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概要

どうとくのひろば No.20

安田女子大学心理学部現代心理学科教授 竹田 敏彦江東区立大島南央小学校校長 松原 好広豊能町立東ときわ台小学校教諭 龍神 美和子どもたちと接する中で出てくる,「こんなとき,どうする?」。道徳教育をより輝かせるためのヒントを,先生方に教えていただきました。「いろいろな感じ方,考え方に出合おう」心の弱さ,醜さに少しでも流されないようにするためです「わかっちゃいるけどできない」「わかっちゃいるけどやめられない」ことを克服!こんなとき,どうする? 今回のテーマ子どもに,「正しいとわかりきったことをなぜ考えなければならないの」と聞かれたら?「そのことは,本当に正しいのかな。どうして,そのことが正しいと思うのか,どうして,そのことがよいと思うのかの理由は,たくさんあるし,みんなちがいますよね。だから,なぜそのことがよいのかをみんなで,話し合ったり,考えたりして,自分の考えを広げたり,深めたりしていくのですよ。きっと,新しく学ぶことや気づくことが,たくさんありますよ。」と,私なら答えると思います。けれど,このような質問がでてくるということは,もしかすると,普段の授業の中で,「正しいとわかりきったこと」しか扱うことができていないのかもしれません。子どもたちにとって,新しい学びや気づき,学んだ実感のある道徳科の授業づくりを進めていきたいですね。子どもの核心をついた質問だと思います。教師は,真摯な態度で応えてあげたいと思います。そこで,道徳授業が,「心の弱さ,醜さに流されないようにするための時間」ということを前提に,次のような場面を考えてみました。教 師:じつは先生,正しいとわかりきったことが,いざとなるとできないことがあるのだよ。子ども:えっ,先生なのに,できないことがあるのですか?教 師:心の弱さというか,醜さというか,そんな一時の感情に流されてしまうのだよ。子ども:先生でさえできないのだから,私ができないのも無理のないことなのですね。教 師:そう,だからこそ,正しいとわかりきったことを道徳授業で考えることが大切なのだよ。特定の価値観を押しつけたり,主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは,道徳教育が目指す方向の対極にあるものです。これからの道徳教育は,いじめ問題への対応の充実などの問題解決的な学習を取り入れ,多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,誠実にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え続けることが大切です。そのためには発達の段階に応じ,答えが一つではない道徳的な課題を一人ひとりの児童生徒が自分自身の問題と捉え,向き合う「考える道徳」,「議論する道徳」が不可欠です。「正しいとわかりきっていることを本音と照らし合わせながら考え,議論すること」が,「わかっちゃいるけどできない」「わかっちゃいるけどやめられない」ことを克服できるようになるのです。12