ブックタイトル中学社会 見方・考え方はこう働かせる

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概要

中学社会 見方・考え方はこう働かせる

   学社会』における【見方・考え方コーナー】と【深めよう】には,知識を得るだけの穏当な学びから,より深い,魅力的な学びへとレベルアップするための有効な手立てが示されている。教師自らが授業づくりに際して積極的に活用するとともに,生徒たちにも,自らの歴史学習のあり方を見つめ直し,より洗練されたものにしていくためのメタ学習的な視点として,その有効性(良さ)を体感させたい。そうすることによって,ともすれば,暗記中心で単調になりがちな歴史的分野における学びのイメージを,探究的で魅力あるものへと変革していきたい。開き2ページごとに,学習内容を俯瞰する【学習課題】と基本的な知識の定着を図るための【確認】に加えて,【見方・考え方コーナー】さらには【深めよう】を新設している。 従来の歴史的分野の【学習課題】は,例えば,「全国統一を果たした豊臣秀吉は,どのようにして人々を支配していったのだろう。」のように,歴史的な事実を網羅する穏当な問いが多く,思考を促すという点ではやや課題があった。そのため今次改訂の『中学社会』では,【学習課題】について見直しが図られており,それに加えて【深めよう】では,時代の特色や時代像,事象の歴史的な意味や意義の理解に向けた,より高次の問いが示されている。これらを踏まえて【見方・考え方コーナー】では,俯瞰的な【学習課題】から焦点化された【深めよう】へと学習を発展させる際に着目すべき点が,「比較」や「つながり」等,学習指導要領における「歴史的な見方・考え方」に沿って,「〇〇に着目しましょう。」という形式で示されている。 例えば,「秀吉による全国統一」( 教科書P. 1 1 8 -119)では,見直された【学習課題】として「武士である秀吉が百姓や町人に対する支配を重視したのはなぜでしょうか。」に加え,【深めよう】として「なぜ,秀吉が行った事業を全国統一というのでしょうか。」が示されており,秀吉の政策が社会(時代)をどう変えたのか,なぜ秀吉の事績が「全国(天下)統一」と称されているのかという,歴史的な意味や意義の理解に向けた問いが示されている。そして,それらの問いについて考察するためのエビデンスを得るため,【見方・考え方コーナー(比較)】として「太閤検地と刀狩が,何をどのように変化させたのかに着目しましょう。」という学習の視点が示されている。 また,扱われる内容によっては,「江戸時代前期の文化と学問」(教科書P.142-145)のように,【学習課題】として「江戸時代前期には,どのような特色をもった文化や学問が発達したのでしょうか。」のような穏当な問いが示されるだけでなく,【深めよう】において「どうして,このような文化が発達したのでしょうか。」といった探究につながる問いが示される場合もある。そのような場合でも,【見方・考え方コーナー(つながり)】として「時期,場所,担った人々に着目しましょう。」という視点が示されていることで,元禄文化の特色を理解するだけでなく,日本の文化史上,特筆すべき町人文化が,なぜこの時期に上方を中心に生起したのか,文化の特色と江戸時代前期の社会の様子を関連付角田 将士(かくだ まさし)専門分野/社会科教育学・歴史教育主要著書/『新社会科教育学ハンドブック』(共著,明治図書,2012 年)『戦前日本における歴史教育内容編成に関する史的研究』(風間書房,2010 年)日本文教出版『中学社会』教科書著者▲ 歴史P.143けて考察することが,意義ある学びにつながることが示唆されている。