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概要

どうとくのひろば No.17

私にとって2020年はオリンピックでもあり,この活動を認知してもらうための期間にも思えたのですね。―ご活動のきっかけというのはあったのでしょうか?もともと弱い立場の人や動物のための団体を立ち上げたい気持ちがありました。まず,やはり一番声を出せない―「声なき声」と私は言っているんですけど―動物たちを何とかしたいと。このことについて声を上げる方がなかなか日本でいなかったという現実もありましたし。―「動物愛護」についてはずっと関心をお持ちだったんでしょうか?「動物愛護」でも「動物福祉」でもなくて,私たちはこれを「アニマルウェルフェア*」というふうに呼んでいます。私たちがいろんなものを与えてもらっている以上,共存する形で彼らにとってよりよい環境を作るべきだと思うんですね。海外では「アニマルウェルフェア」ってすごく進んでいます。*アニマルウェルフェア……人間が動物に与える痛みやストレスなどを最小限に抑え,動物の健康的な生活・生存権を実現する考えのこと。―日本と海外とでは考え方が違うものですか?かなり違いますね。日本はアジア圏では進んできているようにも感じますが,先進国の中では一番遅れています。おもてなしなど,いろんな面で優れている日本ですが,ペットや野生動物との共存や生き物に対する知識については教育されていないと感じます。親が子どもに対して「命の大切さは当然知ってるでしょ。」と思っていても,実はちゃんと教えないと理解できないことなんですね。海外では,教育者がちゃんときめ細やかに「動物と人間は対等」だと伝えています。―具体的にそういう授業があるんですか?はい。以前,コスタリカで教育の現場に行かせてもらいましたけど,興味深かったのは,「私たちは生態系の中の一部であって,決して上にいるわけじゃない。征服しているわけじゃない。」ということを教えていたことです。そう言われると「えっ?」って思いますよね。私たちは生態系や食物連鎖の図で人間が入っていないことを不思議に思わないですけど,「入っていないことが不自然」ということを教えているんです。そういう教育が強化されている国だったので,「ああ,すごいなあ。」って思いました。―生態系の一部に人間もいるという気持ちを忘れてはいけないということですね。はい。本当に対等。一緒に生きているということ,共存してるってことを忘れちゃいけない。そして,それを子どもの時からちゃんと教えないといけない。ペットも野生動物も同じことだと思うんですよね。「飼ってあげている」と思いがちですけど,どれだけ私たちも彼らのおかげでいろんなことを与えられているか。動物の立場になってみることで,自分たちも教わることがたくさんあります。それは子どもも一緒だと思うんです。―日本でもそのような授業が必要だとお考えですか?そうですね。私は「命の花」という,殺処分について考える活動を支援しています。「命の花」は,高校生が自ら気づいてやっている活動なんですが,本当は彼らから発信するのではなくて,大人から伝えないといけないと思うんです。こういう問題って現実から目を背けちゃいがちですよね。最初のほうは私もそうだったし。―では,何がきっかけで変わられたのですか?「報道」ですね。ドキュメンタリーのような真実を伝えるという仕事では,現実に目を背けてはいられません。「見たくない。かわいそう。」という気持ちを突き抜けていこうと決断できてからいろいろ始まりました。報道番組をやっていたときに「処分」の映像をテレビで初めて流したんですね。すごく抗議がくるかと思っていたら,肯定的な反応がほとんどで。「よく見せてくれた。これで現実が見えました。」とも言われました。子どもたちにショックを与えずにどうやって伝えるか,そこが私も報道の立場で辛かったし,すごく悩んだんですけど,これがきっかけで動き出す人もいたと聞いて,もうそういう時期じゃないんだと。やっぱり「伝える人」として本当のことを伝えるべきなのだと思いました。<次号に続きます>日本文教出版の道徳の教科書に滝川クリステルさんが登場しています。「小学どうとく 生きる力 3」p.56~59「『おもてなし』ってなあに」1