ブックタイトルどうとくのひろば No.18

概要

どうとくのひろば No.18

7道徳的価値誠実さ信頼友情図2　友情・信頼・誠実さ・道徳的価値誠実さは，善悪・正邪の適切な判断を支える道徳的価値と深く関わる深い信頼関係は，信頼と信頼に応える誠実さに支えられる友情は親愛の情から育まれるよき友情は信頼に支えられるする人々とそうではない人々が存在するわけではないでしょう。なぜなら，前述の友人Ａがこれまでの交流の中でいくら信頼に足ることをしてきたとしても，厳密にいえば，これからも変わらず信頼を裏切らない人であるかどうかはわからないからです。つまり，信頼は常に裏切られる可能性を秘めています。にもかかわらず，友人を信頼して，自分の弱点をその人に告白するのだとすれば，私たちはそのときある種の「賭け」をしていると言ってよいでしょう。私たちは，その人が私たちを裏切らない，というその人の「誠実さ」に賭けているのです。ただし，この賭けには通常の賭けとは異なったところがあります。信頼される側に「信頼に応え」ようとする強い気持ちを生じさせるからです。友人から秘密を打ち明けられたとき，その秘密を漏らしてはならないと感じた経験をもっている人は少なくないでしょう。こうした信頼に特有な心理的メカニズムが，本来もろいはずの信頼を確固たるものにしているのだと考えられます。このように，信頼は道徳とも結ばれています。誠実さに欠ける人は，友情や友人から遠い人だと言わざるをえません。誠実さだけではありません。お互いを大事に思い合う友人同士なら，どちらかが悪への誘惑を覚えたとき，それを叱咤し，諫めることも辞さないでしょう。友人関係が互いを磨き合い，高め合うことに，道徳は深く関わっているのです。学校生活の充実信頼に支えられた友人をもつ人生は，そうでない人生よりもはるかに素晴らしいものになるに違いありません。「刎頸の友*」の故事にあるような，心を許し合える友人の存在がいつも憧れの対象とされてきたのはそのためです。そうした友人と出会える機会は，もちろん，至るところにあるでしょう。しかし，多くの同輩の集団の中で，ともに学び，遊び，語り合える学校生活が，生涯の友人と出会うことができる最適な場所のひとつであることは間違いありません。そして，そこで信頼に裏打ちされた友人を得ることができるなら，学校生活が，文字通り実り多い生活となることも間違いないのです。＊刎頸の友……たとえお互いのために頸を刎ねられても悔いはない　というほどの親しい友人のこと。ふんけいふんけいくびは監修：プール学院大学　教授　越智 貢共著：南山大学　教授　奥田太郎　　福山平成大学　教授　上村