ブックタイトルどうとくのひろば No.23 教科書特集号

ページ
4/28

このページは どうとくのひろば No.23 教科書特集号 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

どうとくのひろば No.23 教科書特集号

なかったり,「とにかくそれを教えないと」という授業になってしまったりするおそれがあります。服部先生●「柔軟」というと何か柔らかい感じで,「どれでも受け止めるよ」という感じになるけど,それよりも広いというか。懐が深いというかね。それがあれば対応できるのですが。ただ柔らかいだけで「それもいいよね,これもいいよね」というのは違います。島先生●まさに「多面的・多角的な」ということでしょうね。いろいろなイメージができるという。宮里先生●私も内容項目は「中学校まで全部読んでください」と言います。低学年だけだと解釈が広がらないことがあるけれど,上の学年にその内容項目のキーワードが出ていることも多いんです。そこまでを見て,今は何年生のこの部分だ,と理解できていると,子どもたちのいろんな発言にも対応できる。それを交通整理しながら,今日行きたいところに行けますよね。島先生●小・中学校で一緒に研修などに取り組むところが増えてきましたね。特に中学校の先生が小学校の授業を見ることがとても多くなった。宮里先生●見るだけでなくて,そのあとの協議会で,小中一緒のテーブルになって,先生方が「子どもたちをどう理解するか」などを議論すると,中学校の先生にとっても「そういう時期を経て中学校に上がってきているんだ」と理解しやすくなると思いますね。小寺先生●勉強になったってよく聞きますよね。島先生●小学校が先行しているから余計に。それはお互いの先生にとってもいいことですね。藤永先生●研修会で一つのテーブルに幼,小,中,高,特別支援の先生を交えて発問作りをしてもらうとすごく評判がいい。発想が全然違う観点で見られると。小寺先生●そうやって学校の先生が一生懸命やって,「家庭や地域の人を巻き込まないと道徳性の育成ができないな」という認識を持たれたから,地域への働きかけも強くなってきていると思うんですよ。そうすると,地域の人も「学校でそこまでやってくれているなら,もうちょっと考えようか」とかね。そういう形で変わってきていると思います。授業参観で道徳を公開するところもかなり増えてきたと思いますね。今までは学校だけだったのが,だんだん広くなってきた。宮里先生●道徳に関する掲示物も増えて,保護者や地域の方の目に触れる発信を意識されていますね。宮里先生●「かぼちゃのつる」で,日本文教出版のデジタル教材を使った特別支援学級の1年生の授業を見たんですが,アニメーションの教材提示ですごく集中していました。朗読も子どもたちの理解に応じたスピードで,「こういう提示の仕方はすごくいいな」と思いました。本当に子どもたちの理解がはっきりわかり,デジタル教材の威力を見せられました。藤永先生●デジタルといえば,挿絵等もコピーやプリントアウトしたものを使うようになりましたね。島先生●時間の節約と言うか,そこは助かっているところかもしれませんね。大原先生●昔からの定番資料を教材にすると,この度の教科化で内容項目の解説が以前と違っていることがあるから気をつけないといけない。藤永先生●自分が作る場合は,筋がきちんと通っていて,読んでいても引っかかるところがないのが大前提で,その次に,「考えるべき道徳」の観点がきちんと組みこまれていること。三つ目に「胸キュン」(笑)。主人公の心の動きというものを言葉で表現せずに,行動や情景を描写することで考えさせるようにするということ。形容詞をできるだけ使わないとか。そういうふうな仕掛けのある教材というのは,授業がとてもやりやすいはずなんです。宮里先生●教材研究をちゃんとして発問を考えて,授業をしたときに,子どもから思ったような言葉が返ってくることもあるし,思っていないような反応が返ってくることもある。他の教科にはない部分がこの教科にはあるということに気がつくと,「次の教材もしっかりやろう」となるようです。小寺先生●発問を考えてピタッと来たとき,先生はうれしいですね。また,違うことを言われても刺激を受けて「おもしろいなあ」と思うでしょうし。藤永先生●道徳は学年とか教科を越えて職員室で共通の話題になりやすい。だから,教科の壁や学年の壁を乗り越えるには道徳を中心にしてつながるのが一番効果的で,そういったおもしろさもあるでしょうね。島先生●普段あまり言わない子が言うようになったとか,子どもたちが生き生きと発言している,というのも先生にとったらおもしろいんでしょうね。大原先生●道徳科の授業はいろんな手立てを駆使しないとねらいに到達しないというか,ワークシートや話し合い活動,板書を工夫して,やっと授業の成果が出てくる。先生たちはその授業づくりのおもしろさみたいなものを感じ始めてるんじゃないでしょうか。島先生●自習させられないでしょ。といって,先生がガンガンしゃべってもだめでしょ。そこのところがおもしろいところですね。だから案外これから求められる授業になるんじゃないかなと思いますね。藤永先生●いちばん頭の柔らかさが要求されるんですよ。決まり切ったパターンで教材を読んで,決まり切った授業の流し方をしていたら絶対1 年もたないし。小寺先生●道徳科が他の教科以上に先生の柔軟性が試される教科ではないか,ということに気づいてもらえたら,結構楽しんでもらえると思いますね。先生が一生懸命教材研究していても思いつかないようなことが,児童の中からポンと出てくる可能性がある。先生方も自分のあり方を考える機会にもしてもらえる。そういう点でも道徳科のもつ柔軟性は,いいんじゃないかなと思う。期待しすぎかな(笑)。大原先生●先日「うばわれた自由」の授業を見たのですが,ジェラール王のようなわがままな自由はよくなくて,「みんなが幸せになるための自由は……」と順調に進んだのですが,ある子が「先生,この世の中に自由なんてありません」と言ったんです。それに先生が対応できなくて。「何言ってるんだろう」という感じで。こういうことに対応するには内容項目についての読み込みと理解が相当できていないとうまくいきません。その子は「この世の中に自由はない」とずっと主張していました。服部先生●自由がないとどのレベルで言っているのか聞いてあげられたら,おもしろいんですけどね。藤永先生●「本当に自由ってないのかな?」とか,「あなたが言っている自由ってどんなの?」とか。服部先生●自由という言葉について,先生が日頃どれだけ考えているかが,問われるんですよね。自由にせよ,責任,あるいは規則にせよね。内容項目について学習指導要領の解説に書いてある内容よりももうちょっと全体が見えていて,学習指導要領がいうのは,小学校ではこの部分,2年生ではこの部分だなという「わかり」ができていると,今みたいなときに,「どのレベルの話をしているのか」と対応できるんです。藤永先生●その意味でも小学校の先生はぜひ,中学校の学習指導要領の解説の内容項目の説明を読んでほしい。哲学的な背景をきちんと押さえていますから。島先生●結局,柔軟性ですね。「道徳的諸価値についての理解を基に」といってみても「自由が大事だ」というくらいの理解で授業をしてしまうと,おもしろく中学校・家庭・地域との連携でさらに広げるデジタル教材を活用した教材提示教材作りの留意点,特別な思い藤ふじ永なが 芳ほう純じゅん大阪教育大学 名誉教授島しま 恒つね生お畿央大学大学院 教授特集1 2020年の小学校道徳はどうなる?道徳のおもしろさって?子どもの思わぬ反応にも対応できる柔軟さを小こ寺てら 正まさ一かず京都教育大学 名誉教授関西外国語大学 名誉教授4 5