ブックタイトル中学校美術 マンガで解決!指導の悩みABC
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中学校美術 マンガで解決!指導の悩みABC
ここがポイント! 小学校生活から中学校生活へ、子どもたちを取りまく学習環境や生活は大きく変化します。しかしその変化の多くは学校というシステムが変化をもたらすのであって、子どもたち自身が急に変化するわけではありません。 また、中1ギャップという現象が問題視されることがありますが、子どもたちには何の落ち度もないのです。私たちは襟を正し、その問題の原因を根幹から見つめ直す必要があるのではないでしょうか。 中学1年生の彼ら自身にとっては3月31日の次の日は4月1日であり、学びの連続性は保たれなければなりません。小学校の教師は小学生のことを、中学校の教師は中学生のことをよく理解できますが、お互い異校種の理解というと十分とは言えません。私たち中学校の美術教師は小学校のみならず子どもたちが幼少のころから培ってきた造形活動で得たものに着目する必要があるでしょう。 子どもたちは、美しいものを発見した記憶やつくりだす楽しさ、感じ取ってきたことを大切に心の中に持ち続けています。表現や鑑賞といった造形活動における思考は何もないところから自然発生するものではありません。小さい頃からの手ごたえや喜びの中から新たな発想は生まれてきます。その一人一人の価値観を私たち美術教師は尊重し、大切にしなければなりません。そのためには、成長過程の中で彼らが中学生らしい新たな手ごたえのある学びを生み出していく視点を見据え、授業をデザインする力量を持たなければならないのです。 子どもたち一人一人を暖かく見つめ、その創造のエネルギーに寄り添いましょう。 答えは目の前の子どもたちの中にあるのです。学習環境の変化と子ども 学びの連続性 美術室にはたくさんの材料や用具があります。電動糸のこぎりやプレス機、木材の端材…。そのほかにも画集や先輩の作品が並び、胸が高鳴ります。この新しい環境を楽しむために大切なのは「言葉の刃物を人に向けない」こと。表現しようとする気持ちを傷つける言葉は、他者にも自分にも向けてはなりません。他者への「へたくそ」「何それ、自慢?」は、自分への「どうせ無理」「センスないし…」に変わります。 以前は生徒たちをどこか子ども扱いして、効率的な授業規律を押し付けていました。しかしそれでは威圧感や閉塞感ばかりで、すべての生徒が安心できる授業にはなりません。ある日「美術の授業は公開処刑。上手くできないからみんなに見せたくない。」と訴える生徒の涙で、ハッと気づきました。生徒の私語がないのは、活動に集中している場合もあれば、自分に向けた刃物で孤独に耐えている場合もあるのです。 現在、授業開きではアートカードを使った伝言鑑賞ゲームを二人一組で行います。マンガなどの文字デザインを鑑賞したあと、形や色彩、イメージを言葉や身振りで相手に伝え、受け取ろうとします。この交歓で生徒は、他者との見方や受け取り方の違いに自然と気づきます。教え込まれるのではなく自ら気づくことは、生徒にとって大きな自信となり、そうして美術室は「自分たちの場所」に変わるのだと思います。 学校は生徒たちが新たに挑戦し、仲間と試行錯誤して新しい未来を発見する場所です。素直な驚きや疑問の呟きを禁じたり、お互いに言葉の刃物を向けたりすると、好奇心も表現したいと思う勇気も小さくしぼんでしまいます。中学生は評価を気にしてやりたいことを胸に仕舞い込みがちな年代です。生涯に続く日常の表現の楽しみを保証するためにも、一人一人を大切にした「安心できる学びの環境」を美術室につくっていこうと考えています。言葉の刃物は他人も自分も傷つける例えばほかの先生はどんな授業をしているのでしょうか?図画工作から美術へ中野区立第五中学校花里 裕子先生11指導の悩みABC12