ブックタイトル中学社会 新しい学習評価のポイントとは

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中学社会 新しい学習評価のポイントとは

社会科編 変わる授業と「学習評価」広 島 大 学棚橋健治 今,社会科の学びは変わろうとしています。長年「覚えさえすれば点になる教科」と揶揄され,そこからの脱却を図ってきましたが,十分に成果を上げられずにきました。しかし,社会の変化と近年の学校教育を巡る考え方の変化は,今度こそ,社会科が変わらなければならない状況を作り出し,学習指導要領の改訂もそのような方向でなされました。 社会科を変えるには授業を変えることはもちろんですが,それだけでは不十分です。学びの経過や成果を捉える学習評価もそれに合わせて変わってこそ,本当に変わることができます。これまで何度も暗記教科からの脱却に挑戦しつつ実現できなかった理由の一つは評価が変わらなかったことです。新しい社会科で評価の三つの観点とされる「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」もこのような視点で捉えることが求められるでしょう。本稿では,授業の変化に対応した学習評価の変化を展望してみましょう。   会科はなぜ覚えさえすれば点になったのでしょうか。その理由は社会科の学びの本質的問題にあると指摘されてきました。それは,歴史学者や経済学者などが行った思考の結果として形成された知識を継承するべき知識として,疑いを持たずに効率的に獲得することに終始するという問題です。 新学習指導要領の目指す社会科は,知識を作り出すプロセスを「視点(概念)→問い→考察・構想→知識」とし,このプロセスをふまえて社会的事象や問題に関する知識を形成することを求めています。 つまり,先人が作った知識を暗記するのではなく,先人が作ったように生徒自身で知識を作れるようになることを学びの中核に据えているのです。 社会科では知識を抜きにして学びは成り立ちません。その意味では内容あっての教科であり,学習評価の一つ目の柱である「知識・技能」は重要な観点です。しかし,今求められている知識は,これまで社会科の中心にあった知識を作り出すプロセスの最終段階にあった知識ではありません。知識を作り出すプロセスの出発点に位置して探究の道具となる知識です。それが「見方・考え方」の中核をなすもので,具体的には背景となる学問の探究に使われる概念であり,さらにはその概念から生み出される分析的な問いです。以下の枠囲みの中に示した問題は,アメリカ合衆国の実際の社会科プログラムの学習評価問題で,そのような概念や分析的な問いの立て方の習得を評価する一例です。 道具となる分析的な概念やそこから生まれる問いは,教科に固有の探究をもたらします。例えば,社会科であれば「アメリカ合衆国の州別人種構成を見ると,アフリカ系の人の多い州と少ない州とがある」という事実に対して,「分布」という概念を持っている生徒は,「どこに多いのだろうか」「偏りはあるだろうか」「それらに共通性は社123“出来上がった知識” から“道具となる知識” 重視へのシフト●知識を作る道具となる概念や分析的な問いの立て方の 習得を評価する問題の例問い:「政治的ルールが作られ,解釈され,実施される過程」   とは,次のどの概念の定義か。  a. 政治制度   b. 市民性   c. 政治的イデオロギー  d. 政治的意思決定問い:あなたがなにひとつ知らない国の政府における決定の   仕方について調査したいと思ったと仮定しなさい。(中   略)あなたはどのように調査しますか。2 もしくは3   のパラグラフで,あなたが発する様々な質問を述べ,   なぜそれらの質問が有益であると考えるのかを示しな   さい。問い:新学期の初日に,この政治組織コースの先生が突然病   気になり,あなたがコースの中心となる概念となぜそ   れらが分析の道具として有益なのかを言うように求め   られたと仮定しなさい。これらの求めに応ずる小論を   書きなさい。(E.Fenton,ed., Holt Social Studies Curriculum; Test for Compara tive EconomicSystem, Holt,Rinehart and Winston, 1968 より訳出)問い 考察・ 知識構想視点(概念)5