ブックタイトル中学社会 新しい学習評価のポイントとは

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中学社会 新しい学習評価のポイントとは

社会科編 変わる授業と「学習評価」広 島 大 学棚橋健治   習評価の三つ目の柱となっているのが「主体的に学習に取り組む態度」です。これは「知識・技能」「思考・判断・表現」と別々に成り立つものではなく,学習でも評価でも三者が常に連動するものです。その中でも特に「主体的に学習に取り組む態度」は他の二者と並列的に位置付くものというより,他の二者全体の基盤に位置付く,あるいは他の二者を包み込むものと考えた方が良いでしょう。学びにおける主体性とは,道具となる知識を獲得して問いを立て,分析・考察・判断を働かせた結果となる知識を形成するために,生徒自身が自らの学習状況を把握して,どうすればより良く学習が進むかを考えて学ぼうとすることです。つまり,学びのメタ認知です。このような評価が有効に働くには,評価も生徒自身が行うことが大切です。これを自己評価,自己調整学習といいます。 学習の成果がすぐに目に見える跳び箱を例にして考えてみましょう。跳び箱を跳べない子供に,ただひたすら「頑張れ!頑張れ!」と励まし,子供は先生や友達の歓声を背に,歯を食いしばって何度も何度も跳ぶということがあるかもしれません。しかし,これではなかなか跳べるようにはならないでしょう。 では,多くの先生はどういう指導をするでしょうか。跳べる子と跳べない子の跳び方をじっくり観察させてどこが違うかを見つけさせるのではないでしょうか。踏み切り板のどこで跳ねているか,踏み切るときの膝の形はどうなっているか,手は座面のどこについているか,踏み切ってから着地するまでの腰の位置はどのような曲線を描いているかなど,見るべき箇所を先生が指示したり,あるいは子供自身に見つけさせたりするでしょう。飛べない子の跳び方をビデオなどに収めて,その子自身に見させることもあるでしょう。 メタ認知は自分の学習を見つめるだけではありません。自分の学習を見つめるためには,まず,他人のそれをよく見て,自分の学習の何をどのように見れば良いのかを考えることが必要です。跳び箱を跳べない子に,「どうして跳べないのか自分の跳び方をよく反省しなさい」と要求しても,子供は戸惑うだけです。跳べる子と跳べない子の跳び方をよく観察することによって,どこが違うのかを見て取れれば,自分はその点はどうなっているのかと反省することが可能になります。 社会科も同じです。評価というのは,できたかできないか,どれくらいできたかを他人が決めるというものだけではありません。新しい社会科では,それよりもむしろ,「あれ,どうして私は鎌倉幕府の成立を1192年だと答えるのだろうか」と自分で自分の頭の中を客観的に見つめることの方が大切な評価です。いろいろな説を唱える歴史家たちは,各々,どのような資料をどのように分析し,どのように解釈するからそのような説に到達しているのか。私はなぜそれらの諸説の中の一つの説である1192年に最も納得がいくと判断しているのであろうか。ここで学んだ知識を作り出すプロセスを公民や地理の事象に当てはめるならば,あの問題はどう考えたら良いのか。このように考え,探究できることが社会科の学びにおける主体性であり,それを見て取ることが「主体的に学習に取り組む態度」の観点での評価と考えるべきでしょう。棚橋 健治(たなはし けんじ)専門分野/教科教育学(社会認識教育学)主要著書/『アメリカ社会科学習評価研究の史的展開』(風間書房,2002年),『“ 情報化社会” をめぐる論点・争点と授業づくり(社会科教材の論争・争点と授業づくり)』(明治図書,2005 年)『社会科の授業診断』(明治図書,2007年)ほか日本文教出版『中学社会』教科書著者123 主体性を引き出すメタ認知学暗記ではなく,知識を作り出すプロセスの習得を暗記ではなく,知識を作り出すプロセスの習得を暗記ではなく,知識を作り出すプロセスの習得を暗記ではなく,知識を作り出すプロセスの習得を暗記知識作出習得(問12)。 このような思考が身についている生徒は,「鎌倉幕府の成立は1192年である」という常識と思っているような知識に別の説があることに出会っても驚くことはないでしょう。この説の立論と他の説の立論を,各々分析して比較・対照し,自分はどの説がなぜ最も説得力を感じるかを説明できるはずです。7