本文教出版 編集部

A

児童の学習状況を評価するには、「何を学ぶのか」という目標を確認することと、学んでいる児童の具体的な姿を捉えることが大切です。日文の教科書では、すべての題材ページの入口に「学習のめあて」を設定し、まず先生と児童がめあてを共有してから活動に入ることができるようにしています。

また、学習のめあてに対応する児童の活動の様子を掲載しているため、資質・能力を発揮している児童の姿が具体的に分かります。加えて、作品のコメントや吹き出しで、児童の考えや発言を掲載し、発想・構想や工夫について言葉でも読み取ることができるようにしています。

日本文教出版 編集部
新版教科書、教科書紙面について、詳しく知りたい方はこちら!

Q

いつも友だちの真似ばかりする子に、主体的な学びをするように促したいと思っています。どのような働きかけをしたらよいでしょうか。

2019.04.01 / 図画工作科(一般)について、授業の進め方
回答者:東京学芸大学 准教授 西村德行

A

友だち同士、楽しそうにかいているので、どんな絵をかいているのか楽しみにのぞいてみると、そこにはほぼ同じ構図の絵が! 図工は一人一人の表現を大切にしている教科ですから、思わず「一人でかきなさい!」と言いたいところですが、なぜその子たちが同じような絵をかいているのか、考えたことはありますか?

子どもたちは、自分よりも「すごい」と思える友だちの表現を追体験することで、表現の喜びを味わっているのです。「学ぶ」という言葉の語源は「真似ぶ」、つまり真似をすることだといわれています。お手本となる友だちの表し方を観察し、実際に自分でやってみて、そのお手本に近付けるよう努力しているのです。ですから「真似」はそれ自体、主体的な学びであるといえます。

しかし図工の授業ですから、やはり一人一人が自分なりの表現に取り組むことは大切にしたいものです。そのためには、子どもの「真似」したい気持ちを大切にしながらも、その子なりの表現につながっていくことが大切です。

そこで教師が心がけたいことは、同じような表現の中にもあるそれぞれの「違い」に気付かせ、それを誉めることです。同じようにかいていても、そこには小さな表現の違いがあります。たとえ全く同じであっても、かいたものに対する解釈には違いがあります。教師は言葉がけなどを通して子ども自身からそれを引き出し、違いに気付いたことを誉めるのです。そうすることで、子どもは「真似る」ことの次に表れる「自らかく」ことの楽しさに、きっと気付いてくれると思います。

東京学芸大学 准教授 西村德行
西村先生が授業づくりの面白さを伝える「子どもとつくる図工の時間」はコチラから!

Q

新しい用具(糸のこぎり、かなづちなど)を使用する題材では、導入での説明がどうしても長くなってしまいます。改善するにはどんなことを工夫すればよいでしょうか。

2019.04.01 / 授業の進め方
回答者:東京学芸大学 准教授 西村德行

A

新しい材料や用具を使う時には、つい話が長くなってしまいます。安全面の説明などはとても大切ですが、しかしあれもこれもと伝えるべきことを考えているうちに、収拾が付かなくなります。

活動を途中で止めることをなるべく避けたいと思う先生は、最初に全部話そうとしますが、一度にたくさんのことを言われても、子どもたちは理解しきれません。これは大人も同じです。使ったことのない用具の使い方のコツをいきなり話されても、わかりませんよね。

大切なことは、まず自分が説明を聞く子どもの側になることです。新しい用具が目の前にあるのです。子どもたちはまず「使いたい」と思うでしょう。ならば最初に伝えることは、安全面と最低限の使い方だけで十分です。用具を使っているうちに、子どもの中で「これどうなんだろう」と使い方に対する問いが生まれます。そのときが、用具の使い方を伝える一番のタイミングです。用具は手の延長ですから、用具と体とが一体化したときにはじめて、説明の意味が伝わるのです。教師はそのタイミングを見逃さず、適切なときに伝えることが大切です。

東京学芸大学 准教授 西村德行
西村先生が授業づくりの面白さを伝える「子どもとつくる図工の時間」はコチラから!

Q

技法や技術は、活動の前に教えるのと、活動がある程度進んでから教えるのと、どちらがよいのでしょうか。

2019.04.01 / 授業の進め方
回答者:帝京大学 教授 辻 政博

A

子どものどのような資質・能力を引き出し、育成するための題材や分野なのかによって異なってきます。ただし、安全な用具の扱い方の指導は、題材や分野に関わらず、活動前に教えることが必須です。

例えば、木版画や木工作、焼き物などでは、技法や用具の扱い方を活動前にしっかり押さえたいものです。彫刻刀やのこぎりなどの刃物類は、安全で適切な扱い方を子どもたちが十分に理解しておくことが必要です。版に表す題材においては、子どもたちが技法の効果を知った上で、自分の思いを広げて表現を工夫し活動を展開させていくのが望ましいと考えられます。また、「動く仕組み」を生かした工作の題材などでは、子どもがその仕組みをしっかり理解して製作しないと、自分の望む効果が得られないでしょう。

一方、色の造形遊びのような活動では、様々な色の特徴の面白さを自分で発見していく過程が大切になってきます。そこでは、子どもの様々な気付きや発見自体が学びとなりますから、教師が先に「色を使うと、こんなことができるよ」と示してしまうのは適切ではないでしょう。

帝京大学 教授 辻 政博
辻先生のインタビューが読める「図工のみかた 02号」はコチラから!

