ブックタイトルどうとくのひろば No.23 教科書特集号

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概要

どうとくのひろば No.23 教科書特集号

島先生●子どもたちが考えたくなるような,あるいは深く考えさせることができるような教材が大事になってくる。力のある教材が必要になってきていると思います。服部先生●低学年はいくつかの教材を差し替えました。それから保幼小連携の観点から,文字をほとんど使わない目次を作りました。かるたのように挿絵を並べて,なんとなく「こんな話かな」とかわかるように(次ページ参照)。1年生には,目次って意外と見にくいんですよね。ダーッと文字が並んでいてね。宮里先生●子どもが喜びそうですね。 中学年では,日野原重明先生や郡上踊りなど,実在のものを扱った教材をなるべく増やすようにと意識しました。前回はお話や生活文にやや偏っていたので,もう少し先人や地域に学ぶということを濃く出していけたらということで。大原先生●高学年は内容項目やねらいのよりはっきりした教材に差し替えたり,なるべくツボに入るように書き換えたりしました。非常にいいものができたと思います。 それから,全学年を通して教師用指導書も評価していただきたいなと。特に全教材分つくった「指導と評価の指針」は活用していただきたいですね。島先生●かなり見直しましたよね。子どもたちがより深く考えられるようなものになったのじゃないかな。大原先生●ノートがあると,子どもたちにとっては自分の書いたものが散逸しない。これは大切。藤永先生●道徳ノートは「メモ帳代わりに使う」「自分と違う友達の意見を書く」「いろいろな発表を聞いたり話し合ったりして印象に残った友達の意見を書く」場合が多いので,そういう意味では,下は完全なフリースペースの方がいいなと思いましたね。小寺先生●道徳ノートは「あるから授業しやすい」という人と「あるから授業しにくい」という人と二分してますね。しにくいという人はやっぱり自分で授業を作れる人だという感じです。でも,あったほうがしやすいという人がまだ多いんじゃないかと思います。島先生●この1 年でみんなで考えて取り組む体制になってきました。次の段階として,ノートにフリースペースを設けて自由度を上げたというのは,なじむところじゃないかな。宮里先生●最後の「振り返り」のところも,授業の最後に先生が「最後のところに○してね」と言うと,子どもたちが自然に○をしているのを見ました。これは毎回使っているんだなあって思いました。大原先生●道徳ノートの役割は大きいと思いますよ。服部先生●書くという時間が,1時間に1回か2回あるのは,とても大事なことだと思います。話し合いの中ではそんなには考えられない子どももいます。それに,みんなが発表してくれてたら,自分が発言しなくても授業が進んでいきます。ところが,書くとなると,一人でじっくり考える時間になりますし,どうしても自分の頭を使わないといけなくなります。そのときにこういうノートがあって,「視点」が書いてあるというのは大事なことだと思っています。島先生●書くのは思考活動を深めますから,とても大事なことですね。服部先生●それに,書いたものを先生が読めますからね。どんなことを考えてたのかなって。小寺先生●評価に使える。服部先生●そうですね。いわゆる通知表の評価という意味じゃなくて,子どもの理解に使えるし,同時に自分の授業の評価にもなります。「あー,意外と今日はみんなにうまく伝わってなかったんだなあ」とかね。書かせてみて初めて気がつくことってありますね。服部先生●いつも言っていることですけど,子どもにとってわかりきったことをゴールにするような授業にならないように,もっと深いところを子どもに考えさせる。なぜいいのか,どういう意味があるのかというのを含めて,子どもたちが本気で考えるような,本当に気づきになるような授業をしていきたい。 たとえば「いじめがいけない」ということは子どもたちは百も承知なので,それぞれの年齢や学年に応じた「いじめが許されない」根拠・理由を子どもの中に根づかせていく必要があるだろうなと思っています。宮里先生●「評価はどう考えればよいでしょうか」とよく聞かれますけど,私は躊躇しなくていいと思っています。「あなたたちの成長を見守る,応援している大人がいるよ」ということを伝えるのが評価ですから。 子どもたちが不安になったり,人に意地悪をしたり,いじめをしたりしてほしくない。加害者にも被害者にもなってほしくない。だから学校あるいは家庭,地域にいる大人が,子どもたちを見ているよということを伝える。評価はそういうことだと思っています。もちろん責任を持って,言葉を選んでするんですけど。そういう思いですれば,そんなに難しく考えなくてもいいのではないかなと常々思っています。島先生●できていないことをできるようにするとかいうものじゃなくて,子どもたちの中に育ってきている素敵な考えに,子どもたち一人ひとりが気づける時間になってほしい。そのために教材を使い,自分を見つめにいく,そして友達と話す。そのあたりのところを大事にしてほしい。先生は教材を使ってみんなで考えるということを大事にしてほしいなと思います。 それから,今はどんどん学校で研修体制もできつつあるので,みんなで取り組んでいくということを大事にして進めてもらいたいなと。そのことがいじめの問題の解決にもつながっていくと思います。大原先生●単純に言うなら,子どもたちが待ちわびるというか,待ち遠しい時間,夢のある時間,「他の教科に振り替えちゃダメダメ。道徳やろうよ」と言われるような時間であってほしいと思います。 心の勉強なので,感動を大事にしたい。そしてもう一つ,生きることに前向きになれる授業。生きててよかったとか,これからも一生懸命生きようとか,そんな前向きになれる授業。それで最後に,共に支え合い,高め合っていこうと。色々な人が支え合って世の中ができているということを考え,意識できる授業をこれからつくっていきたいと思っています。藤永先生●最終的には道徳科というのは哲学・倫理学の小学校版,中学校版だと思います。「人間としての生き方とはどういうことなんだ」と自分に尋ねていけるような力を育てないとだめですね。 そのためには,物の見方や考え方の基礎材料というか,素材を獲得し組み合わせる手立てを小学校のときから発達に応じて習得していく必要がある。そもそも私たちがいじめの問題に対して指導をしなきゃいけないのは,安心,安定した人間の生き方を保障するためだということです。これに尽きると思っています。 要するに,道徳科の時間は人間としての生き方について考える,その素材提供と技術習得の時間だと思うので,そういう意味では諸学のキングでもあるしベースでもあるという,壮大なイメージを持って教材を読めたら,着眼点も違ってくるかなと思います。小寺先生●これまで研究会では,「話し合いはどうしたらいいか」とか「終末で書かせた方がいいのかどうか」とか,技術的な段階の話や形式的な話が多かったんですけど,最近は内容項目や道徳的価値に関することを説明すると,熱心に聞いていただけます。「誠実とはどういうことなのか」など。 これからは,内容項目の奥にある道徳的価値についての理解をしてもらっておく必要があるんじゃないかと。例えば,この「どうとくのひろば」に連載の「見てわかる!道徳」の内容項目の解説を読んだりして。そうすれば授業に深みが出てくると思います。宮みや里さと 智とも恵え広島大学大学院 教授特集1 2020年の小学校道徳はどうなる?2020 年版の教科書で工夫した点「道徳ノート」の役割服はっとり部 敬けい一いち大阪成蹊大学 教授これからの道徳科の理想と,先生方へのメッセージ大おお原はら 龍りゅう一いち明星大学 教授青山学院大学 講師長時間にわたりありがとうございました。1 年の絵の目次。かるた風で見た目も楽しい。6 7