『中1234この教科書によって生徒の学習がどのように変わるのか第4 編 近世の日本と世界室むろ町まち時代にめばえた民みん衆しゅうの文化は,17世紀末から18世紀初めにかけて,上かみ方がたを中心に,豊かな町人の文化として花開きました。そのころの元禄という年号をとって,この文化を,元げん禄ろく文ぶん化か といいます。 大おお阪さかの町人の井い 原はら西さい鶴かくは,当時の世相や町人・武士のくらしをありのままに小説にえがき,その作品は浮うき世よ 草ぞう子し とよばれました。武士出身の近ちか松まつ門もん左ざ衛え門もんは,きびしい身分制のなかで義理と人情の板ばさみになやむ男女の気持ちを人にん形ぎょう浄じょう瑠る璃りの台本に書いて,人々を感動させました。演えん劇げきとしての形を整えた歌か舞ぶ伎きは,上方に坂さか田た藤とう十じゅう郎ろう,江戸に市いち川かわ団だん十じゅう郎ろうなどの名めい優ゆうが出て,いっそう人気を高めました。また,松まつ尾お芭ば蕉しょうは,各地を旅しながら俳はい諧かいを芸術にまで高めました。絵画では,俵たわら屋や宗そう達たつやその影えい響きょうを受けた尾お 形がた光こう琳りんが装そう飾しょく画がを大成し,菱ひし川かわ師もろ宣のぶは町人の風ふう俗ぞくをえがいて浮うき世よ絵えを始めました。浮世絵は,のちに版画として刊行され,広く民衆に愛好されました。P.1419103214 6 587 7元げん禄ろく文化江え戸ど時代前期の文化と学問-花開く町人文化と学問の奨しょう励れい- 学習 課題見方・考え方時期,場所,担になった人々に着目しましょう。江戸時代前期には,どのような特色をもった文化や学問が発達したのでしょうか。つながり井原西鶴(1642~1693)(東京国立博物館蔵)10菱川師宣(1618~1694)の浮世絵(見返り美人図 東京国立博物館蔵)7尾形光琳(1658~1716)の装飾画(燕かき子つ 花ばた図ず屏びょう風ぶ たて151cm×横339cm 東京都 根ね津づ美術館蔵)国宝8どうして,このような文化が発達したのでしょうか。深めよう芸能文芸松まつ尾お芭ば蕉しょう(1644~1694)(天てん理り 大学附ふ属ぞく天理図書館蔵)4絵画近松門左衛門(1653~1724)(大おお阪さか歴史博物館蔵)3江戸時代の人々の楽しみはどのようなものだったのかな。芭蕉がよんだ句と6 その舞ぶ台たいの平ひら泉いずみ(岩いわ手て県)52 現在も演じられる近ちか松まつ門もん左ざ衛え門もん作の人形浄じょう瑠る璃り文ぶん楽らく(『曾そ根ね崎ざき心しん中じゅう』 国立文楽劇場) 文楽は,物語を語る太た夫ゆう,三しゃ味み線せん弾ひき,人形遣づかいの三者で演じます。9 元禄文化時代世紀できごと場所江戸時代17家いえ康やすが江え戸ど幕ばく府ふを開く(1603)井い原はら西さい鶴かくが浮うき世よ草ぞう子し を出版(1682)18松まつ尾お芭ば蕉しょうが東北・北陸への旅に出発(1689)菱ひし川かわ師もろ宣のぶが浮世絵を始める(17世紀末)19近ちか松まつ門もん左ざ衛え門もん『曾そ根ね 崎ざき心しん中じゅう』初演(1703)江戸幕府がほろぶ(1867)夏草や 兵つわものどもが 夢の跡あ と五さ月み雨だれの 降りのこしてや 光ひかり堂どう(『奥おくの細ほ そ道み ち』)小学校 学習した人物:近松門左衛門0 200km上方が中心2歌か舞ぶ伎き(浮うき絵え 劇げき場じょう図 東とう京きょう都 平ひら木き 浮世絵美術館蔵) 手前の左手の花道に立つのが市いち川かわ団だん十じゅう郎ろうです。 資料活用歌舞伎を楽しんでいるのはどのような人たちか,観客の身分や性別に注目して読み取りましょう。1142 143世紀B.C.A.D.123456789101112131415161718192021時代旧石器縄文弥生古墳飛鳥奈良平安鎌倉南北朝室町戦国江戸明治昭和平成令和安土桃山大正5105