Q

子どもたちの作品を学校内に展示したいのですが、色々な制約があるため、展示場所の確保が難しい状況です。取り組みやすい展示の工夫があれば教えてください。

2019.04.01 / 図画工作科(一般)について、鑑賞
回答者:日本体育大学 教授 奥村高明

A

展示方法について考える前にまず、そもそも展示は何のために行うのかを考えてみましょう。

例えば、算数のテストや練習問題を展示する先生はいませんので、「全員の作品ができたから」というのは理由になりません。展示は学習評価の一環であり、その子らしいよさを認め、広く称賛する場であることを踏まえると、以下のような理由が挙げられるでしょう。

  • 作品に、その子らしいよさが現れているから。
  • 作品を並べることで子どもたちひとり一人の違いや工夫がはっきりと伝わるから。
  • 他の学年や保護者・地域の人々にも、子どもたちの創造性を見てもらいたいから。
  • 下の学年の学習モデルとして、あるいは学校文化として成立させたいから…

次に、その目的を実現する具体的な手立てについて、これまで全国の学校での事例を基に考えていきます。

  • 作品を1枚だけ飾れるスペースがある場所(壁、柱など)を「〇〇ギャラリー」と呼び、短期間に作品を交換していく。1年間を通して全員の作品を展示することができる。
  • 広めの共用スペースを「学校美術館」にする。学年全員の作品を展示する題材を決めて年間指導計画に明記し、他の学年と調整しながら展示していく(6月は6年生の月など)。
  • 2年に1回、体育館を貸し切って、全児童の「わたしの代表作」を飾る(※学び!と美術 <Vol.40>『「展覧会」は面白い!』参照)。

いかがでしょうか。もちろん、それぞれの学校で環境は大きく異なりますが、目的がはっきりすれば、実現のための手段も考えやすくなります。なお、展示の際は、キャプションなどで作品や題材などのよさが伝わる工夫をすることも必要です。

日本体育大学 教授 奥村高明
奥村先生のインタビューが読める「図工のみかた 06号」はコチラから!
奥村先生が図工・美術教育について語る連載「学び!と美術」はコチラから!

Q

6年間で系統を意識した授業をしたいと思うのですが、毎年担任が変わるため、引き継ぎがうまくいかず困っています。すぐに解決するのは難しいかもしれませんが、何かできることはないでしょうか。

2019.04.01 / 図画工作科(一般)について
回答者:畿央大学 教授 西尾正寛

A

先生方がチームとして学び合える校内研修を活用してはいかがでしょう。

なぜなら、系統を意識した授業とは子どもの学びがつながる授業であり、その実現には先生同士のつながりが大切になるからです。ある先生の話をしましょう。

その先生は、材料や用具の系統が先生方の間で共有されていないことに課題を感じておられました。先生方はみなさん自信をもって授業をしたいという思いをおもちでしたが、図画工作科は材料や用具と、その指導に関わる知識や技能の幅が広い教科です。先生方一人ひとりが自信をもてるまで多くの材料や用具に馴染むことは難しいですし、題材自体に苦手意識がある場合もあるかもしれません。

その先生は夏休みを利用して実技研修をされたそうです。例えば、どの学年でも使うパスや絵の具などのいろいろな扱い方を伝えたり、みんなで選んだ楽しそうな題材を一緒にやってみたりするなどの体験の場を設けたり……。ゆったりとした時間の中で行われた研修経験は、二学期に生かされました。学び合う時間を通して、自信がもてる範囲が広がった先生方の間では「この題材の指導のポイントは?」「この材料を生かすってどういう感じ?」などの会話が普段から交わされるようになり、やがて材料や用具の系統の課題も少しずつ改善されてきたそうです。

引き継ぎが上手くいかないのは、忙しくて先生同士のコミュニケーションが不足していたり、自分の指導に自信をもてなくて指導の成果を伝えるのに躊躇したりしてしまうからかもしれません。チームとして、同僚として取り組める研修の機会を通して互いに力量を高め合い、距離が縮めることでいろいろな課題の解決に向かう場合も多いのではないでしょうか。

畿央大学 教授 西尾正寛
西尾先生のインタビューが読める「図工のみかた 04号」はコチラから!

Q

既存のキャラクターや残酷なモチーフばかりかく子、「絵で表そう」と言っているのに文字を書き込んでしまう子には、どのような働きかけをしたらよいでしょうか。

2019.04.01 / 図画工作科(一般)について
回答者:群馬大学 教授 林 耕史

A

さしあたり「働きかけ」は「保留」して、子どもの様子を見守る時間を設けてみてはどうでしょうか。まず大事にしたいのは、「かきたいからかく」という姿です。かくことが「楽しい」と感じたり、かきたいようにかけて「うれしい」「いい気分!」と思えたりすることが、表現の第一歩です。教師が意図した通りの図像が出てこない場面があったり、期待した絵になっていかない子どもが現れたりしたときは、まず私たちの姿勢を再確認しましょう。それは、図画工作の時間が「上手な絵をかかせるための時間」ではなく、「絵をかくことで、子どもを育てる時間」である、ということです。

その認識の上で、キャラクターばかりかく子がそれ以外のものをかくようになったり、文字でなく絵で表そうとしたりしたら、大事に認めてあげてください。残酷な描写ばかりする子は、他の生活場面で、実際に残虐な行為をしていないか(生き物を虐待する、器物を汚損するなど)、他の先生方と連携して観察します。子どもはかくことで心の内面を整理していることがあると思います。興味あることを絵の中で満足させようとしているかも知れませんから、まず観察してください。長い期間、固執するように残虐なものをかいたり、実際の行為に及ぶ場合には、別の面からのケアが必要になりますね。

群馬大学 教授 林 耕史
林先生のインタビューが読める「図工のみかた 09号」はコチラから!

Q

「身近な風景をかく」題材では、遠近法などの特定の表現技法を、活動の前に教えた方がよいのでしょうか?

2019.02.19 / 絵・立体・工作、授業の進め方
回答者:帝京大学 教授 辻 政博

A

多くの場合、特定の表現技法を最初に提示するのは、あまりよい方法ではありません。なぜなら、教師の示したことがモデル(お手本)となって、子どもがそれをコピーするだけの活動になってしまう場合もあるからです。子どもが自分の思いを広げ、表し方を工夫し追求する方向に活動が展開していくように導入を行うことが大切です。

この種の題材は、はじめに強く教え込んでしまうと、「遠近法を使ってかくこと」自体が活動の目標になってしまいます。まずは、子ども自身が、自分の生活する身の回りの風景に興味をもち、表したいことを見付けるところから始めたいものです。子どもの表現には、遠近法的ではない表し方が多くあります。ですから、子どもが、自分の思いに合わせて様々な自分の表し方を工夫できることが大切です。

一方で、「奥行き」に興味が芽生え、奥行きを表現する方法を知りたいと思う子どもが出てきた場合には、教師が情報を提供してもよいでしょう。個々の子どもの実態や要望に応じて、アドバイスしてはいかがでしょう。

帝京大学 教授 辻 政博
辻先生のインタビューが読める「図工のみかた 02号」はコチラから!

