ブックタイトル道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

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概要

道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

①教師の姿から学び,教師の想定を超える子どもたちある中学校2年生の〈A真理の探究〉の授業でのことです。授業の導入で,担任の教師が,「真理を明らかにすることは,どうして大切なのでしょう」と,授業のめあてを提示しました。その後,生徒の積極的な発言のやりとりがあった中で,一人の女子生徒が「真理を明らかにすることは大変だが,好きだからできるんだ。そして,苦しい中で真理を探究することは,人を成長させるんだ」と発言し,続いて,このようなことを言いました。「先生もそうでしょ? 今日もたくさんの先生方が来られた中で授業をするのはしんどいと思う。でも,これができるのは,先生は,教師という仕事が好きだからだ。そして,この研究授業を乗り切ったら,先生は成長しているはずだ。」すると,それを聞いていた男子生徒が続けました。「赤ちゃんも一緒だ。赤ちゃんは好奇心の固まりで,色々なものを口に入れるのが好きだから。そして,どんどん成長している。」教師の想定を,軽々と超えた授業です。このような授業に出会えるからこそ,特に中学校の授業は面白いのです。 子どもたちは,日々,様々な経験をして心を育てています。その中で,人との関わりは大きく,その関わりの中に,私たち教職員がいることは間違いありません。②なぜ一つの内容項目か,なぜ学級の問題を扱わないのか「現実の問題は色々な内容項目が関わるのに,なぜ道徳科は一時間に一つの内容項目しか扱わないのか」「なぜ,学級の中で起こっている問題や,学級の子どもが書いた作文を使って授業をしないのか」と尋ねられることがよくあります。確かに,子どもたちがこれから先に出会う問題は,複数の内容項目が絡み合うものばかりです。しかし,だからこそ道徳科は,一つの内容項目で進めるのです。その理由は,道徳科の特質にあります。道徳性は,「日常生活や今後出会うであろう様々な場面や状況において,道徳的行為を主体的に選択し,実践することができる内面的資質」です。つまり,現実のどのような場面や状況に出会うかは分からないのです。そのとき,子どもたちには,自分の道徳性を総動員して深く考え,適切に判断して行動してほしいわけです。当然,様々な内容項目が関わります。それらを,より深く,より広く考え,判断できるようにするために,道徳科で内容項目一つ一つについて深く考えられるようにしておくことが大切なのです。もし,道徳科で複数の内容項目を安易に扱ったら,浅い学びしかできないでしょう。一方,学級の中で起こっている問題は,特定の場面や状況です。そして何より,具体的な解決策を話し合うことになります。これは,学級活動として,しっかりと話し合い,解決を図ることが大切です。道徳科で養う道徳性は,これから先,どのような状況や場面においても,自分の頭の中で多面的・多角的に考えを巡らし,主体的に判断できるような内面的資質なのです。学年「学習指導要領」の内容発達の段階ごとのキーワードとポイント小・低学年(小・低学年は項目なし)小・中学年自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,相手のことを理解し,自分と異なる意見も大切にすること。「自分と相手は違う考え」相手の気持ちを深く考えられるようになってくる中学年です。自分の考えだけしかないと思ってしまいがちだけれど,相手は自分とは違った考え方をすることや,相手の考えをしっかりと聞くことで自分と違った考えを知ることができ,とても楽しくなり,自分の世界も広がることなどを自覚できるようにしましょう。小・高学年自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,謙虚な心をもち,広い心で自分と異なる意見や立場を尊重すること。(中学年の内容)+「違いは豊かさ」意見や考えの違いを,私たちはマイナスに捉え,自分の意見を守ろうとします。しかし,相手は,自分にない見方や考え方をもっています。意見が対立する場合などは,特にそうです。そこで,相手の考え方や意見,立場を広い心で謙虚に受け止めることで,自分の見方や考え方はより豊かなものとなるのです。相手の考え方や意見,立場のもつ値打ちや意義は,自分にとってとても有意義なものであるとして大切に考える「違いは豊かさ」という見方や考え方を自覚できるようにしましょう。中学校自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,それぞれの個性や立場を尊重し,いろいろなものの見方や考え方があることを理解し,寛容の心をもって謙虚に他に学び,自らを高めていくこと。(小学校の内容)+「頑なな自分と開く自分」中学校の段階になると,相手の意見や考え,個性や立場を理解することの大切さは十分理解しているようです。しかし,自分の意見や考えを守ろうとするあまり,相手を理解することを頑なに避けたり,逆に,攻撃してしまったりする心の弱さをもち合わせています。最大の防御は攻撃であるとは,よく言ったものです。「寛容」とは,心が広く,ゆとりがあることです。まさに,相手の意見や考えを受け入れられないときは,自分に心の余裕がないときです。さらに,「謙虚」とは,飾らず控えめであることです。確かに,私たちには,見栄を張り,自分をよく見せようと飾ってしまう弱さがあります。「相互理解,寛容」は,相手に迎合することではありません。自他共に尊重しながら,人それぞれによさがあることとお互いに心の弱さをもっていることを,心にゆとりをもって客観的に捉え,自分を開くことで自らを高めていくことができることを自覚できるようにしましょう。自分を俯瞰できる中学生だからできることです。18 19B 小/中 相互理解,寛容 コラム「 深い学び」の現場からBの視点