ブックタイトルどうとくのひろば No.14
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どうとくのひろば No.14
見てわかる!道徳「道徳とは何か」「道徳とは何か」を考えるときに手がかりとなるのは,それと密接な関係をもつ他のものと対比してみることです。たとえば,道徳と,法律,マナーの違いを考えてみましょう。道徳について問いかけられたにもかかわらず,法律に訴えて答える人は少なくありません。「どうして他の人の持ち物を盗んではいけないのか」という問いに,「盗むと窃盗罪で処罰されるから」と答えるなら,法律の権威に訴えているにすぎません。「そうするのは人付き合いのマナーに反するから」と答えても,やはりマナーの権威に訴えているだけです。法律もマナーもその権威を頼みとします。すると,なぜそうなのかを考えにくくなります。また,法律とマナーの中だけではうまく答えを出せません。どんな行為であっても手続きを経たり習慣を積み重ねたりすれば,法律やマナーとして通用しうるからです。特に,マナーの場合,お辞儀をするか握手をするかなど,その多くに根拠がありません。あったとしても,そうすることが便利だから,といったものでしかないのです。このように,法律やマナーが権威に訴えかけるのに対して,道徳にはその理由を探求する姿勢が求められます。先の問いに道徳の観点から答えるなら「相手の権利を侵害するから」となります。道徳の観点では,さらに「なぜそう言えるの?」と問えます。そして,さらに「相手を,自己利益獲得のための単なる手段とみなして,その尊厳を傷つけるから」と答えることができます。道徳では,法律やマナーとは異なり,「そうであること」の理由を提示することが求められるのです。ただし,その理由は,理由を問い合う人々の間で拒否されずに共有されうるものでなければなりません。だから,「ならぬものはならぬ」という問答無用の規範的主張はもちろん道徳の一部ではありますが,全てではありません。「なぜそれはならぬのか」という理由を,さらに問えるのが道徳なのです。しかし他方で,どんなものにも疑問符を打てるなら,結局のところ,法律やマナーと同様,道徳もまた何でもありなのではないか,と思われるかもしれません。しかし,それは違います。人と人との間で言葉を尽くして理由を探求する営みには,必ず筋道が伴われます。その筋道を辿って問答を続けられることは,「何でもあり」を意味しないのです。このように,道徳は,法律やマナーのあり方だけでなく,道徳それ自体のあり方すら問いうる問答の継続にその根をもち,その意味で,他者と共に言葉を用いる人間にとって普遍的なものなのです。(奥田)問い:どうして他の人の持ち物を盗んではいけないのか?法律の答え盗むと窃盗罪で処罰されるから。道徳の答え相手の権利を侵害するから。マナーの答えそうするのは人付き合いのマナーに反するから。法律の権威さらなる問い:それはなぜ?マナーの権威道徳の答え相手を自己利益獲得のための単なる手段とみなしてその尊厳を傷つけるから。さらなる問い:それはなぜ?普遍的な道徳価値の探求図1道徳,法,マナーの違い2