Q

作品を鑑賞するときに、子どもたちがいつも同じような言葉(きれい、好きなど)しか使わないのが気になっています。鑑賞のときの語彙を増やすには、どのような工夫をしたらよいですか。

2019.02.19 / 鑑賞、授業の進め方
回答者:日本体育大学 教授 奥村高明

A

子どもから「きれい」「好き」という言葉が出てくるということは、おそらく教師が「みんなどう思う?」と全体的な感想や、漠然とした印象を聞いているはずです。そこでさらに「(文章や絵の)どこからそう思ったの?」と部分への問いを重ねていったときに初めて、具体的な言葉が出てきます。「きれい」「好き」は表面的な言葉であって、その奥に本当に言いたいことがあります。それを引き出すような発問や手立てが必要です。

また、言葉は行為や環境などとの相互作用で生まれます。子どもの言葉は具体的な学習活動と切り離すことができません。それがわかる事例をいくつか見てみましょう。

1.子どもの言葉は問いで変わる

ある子どもは、友だちの作品を鑑賞した後、ワークシートの「感想を書きましょう」という問いにはあいまいに答えていました。でも、「形はどうでしたか」という具体的な問いには、具体的に答えていました。

2.言葉にはその子らしい感性が働く

自分の好きな場所を紹介しようという学習の時間。自宅周辺の広場に、夕日で羽をキラキラさせながらトンボが舞う様子を選んだ子どもがいました。その子は、その様子を「とんぼさくら」と呼んでいました。

3.言葉は主体的な行為から生まれる

自分の塗った色を「しろ……ぴんく……おれんじ……」と繰り返し呼んでいる幼児がいました。最後に突然オレンジを「夕焼け色」と呼びました。

鑑賞の時間だけで語彙を増やそうとするのではなく、豊かな学習が言葉を引き出すことを念頭に置き、その内容を工夫することで豊かな言葉が生み出されると考えてみてはどうでしょうか。

日本体育大学 教授 奥村高明
奥村先生のインタビューが読める「図工のみかた 06号」はコチラから!
奥村先生が図工・美術教育について語る連載「学び!と美術」はコチラから!

Q

授業中、子どもが活動内容に関係のない雑談をします。楽しそうに活動しているので、注意はするべきではないのでしょうか。

2019.02.19 / 授業の進め方
回答者:畿央大学 教授 西尾正寛

A

子どもを信じて少し待ってみましょう。

なぜなら、話の区切りがつくと活動に戻ることはよくあるからです。「授業中の雑談はいけない」ということを子どもは知っています。自分で活動に戻る様子を見れば、教師は子どもをもっと信頼できるようになります。

それでも話し続けてしまう子どもがいたら……。なぜ話し続けているのか探ってみましょう。なぜなら、楽しそうに見えて実は困っているかもしれないからです。

「表したいことが見つからない」

「表す方法の見当がつかない」

「思うように表わせない」

だから雑談をして気を紛らわせている。

子ども自身もそのことに気付いていないのかもしれません。そんな時は先生が期待していることをその子にまっすぐぶつけてみましょう。例えば、表したいことを見付けようと話し合う場面で、雑談をしている子どもの側に寄り添い(雑談していることには知らん顔で)声をかけます。「表したいことは決まった?」。材料を工夫して表す場面で「思うような活動ができているかな。どう?」。雑談をしていた子どもは、困っている自分にふと気付くかもしれません。そこで「先生、実はね……」と子どもが相談してくれたらそれは素晴らしい瞬間になりますね。

畿央大学 教授 西尾正寛
西尾先生のインタビューが読める「図工のみかた 04号」はコチラから!

Q

学年に応じた(図工で身につける)力が備わっているかどうかを確認するには、どのようにしたら良いのでしょうか?

2019.02.19 / 学習指導要領
回答者:横浜国立大学 准教授 大泉義一

A

小学校では、中学校や高校と比べ、6年間という長いスパンで子どもの成長・発達を支えます。なので、ご自身が指導している子どもの状況について不安に感じ、ご質問される気持ちはよく分かります。

ただ少し気になるのは、ご質問の中で「確認するには」とおっしゃっていることです。図工で育てる力は、あらかじめ「学年に応じた力」なるものが決められていて、目の前の子どもをそれに当てはめていくものではありません。まずは目の前の子どもの育ちそのものをありのままに捉えてみましょう。図工の学習における子どもの活動には、何かしらその子なりの意味や価値があるものです。まずはそれを捉えてあげることが何よりも大切だと思うのです。

そのための一歩として、学習活動の中で子どもたちが発揮している(と先生が捉えている)力を、気付いたことからどんどん書き出してみることをおすすめします。その上で、学習指導要領に示されている低・中・高学年(以下、各学年と示します)ごとの目標や内容と照らし合わせてみることが考えられます(*1)。なお、図工の学習指導要領は、学校や児童の実態に応じ、2学年ごとの大括りに示されています。これは、さまざまな表現に対応した弾力的な指導を重視する考え方が基になっているためで、あくまでも一人一人の育ちを捉えることが大切であることが分かるでしょう。

横浜国立大学 准教授 大泉義一
大泉先生のインタビューが読める「図工のみかた 05号」はコチラから!

