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概要

どうとくのひろば No.16

「先生の考えに合わない意見を言ったり書いたりしたら評価は下がるの?」今回のテーマこんなとき,どうする?子どもたちと接する中で出てくる,「こんなとき,どうする?」。道徳教育をより輝かせるためのヒントを,先生方に教えていただきました。多様な考え方や感じ方に気づく道徳学習岐阜市立市橋小学校校長河合宣昌子どもに,「先生の考えに合わない意見を言ったり書いたりしたら評価は下がるの?」と聞かれたら,「道徳の時間は,様々な考え方や感じ方に気付く時間だから,評価は下がりません。」と答えます。むしろ,教師が考えもしなかった意見を表出したことに感謝の気持ちをもちます。なぜなら,教師は授業をするとき,発問に対する子どもの反応を予想しますが,その予想を超えているからです。そして,教師自身が新たな考え方や感じ方に気づくこともでき,すばらしいと思います。道徳の時間は,様々な考え方や感じ方に出合い,自分はどんな考え方や感じ方であるのかを確かにしていく時間です。したがって,教師は,多様な考え方や感じ方を表出する指導の工夫を積み上げることが大切になります。「あなたの考えや意見」が大切豊島区立西池袋中学校校長江川登生徒に尋ねられたらこう答えます。よりよく生きていくために,みんなで話し合って自分の考えを深めていくのが道徳の時間です。先生の考えではなく,みなさん一人ひとりの考えを大切にします。評価するのは,学習活動の取り組みです。「自分と違う意見を大切にしているか」「いろいろな側面や角度から考えようとしているか」「登場人物を自分に置き換えて理解しようとしているか」「実際に行動することの難しさを自分のこととして考えているか」などが重要です。みなさんの成長が分かるように,文章で表現されます。ですから,先生の考えに合わないことで評価が下がることはありません。自信をもって,よりよく生きていくための「あなたの考えや意見」を言ったり,書いたりしてください。この質問がなぜ気になるのか琉球大学教授上地完治「授業者の考え」=「道徳的に正しいこと」ならば,それを子どもに教えることは否定できないのでは?―そう考える先生にとっては,この質問に「そんなことないよ。」と答えるのはとても難しくなりそうです。道徳授業で,子どもが自分なりに理由を考えて,道徳的に正しいことを獲得できたとします。このとき,道徳授業の意義は,「道徳的に正しいことを獲得できた」ということよりも,「子どもが自分なりに理由を考えて」という学習のプロセスの部分にあるのだと考えてみてはどうでしょうか。「物事を(広い視野から)多面的・多角的に考える」ことが大切だと新しい学習指導要領も言っています。それに,このプロセスを経ないで「道徳的正しさ」が得られたとしても,それは決して自分のもの(自分事)にはならないでしょう。16