ブックタイトルどうとくのひろば No.26 教科書特集号

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概要

どうとくのひろば No.26 教科書特集号

わかる !道徳 見て?????????????????????????????????????????????????????????????????????????? ???????????????????????????? ?? ?? ???????????????????????????????????????????? ??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????監修:広島大学 名誉教授 越智 貢共著:南山大学 教授 奥田 太郎  富山国際大学 講師 奥田 秀巳第13回私たちの社会には,挨拶の仕方や敬語の使い方,さらには食事の際の作法など,数多くの礼儀作法があります。もちろん,社会によって,礼儀作法の表し方は異なります。頭を下げる挨拶もあれば,握手をする挨拶もあります。しかし,古今東西を問わず,礼儀作法をもたない社会は考えられません。礼儀作法は何のためにあるのでしょうか。礼儀は,多くの場合,現在を共に生きる人々に対して行われますが,すべてがそうとは限りません。例えば,葬儀では死者に対しても礼儀ある振る舞いが求められますし,食事の際の「いただきます」のように,さまざまな命に対しても礼儀の言葉が向けられます。礼儀作法は恣意的で形式的なものだと考える人でさえ,神仏の前に出れば,自然と手を合わせるに違いありません。礼儀作法は,私たち人間の生き方と深いつながりがあるようです。言うまでもなく,人間は一人だけでは生きていけません。さまざまな人たちと共に生きていかざるを得ない存在です。そうした存在だからこそ,同じ共同体の中で共に生きる,そして共に生きた人々に対して敬意や感謝の気持ちを伝え合うのです。礼儀作法の源泉はこの辺りにあると思われます。つまり,礼儀作法は共同体にとって大切な人やものを敬うための表現様式だということができるでしょう。では,私たちはどのようにして礼儀作法を身につけるのかというと,そのほとんどは「習慣づけ」と呼ばれる方法によってです。初めは言われるままに行為の形式をなぞるだけだった礼儀作法が,時間をかけて習慣的に繰り返されるうちに徐々に自分のものとなり,やがて意識せずとも発動するようになるのです。その際,見逃すべきでないのは,その変化と共に,礼儀作法のいわば精神ともいうべきものが少しずつ理解できるようになることです。礼儀作法を大切にする人々が若者より成人に多いのは,そうした精神的意義を理解するのに多くの時間がかかるためだと考えられます。節度や節制も,礼儀作法と同じく,共同体や習慣づけと無関係ではありません。何にでもふさわしい節度があります。食べることにおいても,過不足のないちょうどよい程度,つまり節度が求められます。過食は栄養を偏らせ,拒食は栄養不足をもたらすからです。そうした節度を守ることが節制です。ただし,節度は厳密な基準をもっているわけでも,数値化できるものでもありません。いったい節度とは何なのでしょうか。アリストテレスの考え方が参考になりそうです。彼は,節度を過多と過少の中間にある適切さ,しかもある幅をもった適切さだと考えました。適切な睡眠時間が人による違いを含んだ一定の時間を指しているように,節度は各人の違いを含む一定の幅をもった適切さです。私たちは,家庭や学校などの共同体の中で,そうした節度の存在を学びながら,自分にふさわしい節度を身につけることになるのです。もちろん,中には節度そのものを否定し,節度のない生活を選ぶ人がいるかもしれません。その人にとって節度を守ることは,礼儀作法と同様,自分自身を縛り自分の自由を奪うことでしかないからです。しかしその際,留意しておきたいのは,アリストテレスたちによって使われた「節制」(ギリシャ語でソープロシュネー)という言葉が「健全な思慮」という原意をもっていたことです。つまり,彼らにとって,節制することはよく考えて振る舞うことでもあるのです。よく考えることなしに,自ら節度を守ることは困難です。節制とは,何より自分の過剰な欲求や欲望を抑えることだからです。そして,こうしたよく考える振る舞い方を自分のものにするためにも,礼儀作法のように,時間をかけた習慣づけが欠かせません。習慣づけが教育の重要な方法の一つとして位置づけられているのはそのためです。このように,礼儀や節制は,共同体という私たち人間が生きている世界と深く関わっています。学校もそうした共同体の一つであることを忘れるべきではありません。「節度,節制」「礼儀」礼儀作法と共同体図 1 礼儀作法とその習得 図 2 節度,節制を学ぶこと節度とは節制と「よく考える」こと礼儀作法と習慣14 15