*1…学習指導要領に示されているのは、目標や内容だけではありません。〔共通事項〕のアには、各学年の「表現」及び「鑑賞」の活動を通して育成する「知識」が示されています。さらに「指導計画の作成と内容の取扱い」には、その指導において配慮すべき事項が示されているとともに、各学年で扱う「材料や用具」が示されています。こうした事項も手がかりにしながら、子どもたちの実態を捉えていくことも有効です。

Q

授業中、一人につきっきりになって、全体をみることができません。どうしたらよいですか。

2019.02.19 / 授業の進め方
回答者:南会津郡下郷町立楢原小学校 校長 渡部憲生

A

あなたは、子どもたち一人一人を大切にするすてきな先生ですね。一人一人の子どもの悩み、つまずきを何とかしてあげたいと思うからこそ、子どもの思いに寄り添い、一人に長時間関わってしまうのでしょう。また、そんな先生を子どもたちは信頼し、困ったことがあると相談してくるのでしょうね。このこと自体は教師としてすばらしいことであり、これからもそのような姿勢を大事にしてほしいと思います。

活動全体を通して見たとき、子どもには自分の思いを具現化するための重要なポイントがあります。それは発想・構想をしているときであったり、技能を働かせているときであったり、子どもによって異なりますが、そのような場面では、その子にじっくり関わってあげることが大切です。その子の話を聞き、ともに課題解決していく姿勢こそ大事にしてください。子どもたち一人一人がどの段階でどんなことがポイントになっているかをしっかりと見極め、その子に必要な指導・支援をしていくことが大切です。

でも、多くの子どもたちがいる教室では、それが難しい場合もありますよね。そこで、一人に関わり過ぎず、子どもたち一人一人に関わる方法を2つ提案します。

1つ目は、始めに子どもたち全員の状況を捉える時間を設けることです。

全体を捉えた上で、今どの子がどのような状況で何を必要としているのかを見極め、指導の見通しを立てて子どもに関わっていくことが重要です。子どもたちには、自分で考え実行する力があります。その力を伸ばすためにも、子どもの力を信じ、ときには子どもを突き放してみることも大切になってきます。場合によっては、同じ課題をもつ複数の子どもを集めて指導助言しながら、ともに考えていくこともできます。

2つ目は、子どもたちが自分で考え、試行錯誤し、表現を工夫していくための環境を整えることです。考えるための資料や、材料体験ができたり、表現を試す場などを設定することで、困ったときにそれらを活用しながら子ども自身が考えることができます。場合によっては、教師が資料を提示しながら考えるヒントを示すことも有効な支援になるでしょう。

相談されたときにすぐに指導助言するのではなく、考えるポイントを示すことで、子ども自身が自分で考え、試行することができます。自分で獲得した本物の力とは、そのようなプロセスを経て身についていくのではないでしょうか。

南会津郡下郷町立楢原小学校 校長 渡部憲生

Q

教科書に載っている子どもの作品は上手じゃないものがある気がします。なぜこのような作品が掲載されているのでしょうか。

2019.02.19 / 図画工作科(一般)について
回答者:群馬大学 教授 林 耕史

A

それは、教科書が「上手な作品を集めたもの」というより、「よい作品を紹介する本」だからです。よい作品とは、子どもの思いや願いがにじみ出てくるものであり、しようとしていることや試行錯誤している様子が伝わってくるものです。

教科書の作品は、子どもたちにとって「お手本」ではなく、「こんなことしたいなあ」「こういう絵をかきたいなあ」と、心に呼びかけるものであることが大切です。そして先生方には、「この題材は、こういう活動の姿や表現が見られるようにすることが大切なのだな」と、授業の過程や指導の要点が見えることが必要です。こうした場合、大人が見て「完成された見事な作品」より、大人からは「途中のように見えても、子どもの意志や意図が読み取れる作品」の方が意義深いものになります。もちろん、「上手」であり、かつ上記の要件が満たされる作品が掲載されたページもあるでしょう。その場合でも、先生方からは「上手な作品だね」というコメントより、それぞれのページを見ながら「どうやってつくったのかなあ」とか、「いいなと思う工夫を見つけられたかな?」と子どもたちに声がけしていただきたいと思うのです。教科書を子どもたちと一緒に眺めるとき、すでに、子どもたちの内側では、表現や鑑賞が始まっているからです。

群馬大学 教授 林 耕史
林先生のインタビューが読める「図工のみかた 09号」はコチラから!

Q

指導要領に「イメージ」という言葉がたびたび出てきますが、「イメージ」というと漠然としすぎていてよく分かりません。子どもが形や色から「イメージ」をもつ、とは一体どのような状態でしょうか?

2019.02.19 / 図画工作科(一般)について、学習指導要領
回答者:聖心女子大学 教授 水島尚喜

A

日常会話の中でも、「イメージ(心像)」は、よく使われる言葉です。でも、その言葉を説明しようとすると、なかなか厄介ですね。具体的な場面で考えてみましょう。

紅葉した葉っぱが落ちていました。「わぁ!きれい」といいながら、1人の子どもが手にします。次に、その子は葉っぱを見つめ「いいこと考えた!」と言いながら、葉っぱを並べたり、置き場所を変えたりしながら絵にしはじめました。

造形活動は、主に形や色などの感覚的な内容を対象としています。しかしながら、イメージの世界は単に形と色に収まることはありません。また、イメージは最初から存在しているものではありません。これまでの経験や記憶などが基になり、その子どもの中で編集されたものであるからです。それは言語的な記憶や認識だけでなく、視覚、触覚、聴覚などの感覚によるさまざまな体験の関係性が基盤となっています。その基盤は固定化したものではなく、流動性を帯びています。さまざまなものとの出会いを通して、自身にとって面白い、美しいと主体的に感じたり思ったりしたことが、造形活動のスイッチとなります。ですから「造形スイッチ」がオンになるためには、「わぁ!きれい」といった子ども自らの心の発動が前提となります。

はじめに示した事例では、紅葉した葉っぱ、すなわち過去に見た通常の葉っぱではない、美しくて面白そうな葉っぱへの驚きや着目があり、その結果が「いいこと考えた!」になり、葉っぱを手にしながら自らの記憶や知識の引き出しを関係付け、全体的なイメージとしての構成する活動を楽しんだ、と理解できます。図工の授業では、図工以外での生活経験も生かせるように配慮し、その子がもっている見方や感じ方を尊重してあげたいですね。

ここまで、自然にある魅力的な「材料」に触発されて、子どもが何らかの「イメージ」を誘発し、手で色々と操作しながら、自分にとってより楽しい色と形の構成を試みた事例を基にお話してきました。このように、造形活動では「手や道具」を使いながら「材料」に働きかけ、心像すなわち「イメージ」を顕在化させていくプロセスが特徴的であり、この「材料」、「手や道具」、「イメージ」は密接に関連し合っていることがおわかりいただけたかと思います。「発想・構想」の段階はもちろんのこと、使う材料や用具によって形成されるイメージは異なってきます。ですから、図工の授業では、豊かなイメージ形成のために「材料や用具」をどうするか、イメージそのものが子どもたちのリアリティとどのように関わるかなどの検討がとても大切です。そのような積み重ねが、子どもの生きる豊かさに結実していくのです。

聖心女子大学 教授 水島尚喜
水島先生のインタビューが読める「図工のみかた 01号」はコチラから!

