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概要

どうとくのひろば No.24

わかる !道徳 見て郷土の伝統文化・国のあり方に関するイメージを理解して,認め合う私の地域にはこんな食べ物があるよ私の国のこんなところが好きこんな国になってほしい私の住んでいる地域のこんなところが好き私の地域にはこんな食べ物があるよ私の国のこんなところが好きこんな国になってほしい私の住んでいる地域のこんなところが好きよりよい国家の形成他者と共に暮らしていく道徳の視点相互理解・寛容健康で文化的な生活の保障国家システムをよりよいものへと改善国家への服従の強制特定の国家像への傾倒国 民国 家監修:桃山学院教育大学 教授 越智 貢共著:福山平成大学 教授 上村 崇  南山大学 教授 奥田太郎第11回「伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度」(小学校)「郷土の伝統と文化の尊重,郷土を愛する態度」(中学校)「我が国の伝統と文化の尊重,国を愛する態度」(中学校)「相互理解,寛容」人は,たった一人で現在だけを生きているわけではありません。私たちが暮らす日本には,四季があり,自然にも恵まれています。そして南北に細長い日本列島には,北海道から沖縄まで食文化をはじめ多様な伝統や文化が根づいています。誰もが,歴史の積み重ねのある場所で,そこで育まれた伝統や文化を共有しうる人たちとともに生まれ,暮らしています。時に,自分にとって馴染みのある伝統や文化は,その人自身を形作る重要な要素であり,それを次の世代へと引き継ぐ責任感がその人の人生を決めることもあるでしょう。人間にとって,伝統や文化は生きる上で極めて重要なものです。しかし,社会構造が変化していく中で,見直しが求められる伝統や文化も存在します。例えば,子どもの中で長男だけを特別扱いして家督を相続させる「伝統」や,男性を支えて家事に従事することが女性の本分であるという「文化」を継承するかどうかは,検討の余地があるでしょう。伝統や文化を無批判に継承するのではなく,私たちが社会でよりよく生きるために何をどのように継承すべきかを考えることも,重要な道徳の問題の一つです。先人たちと同じく,私たちも伝統や文化の担い手であり,その内容を更新していく伝統や文化のつくり手でもあるという自覚は,そうした尊重と批判の精神と共に育まれるのです。自分が生まれ育った地域やそこに根づく伝統や文化に愛着をもつことは自然な感情かもしれません。しかし,国に対してはどうでしょうか。「愛国心」という言葉に敷居の高さを感じる人もいるかもしれません。そもそも国を愛する態度とは何なのか,また,国とはいったい何なのでしょうか。まず,自分が帰属意識をもつ文化的場所としての「国」と,私たちが健康で文化的な生活を営むために自身でつくりあげたシステムとしての「国家」を分けて考えてみましょう。世界選手権やワールドカップなどスポーツの国際大会で思わず日本を応援しているときや,海外旅行中に出会った現地の人との会話の中で日本を思うときなどに意識されているのは,「国」でしょう。他方で,外国への入国審査で出身地による扱われ方の違いを経験するときに意識されるのは,「国家」かもしれません。「国を愛する」という場合,前者の「国」を想起することはたやすいでしょう。では,「国家」を愛するとはどういうことなのでしょうか。国家は,国民の健康で文化的な生活を保障するシステムとして,国民の要望を組み込んで柔軟に変化し,国民一人ひとりを支えてくれるものです。そうした国家のあり方を改善していくことは,国家を構成する主権者としての私たちの使命です。ですから,国を愛する態度とは,国家を他の人々と共によりよいシステムへと改善していく態度でもあるのです。このように考えると,郷土を愛する態度も国を愛する態度も,私たちがよりよく生活していくために何が必要かと吟味する視点が重要になります。そのためには,お互いを理解して違いを受け入れる「寛容の精神」が不可欠です。自分が住む地域だけを特別視してほかの地域の文化を否定したり,自分と同じように国を愛するべきだと迫ったりする態度は,相手の人たちの国を愛する心を傷つけるだけでなく,伝統や文化のよりよい継承の機会や国家システムの改善の機会を奪ってしまうでしょう。あなたが自分の郷土や国を愛するように,ほかの人もまた自分の郷土や国を愛しています。このことに気づいた上であなた自身が郷土や国を愛するのなら,その態度は自然な態度にとどまらず,道徳的な態度でもあるのです。伝統や文化を尊重する態度国を愛する態度国や郷土を愛する態度と寛容の精神図 1 国民と国家の関係性 図 2 郷土や国を愛する態度と相互理解・寛容8 9