ブックタイトルどうとくのひろば No.16
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どうとくのひろば No.16
地球の仲間からのメッセージ元大阪市天王寺動物園園長長瀬健二郎かえ卵を孵す両親が交代で卵を温めて孵す,というのが鳥のイメージで,確かに多くの鳥がそうします。身近なものではスズメやツバメ,それにカラスなどがそうです。でも冬になると川や池に渡ってくるカモでは,それは母親だけの仕事になります。季節の風物詩になっている皇居前の道路を渡ってお堀に入るカルガモ親子ですが,映像を思い出してください。あの時に見られるオトナのカモは一羽だけです。先頭をお父さんが引率し,それにヒナがついてゆき,最後をお母さんがヒナたちを守る……。そんな光景が画面で流されたことはないですよね。お母さんだけでするのがカモの子育てです。キジの仲間も同様です。逆にお父さんだけでヒナを育てる鳥もいます。タマシギという鳥がそれです。日本では田んぼや湿地で暮らしています。メスはオスよりも体が大きく羽色も派手で目立ちます。一羽のメスが数羽のオスとペアになり,オスが守る巣に卵を産んで回ります。オスはそれらの卵を一羽で温め子育ても一羽で行うイクメンです。が,世界中を見回すとやはりオスだけで子育てする鳥はあまり多くありません。ほんのわずかの種ですが,両親がそろって抱卵も子育てもしない鳥がいます。それはオーストラリアや大洋州に住むツカツクリと呼ばれる仲間です。ではなぜ両親に見捨てられた卵が孵化するのでしょうか。それは自然の力を利用しているからです。火山島に住んでいるものは地中に卵を産んで地熱によって温めます。あるものは浜辺の砂の中に産んで,太陽の熱で孵化させます。またあるものは枯葉などを積み上げて塚を作り,それらの堆積物が発酵して出す熱を利用して卵を孵します。この鳥の場合は,父親が付き添い,時折,塚にクチバシを突っ込んで温度を測り,発酵が進み過ぎて熱くなっていれば枯葉を取り除き,温度が下がればまた枯葉を追加する,という温度管理をします。どの鳥のヒナも,孵化したばかりでも自活す▲ホオジロカンムリヅルの親子ツルは両親そろって子育てに励みまする能力を持っていて,卵から孵った時から単独で暮らします。たくらんカッコウやホトトギスは托卵といって,他の鳥の巣の中に自分の卵を産んで育ててもらいます。ずいぶんと身勝手な方法ですが,産み込まれたほうの鳥も見破って卵を巣から捨ててしまうこともあり,そんなに確実な子育ての方法でもないようです。さまざまな鳥がさまざまな子育て方法を持っています。そのいずれもが,一羽でも多くの子孫を残そうと鳥たちが編み出した秘法なのです。