Q

かきたいものややりたいことが思い付かない子どもには、どう手助けしたらよいですか。

2018.11.26 / 授業の進め方
回答者:墨田区立業平小学校 指導教諭 南 育子

A

まずは、「待つこと」が大切です。大人もそうですが、すぐに「かきたいもの」や「やりたいこと」を思い付くのかというと、そうでもないですよね。頭の中で思い描いたり、実際に材料を手元で動かしたりしながら、探って、見て、考えて、つくることを繰り返し、「あっそうだ!」「いいこと思い付いた!」とイメージが浮かんでくるものです。つまり、「待つ」というのは、「かきたいものややりたいことが思い付かないように見える子どもが、どのような状態でいるのかを見極める」ということです。思い付くまでに時間が必要な子どももいますから、そういう子どもはじっくり考えてからつくり始めます。
しばらく待っていても何も始めない子どもには、それぞれ「何も始めない」理由があるはずです。

  • ①今考えているので、もう少し時間がほしい子ども
  • ②先生の話が理解できず、困っている子ども
  • ③どうしたらよいのか何も思い付かずに固まっている子ども

このような子どもがいたら、「どうしたの?困ったことない?」と声をかけてみましょう。

①の子どもは、「今、考えているの」と応えてくれるはずですから、ゆっくり考える時間があることを示し、安心させてあげましょう。

②の子どもには、周りの子どもの活動を見せながら、一つ一つ活動の内容を確認し、説明します。

③の子どもには、まずは材料や用具を手にとって、どんなことができるのか試してみることをすすめてください。画用紙に絵の具で一色塗ってみるだけでも、できた形が目に入ります。もう一色塗ってみると更に新しい形が生まれます。それでも思いとどまっている子どもには、自分で表現し始めるまで、先生とコラボレーションしてみてください。まず初めに、先生が画用紙に絵の具を一色ポンッとのせます。次に子どもが好きな色をのせます。このとき、「画用紙の上に生まれた色合いをよく見て次の色を選ぼうね」と子どもと共有することが大切です。2、3回繰り返すとだんだんこだわりをもって色を選んだり、形に注目したりし始めます。こうなったら、もう一人で大丈夫です。図画工作において、表現の主体は子どもにあります。先生は、子ども自身がやってみたいことや楽しさを見付けられるよう、手助けしましょう。

何も始めず、動かない子どもに気付いたときは、まず「待つ」ことが大切です。いつもよりゆったりと子どもの様子を観察してから、あわてずに声をかけましょう。子どもが自ら活動を始めることができたら、子どもを見守り、自分で乗り越えたことを子どもに伝えてください。その一言で、子どもは自信をつけていきます。

墨田区立業平小学校 指導教諭 南 育子

Q

自分が絵がへたなのに、図工の授業で子どもに教える自信がありません。

2018.11.26 / 絵・立体・工作、授業の進め方
回答者:群馬大学 教授 林 耕史

A

現在、私は大学で教員養成の仕事に携わっています。小学校図画工作についての講義・演習も担当していますが、その授業で必ず学生に伝えることがあります。それは、「図画工作は絵をかくためにある教科ではない」ということです。「立体や工作に表すための教科ではない」「鑑賞するための教科ではない」と言い換えることもできます。こう述べると、学生たちは一様に「えっ?」と驚いた表情をします。みんな、「絵をかくことを教わる教科」だと思っているのですね。そうであるなら、教師は「絵を教える」ことをしなければなりません。かく技術が求められ、絵が上手でなければ教師になれないということになってしまいます。けれども、図画工作はそういう教科ではありません。「絵をかく(あるいは立体や工作に表す、鑑賞する)活動を通して、子ども(人)を育てる教科」なのです。例えば絵をかく授業において、子どもたちは「どうかこうかな」「どんな色を使おうかな」「何をかき足そうかな」「かき直したいな」などと、考えたり、悩んだり、楽しんだり、やり直したりしながら試行錯誤します。このような活動を通して子どもを育てることが、教科の目標です。

ですから、指導する上で大切なのは「絵をかく方法」を教えることではなく、自ら考えることを促したり、悩みに耳を傾けたり、一緒に楽しみながら試行錯誤する姿を大いに認め応援することです。このとき、「絵が上手」な教師は「絵を教えて」しまいがちですから、むしろ「絵が苦手」な人の方が、親身になって子どもの悩みや思いに寄り添うことができると思います。図画工作の時間を通して育てたい子ども像は、「自分で意味を見付け、試行錯誤しながら、自分なりの方法で表現を追求し、自分の思いを実現できる子ども」です。「自分で道筋をつくり、自分の生き方を決められる子ども」と言うこともできます。このような姿を応援できる方なら、素晴らしい先生だと思います。

念のため申し添えますが、「絵が苦手」でも構いません。高度な描画の技術をもっていなくてもOKです。けれども、「よい絵」とはどんなものか、どんな姿が見られれば「豊かな表現」と言えるのかについては、共に見識を深めていきましょう。実は、こちらの「問い」の方が皆さんに大いにお考えいただきたいものなのです。

群馬大学 教授 林 耕史
林先生のインタビューが読める「図工のみかた 09号」はコチラから!

