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概要

どうとくのひろば No.21

 モ モラルジレンマ道徳教材で,登場人物が2 つ以上の異なる道徳的価値の板挟みになり,どちらかを選択しなければならない場面を設定し,どちらを取るべきかを葛藤・議論させる手法のこと。この手法は,発達心理学者のコールバーグの理論をもとに,荒木紀幸氏らによって提唱され広く小・中学校の道徳授業で取り入れられています。中学校では,授業で意見交換が活発に行われ,議論が盛り上がる例が見られます。しかし,登場人物の人間性の洞察を通して,自己を深く見つめるための活発な議論にならなければ,上滑りになってしまうでしょう。モラルジレンマの教材として適切かどうかは,対立させる価値葛藤の状況が適切かどうかにかかっています。(深めるワード:コールバーグ,マイケル・サンデル,藤川大祐,池谷裕二) じ 自尊感情「自分には価値があり尊敬されるべき人間である」,と思える感情のこと。心理学でいう,self-esteem の日本語訳。これまでの児童生徒対象の調査では,外国人に比べて日本人の「自尊感情」は低い傾向にあり,自分の才能や能力に対する思い(自己評価)の弱さが表れています。そこで,子どもたちの教育では,よいところを認め,褒めることで自信をつけさせることが大切だといわれてきました。しかし,なかなか成果が上がっていないのが現実です。それならば,人の役に立った,人から感謝された,人から認められたというように,人間関係の中で肯定的に受け入れられることで,自己評価は高まるのではないかと考えます。社会の中でどう生きるかを求める道徳教育では,「自己有用感」を育てることが有効なのではないでしょうか。(深めるワード:ウィリアム・ジェームズ,国立教育政策研究所) こ 個人内評価学習の評価方法の1 つで,児童生徒の道徳性につながる発言や意欲的な態度を見取ること。「横断的個人内評価」と「縦断的個人内評価」に分かれている。道徳科の評価として有効な評価法。対象となる児童生徒自身から得られる情報を用いて基準設定を行う評価法で,他者との比較や到達目標への到達度を用いて数値化するものではありません。横断的とは,複数の道徳の内容について,縦断的とは,1 つの道徳の内容について着目し,その内容につながる発言や意欲が,以前と比べてどのように変化したのかを評価します。異なる道徳の内容を比較することは,難しい面があるので,一般的に道徳科における評価は,縦断的個人内評価が基本となると考えます。(深めるワード:教育心理学,小・中学習指導要領解説 特別の教科 道徳編 第5章) か 価値の一般化道徳の授業を展開する際,学習指導過程の中で,道徳的価値を児童生徒自らが自分のこととして捉え,道徳的価値を自分の生活に生かしていこうとする思いや課題を培うこと。小・中学習指導要領解説 特別の教科 道徳編 第4 章 第2節「道徳科の特質を生かした学習指導の展開」から,上のように理解できます。しかし,一般的には,学習過程の展開後段で,中心発問を通しての話し合いを受け,自分自身の問題として,自己の日常生活に振り返って考えることと理解されています。価値の一般化の発問は,小学校の低・中学年では有効な方法の1 つですが,発達段階や教材の内容,そこに示されている道徳的価値によっては,必ずしも適切とは限りません。同じ形にこだわるのではなく,自己を深く見つめる様々な展開の工夫が求められています。(深めるワード:小・中学習指導要領解説 特別の教科 道徳編 第4章 第2節,青木孝頼著『価値の一般化の発問』(明治図書),永田繁雄)前号に引き続き,新任の先生や今まで道徳に縁の薄かった先生のために,道徳科でよく使われる用語を徹底解説!元東京都葛飾区立堀切中学校 校長 永林基伸いまさら聞けない!道徳のキホン用語???第2 弾4