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概要

中学社会とSDGs

 SDGs達成のためには,国内外の課題の原因や影響について理解させるだけでは不十分であり,その解決に向けて,将来,実際に行動することができる市民を育成しなければならない。このように考えると,平成29 年告示学習指導要領においてSDGs達成と最も深く関係する公民的分野の内容は,内容「D 私たちと国際社会の諸課題」となる。ここでは,まず,「(1)世界平和と人類の福祉の増大」において,SDGsを採択した国際連合について,その働きなどを学んだうえで,課題解決のためには経済的,技術的な協力が大切であり,国際社会の動きをふまえて我が国の役割を考察,構想し,表現することが期待されている。そして,「(2)よりよい社会を目指して」では,よりよい社会を築いていくために解決すべき課題を多面的・多角的に考察,構想し,自分の考えを説明,論述することが期待されている。 以上のような学習指導要領の内容をふまえて,日本文教出版の令和3 年度版『中学社会』公民的分野教科書では,様々な観点からSDGs達成に向けた取り組みを紹介するとともに,生徒に持続可能な社会を目指して自分に何ができるかを考えさせようとしている。教科書P.206(図1)では,本文において,SDGsは,国際社会全体が目指すも▲ 図1 教科書P.206 持続可能な社会をめざして▲ 図2 教科書P.207 プラスチックによる海洋汚染に立ち向かうのであると同時に,先進国と発展途上国では状況が異なり,重点的に取り組む目標が違っていることや互いの協力や支援が必要であることが述べられている。そして,資料として示された「日本の達成度の低い目標」を見ると,先進国である日本にも,SDGs達成が決して容易ではないことが理解できるようになっている。SDGsが従来の国際社会の取り組みと異なっているのは,掲げられた17の目標が具体的で,2030年という達成期限が明確に定められているという点である。そこで,生徒には,日本の達成度が低い目標を確認したうえで,具体的にその数値がどれくらいで,2030年の目標達成に向けてどの程度の努力が必要であるかを調べさせたい。例えば,女性国会議員の比率は,2018年の時点で10%を少し上回る程度であり,世界の平均に比べると10 ポイント近く低くなっている。この指標を見るだけでも,SDGs達成が,日本にとっていかに困難な課題であるかを実感することができよう。 SDGs達成は,決して他人事ではない。国民の一人として,中学生でも関わることができる課題もある。教科書P.207(図2)のプラスチックによる海洋汚染の事例は,そのことを示してくれている。自分たちの日々の生活が海洋汚染の原因となっており,遠い海に生息するクジラにも大きな影響を与えていること,その問題の解決のために身近な海の清掃に取り組む人がいることを知った中学生が,自分にもできることがないかを考えるようになることが期待されている。 SDGsの目標は多様であり,数も多い。その解決のためには,時間も労力も資金も必要である。そこで,どの目標に学習指導要領との関係と教科書での取り扱い6