Q

教科書に載っている題材は、当該学年で全題材やらないとダメなのですか。

2018.11.26 / 図画工作科(一般)について、学習指導要領
回答者:帝京大学 教授 辻 政博

A

結論から言うと、1年間で全題材を実践する必要はありません。教科書の題材等を含めた内容は、学習指導要領に基づいて、満遍なく網羅されるようにつくられています。また、どの地域の実態にも対応できるように編集されています。学校現場では、学校の教育目標や、学年や学級の実態に合わせて題材を選択し、1年間のカリキュラムを設定しましょう。

考えるべきなのは、「どの題材を、いくつ実施したか」ではなく、「1年間のトータルとして、求める資質・能力が形成されたか否か」です。学習指導要領の目標に示される「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの資質・能力が、個々の題材における活動を通して総合的に形成されたか否か、が問題となります。

カリキュラムの編成では、A表現、B鑑賞、〔共通事項〕等の内容を押さえながら計画します。より具体的な分野としては、造形遊びをする活動、絵や立体、工作に表す活動、鑑賞する活動があります。これらの活動が、不均衡に陥らないようにすることが、上記の資質・能力を形成する上で重要なポイントです。特に、工作に表す活動の授業時数は、絵や立体に表す活動の授業時数とおよそ等しくなるように計画することが学習指導要領(*1)で定められています。例えば、絵に表す活動ばかりでカリキュラムが構成されていると、子どもが経験すべき活動の多様性が限定されてしまい、十分な資質・能力の形成が損なわれてしまう事態に陥ることも予想されます。

1年間の限られた授業時数の中で、個々の題材にかける時間数は、その学年、その学級の児童の現在の実態と、今後どのように育っていってほしいのか、に大きく関わる問題です。教科書に掲載されたそれぞれの分野の題材群の中から、育てたい力に応じた題材を選択することが大切です。

帝京大学 教授 辻 政博
辻先生のインタビューが読める「図工のみかた 02号」はコチラから!

*1…「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編」 P143

Q

鑑賞の授業は、作品を見せて、感想を言わせればよいのですか。

2018.11.26 / 鑑賞、授業の進め方
回答者:日本体育大学 教授 奥村高明

A

「作品を見せて、感想を言わせる」こと自体は間違っていません。それは、基本的な学習活動でしょう。ただ、言葉尻を捉えるようで申し訳ないのですが、果たして本当に「言わせる」のか、ということを考えてほしいと思います。

そもそも子どもたちは、友だちの作品に対して、あるいは美術作品に出会ったときに、すでに何かを感じ、考えています。何かを、感じ、考えたら、もう言葉で表したくなります。実際、造形活動や鑑賞活動を見ていると、誰も聞いていないのに「いいこと考えた!」と言ったり、ボソッと「ここは、こうだよね」などとつぶやいたりする子どものなんと多いことか……。人間は、本来的に能動的な動物なのです。そして、このようなつぶやきが生まれる直前に、子どもたちは「鑑賞」しているのです。つぶやきの裏側には、必ず具体的な根拠をもっています。その根拠が、絵の形や色なのか、全体のイメージなのかは分かりません。しかし、その根拠から沸き上がった思いがあるから、自ら言葉を発するのです。

けれど、子どもの言葉は潤沢ではありませんし、自分の感じたことを論理的に語り直すことも難しいでしょう。ですから先生は、子どもが本当に言いたいことを、分かろうとする姿勢をもつことが大切です。表面的に表れた言葉の奥にある、その子が本当に感じていること、考えていることを探るのです。「どこからそう思ったの」と根拠を尋ねるのもいいでしょう。作品の鑑賞において感じ考える主体は子どもですから、鑑賞活動は表現活動以上に子どもたちが「主役」だということもできます。先生は、相づちをうつ、子どもの意見に追随する、先生自身も参加者の一人として意見を述べる、ときには天邪鬼なことを言うなど、「脇役」に徹するのもよいでしょう。

あるいは、子どもたち同士が根拠を基に語り合える学習方法や学習環境を工夫したり、表現活動の中に鑑賞活動が大事な要素として溶け込んでいるような学習(*1)を構築することも大切です。以前は、「絵を見せて感想を言わせる」ような学習方法が主流でしたが、この10年で鑑賞の授業は実に多様になりました。表現との境目も今やあいまいです(*2)。教科書や書籍、資料などから、様々な授業方法を集めてみるのも一案だと思います。

日本体育大学 教授 奥村高明
奥村先生のインタビューが読める「図工のみかた 06号」はコチラから!
奥村先生が図工・美術教育について語る連載「学び!と美術」はコチラから!

*1…例えば「ひかりのプレゼント」(平成27年度版小学校図画工作科教科書1・2下P10-11)は造形遊びの題材ですが、光を通す材料を使って、いろいろな見え方を探す鑑賞活動が重要になります。

*2…例えば「筆あと研究所」(同上5・6下P34-35)では、絵画作品を鑑賞して筆あとの特徴を感じ取った後、実際に自分でも筆を使ってかいてみます。「自分でかく」という表現活動が、絵画作品における筆の使い方などをよく見て、感じる鑑賞活動にもつながります。

Q

図工って、子どもが楽しそうにやっていればよいのでしょうか。子どもに何が身に付いているのか、いまいち分かりません。

2018.11.26 / 図画工作科(一般)について
回答者:北海道教育大学 教授 阿部宏行

A

ただ「楽しそうに」やっていればよいわけではもちろんありません。ただ、子どもが「楽しそう」なときというのは、自分の資質・能力を存分に発揮できることに喜びを感じているときです。主体的な学びをしているとき、ともいえるでしょう。子どもが「楽しそうに」やっている姿を、自身の資質・能力を発揮している姿であると捉えると、見え方が変わってくるはずです。

授業中の子どもの様子をよく見てみましょう。つぶやきや友だちとの会話から、発揮している資質・能力を読み取ることができます。例えば、木切れを手にした子どもが、「この形面白いな。こっちから見ると顔に見える!」「この木は、他の木と色が少し違って、きれいだな」などとつぶやいていたら、木切れの形や色の特徴に着目し、自分がいいなと思うものを見付けていることが分かります。また、「こっちに長くつなげよう」「平らな形を底にして、高く積もう」などと、木切れの並べ方や積み上げ方を工夫し始めたら、発想や構想をする力を働かせて、自分の思い描くイメージを実現しようとしていることが分かります。さらに、友だちと一緒に活動することで、友だちのアイデアに造形的な刺激を受け、発想が広がっていくこともあるでしょう。友だちと活動をともにすることは、自分の思いを伝える力や、協働性を伸ばすことにもつながります。

そして、何かをつくりだす行為自体が、子どもにとって喜びであり「楽しい」のです。創造する力は、人間だけがもっている力です。子どもが自らの創造する力を発揮し、形や色と関わる中で、新しい意味や価値をつくりだしている瞬間を、授業の中でたくさん見つけてみましょう。その姿を見取ることは、先生の大切な役割の一つでもあります。

北海道教育大学 教授 阿部宏行
阿部先生のインタビューが読める「図工のみかた 03号」はコチラから!
阿部先生が図工で大切なことを4コマ漫画で伝える「ABCシリーズ」はコチラから!

