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概要

どうとくのひろば No.18

研究のため提供しました。こうした協力もあって,順調に飼育個体数は増え,平成17年9月に5羽のニホンコウノトリを野生に放すことができるまでになりました。その中には天王寺動物園で繁殖した2羽も含まれています。そして2年後の平成19年には自然復帰したペアから1羽のヒナが孵化し巣立ちました。自然復帰二世の誕生です。最後の野生個体が繁殖して以来,実に46年ぶりの快挙でした。その後,繁殖は順調に進み,とうとう今年の6月,野外での100羽目の繁殖に成功したのです。 これでニホンコウノトリが日本の空への復帰に成功した,とはまだ断言できませんが,目途がついた感はあります。ここに至るまで兵庫県の関係者の方々の不断の努力があったことは間違いありませんが,同時に動物園の協力も大いに貢献していることは胸を張ってお知らせできるのではないかと考えています。▲抱卵中のニホンコウノトリ 現代の動物園はさまざまな使命を負っています。飼育している動物を見ていただいて世界中にどんな動物がいるか,そしてその動物がどのような環境で生活しているかを知っていただくことも大切な仕事です。また,環境破壊の結果,危機的な状態にまでその生息数を減らしてしまった動物を繁殖させ,自然に戻すことも大切な仕事です。その意味で今年は日本の動物園にとって画期的な年でした。 ご存知の方も多いかと思いますが,ニホンコウノトリは戦前には日本各地で普通に見られる鳥でした。しかし戦時中,巣をかけるための松の大木が,油を取るために次々と切り倒され,営巣場所を失いました。戦後の食糧不足の時期には,食用にするため殺され,復興期には,食糧増産のために使われた農薬によって,エサとなる魚やカエルが激減してしまいました。人々が生き抜くために,繁殖する場所を奪われたうえ,狩猟の対象になり,エサまで奪われたニホンコウノトリは,その生息数をどんどん減らしていきました。 国内最後の個体が残った豊岡市のある兵庫県では,ニホンコウノトリを県鳥と定め,「コウノトリ飼育場」(後の「兵庫県立コウノトリの郷公園附属飼育施設コウノトリ保護増殖センター」)を建設し,自然復帰に向けて飼育を始めました。旧ソ連から譲り受けた幼鳥6羽もここで飼育されました。飼育場での飼育や繁殖の成功に向け,日本各地の動物園が協力したことは言うまでもありません。天王寺動物園では飼育方法のアドバイスのみならず,園で繁殖した個体を飼育繁殖の動物園の使命元大阪市天王寺動物園 園長 長瀬 健二郎地球の仲間からのメッセージふ か