ブックタイトルどうとくのひろば No.14
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どうとくのひろば No.14
実践事例中学校美術科の対話型鑑賞のスキルを生かす福岡県八女市立西中学校教頭中島賢二1美術科の独自性私の専門教科は美術である。テレビの中学生日記で,生徒の悩みを聞く役どころの先生は決まってヒゲがつきものの美術教師だったように,新任の頃からぼんやりと「美術科の独自性」を感じてきた。中堅と言われる年代になった頃,当時文部省の視学官をされていた遠藤友麗先生の講話を聴く機会があり,それまでぼんやり考えていた「美術科の独自性」が少し理解できた気がした。遠藤先生のお話は美術教育についてなのだが,内容の9割は自身の教員人生の振り返りであり,そのほとんどが生徒指導についてであった。おそらく遠藤先生の伝えたかったことは,「美術科教育はまさに積極的な生徒指導であり,美術科はデッサン力だけでなく人格を育成する教科である。」なのだと自分なりに解釈した。美術科は,上っ面だけで評価できる教科ではなく,生徒そのものの成長を評価すべき教科なのだと。そして,このことは前教科調査官の奥村高明先生がおっしゃった「美術・図工の先生がすべきは,『作品の評価』ではなく,『作品からの評価』である。」という言葉にも共通するところである。このことを踏まえ,50代になった今気づいたことがある。それは,私が今まで「美術科の独自性」と感じてきたことは「道徳の時間の独自性」とよく似ている,ということである。そして,それが最も顕著に表れた例として,以下に述べる美術科の「対話型鑑賞」と道徳の時間の「視覚的表現活動後のやりとり」の類似を挙げたい。2対話型鑑賞と道徳の時間最近,本校の若手教員が取り組んでいる道徳授業のスタイルが面白い。管内の小学校で行われていた「視覚的表現活動」を取り入れた授業をモデルとしているのだが,従来から行われている心情図やネームカードではなく,「心の色図」という表現活動を重要な手立てとしている。この「心の色図」は従来の活動に比べ,発問に沿って短時間で描くことと,全員共通の画材を使って描くこと以外の制約はほとんどない。色や形の選択がかなり自由である。どちらかというと,読書感想画などの心象表現活動に近い。本校若手教員が行った実践の一例を挙げる。『私たちの道徳』の中に収録されているコラム「賢者の贈り物」を題材にした授業である。物語のあらすじは,「仲の良い若夫婦が貧しい中やりくりしてお互いにクリスマスプレゼントを贈り合う」というものである。夫は妻の大切にしている髪のための櫛を,妻は夫の大切にしている金時計のためのチェーンを,プレゼントとして用意するのだが,皮肉なことにそれぞれ髪と金時計を犠牲にして用立てたものであった。本時の内容項目は「思いやり」であり,「視覚的表現活動」として生徒に与えられた問いは,「櫛をプレゼントとして買ってきたのに髪を切っていた妻を見て,しばらくぼうっとしたときの夫ジムの心の中をクレヨンで表現しよう」であった。このクレヨンを使った活動の後の,教師と生徒あるいは生徒同士のやりとりが美術科の「対話型鑑賞」と類似しているのである。例えば,作品を見て「この引っ掻いたような描き方はどんな気持ちを表しているのだろう?」という教師の発問(あるいは,生徒が感じた疑問)に対して,「後悔の念と互いの優しさが交錯した,そんな感じ……」などと生徒が答え,そのことについてさらに交流を加えていく。このように,両者とも非言語による表現を言語化していく作業なのである。この他にも様々な類似点があるので,思いつくままに挙げてみる。・まず,じっくり作品を見る時間をとる。・感じたことを自由に発言させる。(作者の意図6