Q

自分が図工の授業で行っている指導や子どもの活動が、学習指導要領に沿ったものになっているのか分かりません。

2018.11.26 / 図画工作科(一般)について、授業の進め方、学習指導要領
回答者:日本体育大学 教授 奥村高明

A

「自分の授業が、学習指導要領に沿っている」かどうかを検討するよりも、「自分の授業は、まずもって妥当だ」とした上で、授業中の指導や子どもの活動の、どの部分が学習指導要領に該当するかを考えてみましょう。学習指導要領は、児童の発達や美術などの学問的な背景もありますが、何より学校の、教室の、数多くの「教育実践」をもとに組み立てられています。「教育実践」から離れた学習指導要領など意味がありません。「教育実践」こそが貴重で、かけがえのない存在です。

ですから、そもそも、授業中の子どもの姿に、「学習指導要領に沿っていないから間違いだ」ということはありえません。その子の活動には、その子なりの理由があります。その子が、その子らしい資質・能力を発揮しているから、目の前の形や色が生まれています。できあがった作品から考えるのではなく、一瞬の動作やまなざし、展開された形や色などから、子どもたちの資質・能力が表れていることを確かめましょう。そうすると、「ああ、これが知識や技能か」「今のこの姿が、思考力・判断力・表現力等が働いている姿なんだな」などと具体的に「三つの柱」が捉えられると思います。今回の学習指導要領は資質・能力を基に整理されていますから、このような試みを後押ししてくれるでしょう。

指導についても同様です。例えば、学習指導要領の解説書(*1)で「指導に当たっては~」「指導計画の作成に当たっては~」の後に続く文で示されている指導上の留意点は、これまでの大勢の先生たちの実践の積み重ねから編み出されたものです。これをピックアップして参考にしてみるのも一つの方法でしょう。もちろん、授業研究や研究大会などで、学習指導要領の文言や内容などを基に、自分の授業を考える側面もありますが、日本の学習指導要領改訂の歴史を見れば、常に「教育実践」や「教育現場の状況」などに照らし合わせて改訂されてきたことが分かります。学習指導要領や解説書などが、子どもの姿や日本の先生たちの実践から考えられていることに自信をもってほしいと思います。

日本体育大学 教授 奥村高明
奥村先生のインタビューが読める「図工のみかた 06号」はコチラから!
奥村先生が図工・美術教育について語る連載「学び!と美術」はコチラから!

*1…「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編」

Q

絵の題材では、表す対象やテーマをある程度限定した方がよいのでしょうか?子どもに任せて、自由に選択できるようにした方がよいのでしょうか?

2018.11.26 / 絵・立体・工作、授業の進め方
回答者:帝京大学 教授 辻 政博

A

テーマや表し方を限定することで、活動の広がりや多様性が生まれる場合もあります。限定された中で自分なりの表現を追求する経験と、テーマや表し方を自分で自由に選択する経験との、両方を積み重ねることで、子どもの創造性が高まっていきます。

例えば、自分たちが丹精込めて育てた「ひまわり」を絵に表すことは、自然な動機に基づいています。同じテーマでも個々の子どもの思いや表し方が異なってくるでしょう。けれども、教師が一方的に「今日はひまわりをかきます」と決めてかき方を教えるという授業は、テーマと子どもの動機との間にずれが生じてしまいます。

また、描画材などの材料を限定して活動することも考えられます。描画材の特性によって、そこに表現される形や色やイメージが異なってくるでしょう。

大切なのは、「限定することで、子どもの発想や表し方の広がりが保証されること」です。また、子ども自身が、テーマや表現方法を選択する経験も、子どもの成長には必要です。限定された中で活動すること、自由に選択して活動すること、双方の経験を積み重ねることが、やがては自分でテーマを決め、自分なりの表し方ができる力を身に付けることにつながっていくでしょう。

帝京大学 教授 辻 政博
辻先生のインタビューが読める「図工のみかた 02号」はコチラから!

Q

子どもが「できた!」と言って作品を持って来たけれど、完成したように見えないときは、どう声をかければよいですか。

2018.11.26 / 授業の進め方
回答者:目黒区立五本木小学校 指導教諭 鈴木陽子

A

まずは、その子の作品に表れている形や色、表し方などのよさを伝えましょう。そして、作品の題名や表現への思いを尋ねてみるといいですね。そうすれば、子どもがどんな思いや考えをもって表現していたのかが見えてくると思います。

「なるほど、そういうイメージだったんだ。だからこの余白は必要なんだな」
「この部分は本当に時間をかけてかきこまれているな。少し筆が荒れているところは、画用紙のサイズが大き過ぎたかな」
「そうか、この子は自分の表したいことがはっきりしていなかったようだな。導入がまずかったかな」

まずは、子どもの思いや考えを受け止めることが大切です。そうすることで、自分の指導の課題や次の手立てが見えてくることもあります。「自分の表したいことがより伝わるようにするには、どうしたらいいかな」と学習のめあてに立ち返り、子どもと一緒に材料や用具を扱いながら考えてみるのもよいでしょう。友だちの作品や活動を見てくるように促してもいいですね。友だちの材料や用具の生かし方、表し方のよさに気付き、自分の表現に取り入れたくなるかもしれません。

先生は、子どもの作品のできばえだけに目を向けるのではなく、学習活動の過程に目を向け、子どもの活動を共感的に見守りながら、発揮している資質・能力を捉えていくことが大切です。「材料の組み合わせを何度も試しながら、いい形を探しているな」「次はどうするのかな」「となりに置く色をじっくり考えているな」「挑むように用具の手応えを感じているな」「筆の使い方を試すことから表したいことを思い付いているな」などと、活動の様子から子どもの思いを想像してみましょう。子どものつぶやきや表情、行為、材料や用具の使い方などをよく見て、子どもの感じていること、考えていることに身を重ねていくと、それぞれが発揮しているよさを捉えることができます。そして、そのよさを本人に伝えましょう。子どもの心に届く先生の声かけは、「もっとやってみよう」「もう少し考えてみよう」と学びを深めていくことにつながると思います。

