ブックタイトル中学社会 新しい学習評価のポイントとは

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中学社会 新しい学習評価のポイントとは

心構え編 評価改革がめざすもの京 都 大 学石井英真   意の中身を考える際には,学習への動機づけに関わる「入口の情意」(真面目さや積極性としての授業態度や興味・関心・意欲)と,学習の結果生まれて学習を方向付ける「出口の情意」(知的態度,思考の習慣,市民としての倫理・価値観など)とを区別する必要がある。授業態度などの入口の情意は,授業の前提条件として,教材の工夫や教師の働きかけによって喚起するべきものであり,授業の目標として掲げ,系統的に育てて客観的に評価するものというよりは,授業過程で学び手の表情や教室の雰囲気から感覚的に捉えられる部分も含めて,授業の進め方を調整する手がかりとして生かしていくものだろう。これに対し,批判的に思考しようとする態度や学び続けようとする意志などの出口の情意は,授業での学習を通してこそ子どもの中に生じて根付いていく価値ある変化であり,目標として掲げうる。 現在の「関心・意欲・態度」の評価は,本来は目標というより教師の指導の手掛かりとして生かすべき子どものやる気(「入口の情意」)を,形成的評価ではなく「評定」しようとしているために,教師の側は,「指導の評価化」に陥り,子どもの側も,全人評価による息苦しさを感じるようになっているわけである。「主体的に学習に取り組む態度」における自己調整の強調には,単に継続的なやる気を認め励ますだけでなく,教科として意味ある学びへの向かい方ができているかどうかという,「出口の情意」を評価していく方向性が見て取れる。 「報告」1)では,「主体的に学習に取り組む態度」のみを単体で取り出して評価することは適切でないとされており,「思考・判断・表現」等と一体的に評価していく方針が示されている。たとえば,パフォーマンス課題のように,「使える」レベルの学力を試す,問いと答えの間が長く試行錯誤のある挑戦的な課題(思考のみならず,粘り強く考える意欲や,根拠に基づいて考えようとする知的態度なども自ずと要求される)を設計し,その過程と成果物を通して,「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」の両方を評価するわけである。美術・技術系教科や探究的な学びの評価でしばしばなされるように,その時点でうまくできたり結果を残せたりした部分の評価とともに,そこに至る試行錯誤の過程で見せた粘り,あるいは筋(センス)のよさにその子の伸び代を見い出し,評価するという具合である。「報告」では,粘り強さだけでなく,一定水準の自己調整も伴わないと,BやAという評価にならないとされている。スマートで結果につながりやすい学び方をする子だけでなく,結果にすぐにはつながらないかもしれないが,泥臭く誠実に熟考する子も含めて,教科として意味ある学びへの向かい方を評価していく必要があるだろう。日々減点を気にする評価ではなく,がんばりへの救済でもなく,その時点でできた・できないに引きずられがちな認知的な観点ではすくい取りにくい,伸び代や実力を評価していくことが重要である。 試合・コンペ・発表会など,現実世界の真正の活動には,その分野の実力を試すテスト以外の舞台(見せ場〔exhibition〕)が準備されている。そして,本番の試合や舞台の方が,それに向けた練習よりも豊かでダイナミックである。だが,学校での学習は,豊かな授業(練習)と貧弱な評価(見せ場)という状況になっている。課題研究での論文作成・発表会や教科のパフォーマンス課題など,日々の授業で粘り強く思考し表現する活動を繰り返す中で育った思考力や知的態度が試され可視化されるような,テスト以外の舞台を設定していくことが重要である。観点別評価の総括は,手続き論として議論されがちであるが,それをうまくやり遂げられれば,態度の観点もAだろうし,その教科の総合評定で5か4をつけても,教師も子どもも納得できるような,そうした総括的で挑戦的な課題づくりという観点からも考えていく必要がある。石井 英真(いしい てるまさ)専門分野/教育方法学(学力論)主要著書/『今求められる学力と学びとは』(日本標準,2015年),『中教審「答申」を読み解く』(日本標準,2017 年),『授業改善8つのアクション』(東洋館出版社,2018 年),『再増補版・現代アメリカにおける学力形成論の展開』(東信堂,2020 年),『授業づくりの深め方』(ミネルヴァ書房,2020 年)注1)平成31年1月21日「児童生徒の学習評価の在り方について」(中央教   育審議会初等中等教育分科会教育課程部会報告)〈参考文献〉石井英真・西岡加名恵・田中耕治編『小学校 指導要録改訂のポイント』(日本標準,2019 年)23 「主体的に学習に取り組む態度」の評価の方法判定から,子どもを伸ばす対話ベースの評価へ情判定から,子どもを伸ばす対話ベースの評価へ判定から,子どもを伸ばす対話ベースの評価へ判定から,子どもを伸ばす対話ベースの評価へ判定から,子どもを伸ばす対話ベースの評価へ4