もっと知りたい指導の工夫 vol.1
思考力をはぐくむため、「鑑賞図」を活用する

 教科情報誌『形 forme』連載企画「学びのフロンティア」に登場した先生方の取り組みや指導の工夫をさらに深く聞きます。第一回目は314号で紹介した熊本大学教育学部附属中学校・村田崇先生です。

「なぜ?」に向き合い、発見と感動を積み重ねる

10の考え方

 熊本大学教育学部附属中学校では、各教科で「思考力」を重視。各教室に「10の考え方」を掲示しているほか、生徒にはシール配付などもしている。常に、各場面で生徒が活用できるように、思考を視覚化させるための工夫。

 熊本大学教育学部附属中学校の村田崇先生が目指しているのが、「思考力を養う美術教育」です。ただ絵を描く、ただ鑑賞するのではなく、「なぜ、そのかたちが必要なのか」「なぜ、その色や素材を選んだのか」をしっかり考察し、発見と感動を積み重ねながら、豊かな感性をはぐくんでほしい――。そんな思いのもと、考えるきっかけになるような働きかけについて追求し続けてきました。
 「子どもたちの思考力を育てるため、さまざまな題材や方法を検討しました。その中で生まれたのが『鑑賞図』というワークシート。授業の冒頭で、まずはひとり一人の生徒に、この鑑賞図に『作品を見てどう思ったか』を書いてもらうようにしています」
 こう語る村田先生。作品の説明はほとんどせず、鑑賞図を通じて、まずは生徒と作品を対峙させるということを徹底して実践しています。

対話でも文章でもない、「鑑賞図」という方法

 鑑賞図は、作品を見て感じた印象を真ん中に書き込み、その周囲にマインドマップの要領で、形、色、気づいたことを書いていくというワークシートです。感想や印象は四角、かたちは丸、色は二重丸で囲むというルールを設け、視覚的・直感的に整理しやすいよう工夫しました。

 「対話による鑑賞だと発言力のある子が、感想を書かせる鑑賞だと文章の上手な子が評価されがちです。ずっとそこに違和感を持っており、生徒全員が本気で考え、主体的に鑑賞できる授業をしたいなと思い続けていました。鑑賞図を使えば、全員が作品と向き合わざるを得ない状況をつくることができます。また、鑑賞図を使ってじっくり鑑賞をしたあとで、『なぜこのようなかたちや色を使っているのか』などの問いかけをしたり、グループディスカッションを行ったりすることで、生徒自らが作品の工夫やよさを発見し、学びを深めることができるようになりました。」(村田先生)

学んだことや考えたことを、しっかり頭に焼き付けてほしい

 現在は、『形 Forme/314』で紹介した「仏像の鑑賞」のほか、すべての鑑賞の授業で、必ず鑑賞図を使うようにしているそうです。
 「授業のなかで見方が変わったら、鑑賞図も加筆する。そうすることで、思考のプロセスを振り返ることができるようになりました。1時間の授業で、こういうことを学んだな、こういうことを考えたな、という印象が強く残る、深い授業をすることを目標にしています」
 こう語る村田先生。鑑賞図を通して徹底的に考えることで知識や感動が深まり、考えることが当たり前になり、やがては社会を生き抜く「思考力」を育つものと考えています。

文:秋山由香(Playce)