子どもの活動や作品は、教師の鏡です。私は、常に子どもの姿から、学習のねらい、材料や用具、環境、指導計画などが適切であったかを見直すことを心がけています。図画工作の評価は一つの作品だけでするものではありませんよね。題材の前後のつながりを考え、年間を通して評価し、資質・能力を育てていくものです。先生自身が育成する資質・能力を明確にもっていることが大事ですね。

子どもが夢中になって、つくり、つくりかえ、つくりだしたときの「できた!」は、「自分はこんなことができるんだ」「思ってもみなかった新しい自分をつくりだすことができた」という喜びの「できた!」でもあります。

目黒区立五本木小学校 指導教諭 鈴木陽子
鈴木先生のインタビューが読める「図工のみかた 10号」はコチラから!

Q

授業で造形遊びをすると、子どもたちはとても楽しそうに活動しているのですが、どのような力が働いているのか見取るのは難しく感じています。どんな姿を見取ればよいのでしょうか。

2018.11.26 / 図画工作科(一般)について、造形遊び、学習指導要領
回答者:北海道教育大学 教授 阿部宏行

A

子どもは、幼い頃から「遊び」の中で「学び」を得ています。幼稚園児が、友だちと園庭で楽しく遊んでいる様子を思い浮かべてみてください。手や体全体で砂の感触を存分に味わう姿、木の実や葉でつくりたいものをつくる姿、失敗しても何度もトライする姿、友だちと協力して遊ぶ姿……。一見楽しく遊んでいるだけのように見えても、子どもは自らのもつ感性や創造性、協同性を存分に発揮し、日々成長しています。

このような「遊び」の教育的な意義と創造的な性格に着目し、図画工作の学習として位置付けたのが「造形遊び」です。

学習指導要領の解説書において、造形遊びは、「児童が材料などに進んで働きかけ、自分の感覚や行為を通して捉えた形や色などからイメージをもち、思いのままに発想や構想を繰り返し、技能を働かせてつくること」(*1)とされています。

例えば、「どんどんならべて」(*2)における子どもの活動から、子どもが働かせている資質・能力を考えてみましょう。子どもたちは、材料を並べたりつなげたり積んだりする中でイメージを膨らませ、思い付いたことを工夫して表現します。材料と関わることで形や色の特徴に気付いたり、思ったとおりにいかないときは、考えや方法を変えたりするなど、実現したい思いを大切にしながら活動しています。友だちの表現に驚いたり、自分の表現を友だちに紹介したりすることもあるでしょう。つくる過程そのものを楽しみながら、「つくり、つくりかえ、つくる」という学びの過程を経験しているのです。このことが、資質・能力の育成につながります。

絵や立体、工作に表す活動との大きな違いは、学習の初めに、つくりたいものの主題や内容があらかじめ決められていない、ということです。この特徴が、子どもの発想をより自由で多様なものにします。もちろん、絵や立体、工作にもそれぞれの特徴とよさがあります。造形遊びをする活動で得た材料と関わる経験が、絵や立体、工作に生きる、ということもあるでしょう。特定の分野に偏ることなく実施することが、子どもが元来持っている可能性を限定することなく伸長していくために、大切なのです。

北海道教育大学 教授 阿部宏行
阿部先生のインタビューが読める「図工のみかた 03号」はコチラから!
阿部先生が図工で大切なことを4コマ漫画で伝える「ABCシリーズ」はコチラから!

*1…「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編」P26

*2…平成27年度版小学校図画工作科教科書1・2上P40-41

Q

学校で、「なるべく差異がない作品になるよう指導してください」と言われることがあります。一人一人の個性やよさも伝えていきたいのですが、どうすればよいでしょうか。

2018.11.26 / 図画工作科(一般)について
回答者:群馬大学 教授 林 耕史

A

それは困りましたね。意に反してそのような指導を強いられるのは辛いところです。対応策は、シンプルですが段階が必要です。

その1。「みんなが違っていて面白いな!」と感じることができる題材を展開します。「みんなが同じようにかくこと」を目指そうとする勘違い指導に至らないような題材がよいですね。

その2。これが肝心なのですが、その題材を行った結果、子どもたち自身が「みんなの表現が、いろいろあって楽しいな」と感じることです。自分なりのやり方がよかった、それが認められてうれしかった、と子どもたちが感じるようにしたいものです。そして、できあがったそれぞれの作品が並んだときに、多様であるからこそ面白い、楽しい、美しいと、先生が子どもたちと一緒になって喜びがもてるようにしましょう。子どもたちがそう実感できるように導く先生は素敵です。「みんな違ってみんないい」などという謳い文句だけ言っていればよいのではありません。子どもたちにとって「本当に、いいなあ」という実感がなければ意味がないのです。子どもたちが、できてよかった、友だちと違うことになって面白かった、今度はどんなことをしようかなと、心の中が豊かになっていくとよいですね。

これらを踏まえてその3。大事な最終段階は、保護者に伝えることです。参観日などで、一人一人違う表現のよさ、面白さをぜひ語ってください。子どもたちのコメントも添えましょう。私も、かつて参観日や個別懇談会の折に、子どもの作品(たとえその作品が、一見失敗したように見えるほど汚くなってしまったものでも)を例に出して、どうしてこのような表現になったのか(あるいは、どうして汚くなってしまったのか)などのプロセスを説明することを心がけました。汚くなってしまった作品については、その子が意図したことや、うまくいかず繰り返し試したこと、このように取り組んだ子は〇〇さんだけだったこと、などを話しました。そのときの、本当にうれしそうな、安堵した保護者の表情が、強く記憶に残っています。

こうしたことを少しずつ積み重ね、図工の理解者になってくれた子どもや保護者の反応を管理職に伝えながら理解を得ていくようになさっていただけたら、と思います。

群馬大学 教授 林 耕史
林先生のインタビューが読める「図工のみかた 09号」はコチラから!

';