ブックタイトルどうとくのひろば No.16
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どうとくのひろば No.16
ことではありません。そこに住む人々が,明日に希望を持って生活していけるようになる,当たり前の日常生活ができるようになる,そのことが大切なのだとつくづく思います。「生活の足」と地域貢献流出した島越駅と高架橋鉄道の存在感今回の震災で強く感じたことがあります。それは,鉄道の存在感の大きさです。震災から2ヵ月が過ぎた5月のある日,私は北リアス線の被災状況を調査するため,田野畑駅に赴きました。駅舎はかろうじて残っていましたが,周辺の家々は津波で流出し,線路も寸断されていました。しかし駅には駅舎の清掃と周辺の草取りをする多くの住民の姿がありました。復旧についてまだ何も決まっていない,いやむしろ鉄道の復旧は絶望視されていた時期のことでした。その姿を見たとき,私は思いました。「この人たちのために何とかして鉄道を復活させよう」と。そしていよいよ南リアス線の運行が再開した日,ほれい甫嶺駅に集まってくださった住民の皆さんの中にボードを掲げている女性の方がいました。ボードに書かれていたのは「おめでとう」でも「ありがとう」でもなく,「おかえり」でした。翌日の北リアス線運行再開の日に,島越駅周辺で一軒だけ残った家に掲げられたボードに書かれていたのも「おかえり」でした。さらに三陸鉄道が全線運転再開したその日は,26ある三陸鉄道の駅に多くの住民の皆様が集まり,大漁旗を振って,大歓声とともに笑顔で祝ってくれました。地域の皆さんにとって,三陸鉄道は家族のような存在なのだと感じた瞬間でした。三陸鉄道を復活させたのは,こうした地域の皆さんの「想い」なのかもしれません。私は,三陸鉄道の復旧には2つの大きな意義があると考えています。1つは地域の皆様の「生活の足」となること。児童・生徒の通学や高齢者の買い物など,いわゆる交通弱者の交通手段を確保することです。鉄道は安全・安心な乗り物で,そして環境にも優しいので,生活の足にはうってつけです。2つ目は地域の産業振興や活性化に貢献することです。三陸鉄道沿線には,国の名勝に指定されている宮古市の「浄土ヶ浜」や日本一の海岸美に選定された田野畑村の「北山崎」,恋人たちの聖地となっている「恋し浜」など多くの見どころがあり,アワビ,ウニ,マツタケなど美味しい食材にも恵まれているので,観光旅行も十分楽しめます。また,現地を自分の目で見て,震災について学ぶことも大切ですから,教育旅行にも適しています。そうして県内外から三陸沿岸地域に来ていただき,宿泊し,食事をし,お土産を買ってもらうことが,地域振興や活性化につながります。さらに,鉄道を利用し,ゆったりとした旅を楽しみたい多くの人にも満足と笑顔をもたらすことでしょう。これからも地域とともに私が知る限り,鉄道が廃止されて栄えた地域は日本にひとつもありません。地域を衰退させないためにも,鉄道の持つ利点を活かしていくことが大切です。三陸鉄道が,これからも地域と地域を結び,人々の笑顔をつないでいくことを願ってやみません。三陸鉄道「レトロ列車」車内にて当たり前の日常生活を震災からまもなく6年,三陸鉄道が全線で運行を再開してから3年になります。しかし地域の復旧はなかなか進まず,駅前に家が戻っていない所が多くあります。また少子高齢化・過疎化も進んでいます。課題は多く,震災からの復興は容易ではありません。復興は,単に家や街並みが元に戻る1