ブックタイトルここが知りたい 小学校道徳科15の疑問 vol.4

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ここが知りたい 小学校道徳科15の疑問 vol.4

6 7 このように心情理解をしました。さて,ここからです。これらを「不公平かどうか」という視点で見直してみましょう。 ?は,「不公平だ。」という意見が多く出ました。根拠を尋ねてみると,「女の子だからといって差別してはいけない。」「本人がやりたいのだから,一緒にやればよい。」「同じように,別の遊びで『男子は入れない。』と言われたら,嫌だと思うから。」などです。 ?についても,「不公平だ。」という意見がほとんどでした。根拠を尋ねてみると,「3人で引き受けたことを,1人に任せるのは不公平だ。」「絵を習っているからというのは,任せてよい理由にならない。」などの意見が出ました。 ?については,「公平だ。」という意見がほとんどでした。「同じ量を配っているのだから平等だ。」という意見です。ただし,人それぞれ食べられる量に違いがあるのだから,その人の食べられる量に応じて,減らしたり増やしたりしてもよいのではないかという意見も出ました。なるほどそうかも知れません。 意見が分かれたのが,?です。車椅子の子に「強いボールを投げるのが公平だ。」という意見と,「ゆるいボールを投げるのが公平だ。」という意見です。根拠は,「本人がキャッチボールがうまくなりたいと思っているのだから,強いボールを投げるのが公平だ。」という意見と,「そんなことはっきり言葉で伝えてくれないとわからない。車椅子なのだから,手加減するのが公平でしょう。」という意見。さあ,「公平」とはいったい,どのようなことでしょう。 ここまでくると,もう心情理解の域は超えていますよね。「公平」という道徳的価値についての考え方や感じ方について議論しています。とはいっても,どうするのが公平だという結論を出そうとしているわけではありません。公平について人それぞれに少しずつ違った考え方や感じ方があることがわかると思います。そして,それぞれの人がそうしたいと思っていることを実現できるのが,公平な世の中なのかなという共通理解ができました。 このように,「深める」ひとつの手がかりは,登場人物の心情理解をしたうえで,そのような心情になった根拠を尋ねることだと思います。「なぜ,そんなふうに思ったのかな。」「どうしてそんな気持ちになったのかな。」「もう少し詳しく話してください。」などと尋ねるのが有効だと思います。 大切なのは,わかり合うということです。友達の意見を論破するとか,打ち負かすというのとは違います。道徳的価値についての,友達の考え方や感じ方をじっくり聞いて,自分の考え方や感じ方と比べながら,その違いを認め合うということです。 心情理解をしたうえで,道徳的価値についての考え方や感じ方,生き方のレベルまで「深める」ことが大切です。その心情のもとになった思いを掘り下げることが,自分の内面を見つめ,また相手を理解することにつながるでしょう。 「心情理解」の先にあるものは,道徳的価値についての考え方や感じ方です。価値観と言ってもよいかも知れません。それこそ,生き方です。ということは,道徳科の展開で心情理解のみに終わってはいけないということです。もちろん心情理解は必要です。心情理解をしたうえで,道徳的価値についての考え方や感じ方,生き方のレベルまで深めていきましょうということです。しかし,この「深める」というのが,私はとても難しいことだと感じています。「深まり」がない授業のことを,上滑りとか,浅いとか言います。どうすれば,「深める」ことができるのでしょうか。どうすれば心情理解の先に行くことができるのでしょうか。一緒に考えていきましょう。 5年生の教材「これって不公平?」(C 公正,公平,社会正義)で考えてみましょう。そこには次の4つの場面が提示されています。?ミカさんは一緒にサッカーをしたいけど,男の子たちは女の子だからと入れてくれない。?車椅子のけんたさんは,キャッチボールが上手になりたいと思っているのに,友達はゆるいボールしか投げてくれない。?給食をみんな同じ分量で配ることにした。アヤカは好きではないから少しにしてほしいけど,ユウヤはおなかがすいていたのでもっと食べたい。?3人で紙芝居の絵を描くことになったが,ジュンヤとナナは塾があるからといって絵を習っているアキラに任せて帰って行った。 それぞれの心情理解は,そう難しくはありません。『小学道徳 生きる力 5』P.150・1512 「心情理解」のその先に「心情理解にとどまらず」って,どういうことでしょう。1 「心情理解」のその先へ疑問12 道徳科では,よく「このとき,主人公はどんな気持ちだったでしょう。」と発問します。このような発問には,「うれしい気持ち。」「悲しい気持ち。」などと子どもはよく反応します。これは「心情理解」ですよね。道徳科では「心情理解」が必要ないわけではないですよね。では,「心情理解にとどまらず」ってどういうことでしょう。「心情理解」のその先にあるものは,いったい何なのでしょうか。ミカさん友達女の子だってやりたいのよ。入れてよ。差別しないでよ。取り損ねたら悲しい思いをするから,ゆるく投げよう。男の子たちけんたさんアヤカジュンヤとナナユウヤアキラ慣れてないと危ないし,思い切り楽しめないや。もっと強く投げてよ。上手になりたいんだから。こんなに食べられないな。減らしてほしいな。絵を習ってるんだから,1人で描いておいてね。もっと大盛りにしてよ。おなかがすいてるんだから。1人に押しつけて,ずるいぞ。手伝ってよ。????