ブックタイトル道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

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道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

2 3深い学びのために―道徳の内容の理解― 内容項目のポイント子どもたちにも教師にも,魅力的な道徳科の授業を「特別の教科 道徳」(以下,道徳科)がスタートして数年が過ぎようとしています。子どもたちにとっても,教師にとっても,魅力的な道徳科の授業が実現していますか。子どもたちにとって魅力的であるということは,教師にとっても魅力的で楽しい授業です。どうすれば,この魅力的な授業ができるのでしょうか。それは,「主体的・対話的で深い学び」のある授業に質的転換を図るのです。子どもたちが自分事として考え,友達をはじめ他者との対話を通して,深い学びを得ることのできる授業です。そのような授業を,道徳科では,「考え,議論する道徳」と呼んでいます。では,「深い学び」とは何でしょう。それは,道徳科の目標である,「道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え,自己の生き方(人間としての生き方)についての考えを深める」(カッコ内は中学校の内容)という学びです。道徳の教科化に当たっての課題の一つである「分かり切ったことを言わせたり書かせたりする授業」に関しては,「親切にすることが大切だ」などと,行いや行動レベルの分かり切った授業になりがちでした。さらに,「親切は,された方だけでなく,した方も,そして周りの人たちの心もポカポカと温かくしてくれる。だから,とても素敵なことなんだ」といった内容は,小学校の低学年で考え合いたいことです。ところが,中学校の授業がこの内容に終始すれば,当然,「分かり切ったことを言わせたり書かせたりする授業」になってしまいます。つまり,発達の段階が考えられていない,まさに「深い学び」とならない授業となるのです。つまり,道徳科で「深い学び」を得る授業を構想するためには,教師の側に,学年の発達の段階ごとの道徳の内容の理解が欠かせないのです。個々の内容項目については,「学習指導要領解説」に詳しく示されています。しかし,それを読んだだけでは,なかなか理解することが難しいものもあります。また,道徳科の授業のねらいは,小学校の低,中,高学年,中学校の発達の段階によって当然違います。本資料では,授業構想や道徳の内容の理解に役立つように,この発達の段階による違いを内容項目ごとに解説しています。個々の内容項目の解説に当たって本資料で解説する内容は,主として,小学校,中学校の「学習指導要領解説」を基に,これまで筆者自身が参観してきた授業や研究協議の経験から書いています。当然,「これでなければならない」といったものではないことと,特に,道徳の内容の解釈は,多様な見方が大切であることに,くれぐれも留意してください。小学校と中学校との違いまず,道徳科の目標から,小学校と中学校には違いがあります。例えば,小学校は「自己の生き方についての考えを深める」ですが,中学校は「人間としての生き方についての考えを深める」となっています。小学校は,自分のこととして捉え,これからの自分自身の生き方について考えるというところですが,中学校は,それを踏まえた上で,人間としての自己の生き方という視点が大切です。では,「人間として」とは,どういうことでしょう。私たち「人間」は,弱さと強さの両方をもった存在です。分かっていても,なかなかできないものです。それは,弱さに負けてしまうことがあるからです。実際,中学生も,「何が正しいか」は知っています。そして同時に,「正しいことを実現する難しさ」も知っています。そのことを分かった上で,道徳的価値の大切さについて考えていくことになります。では,私たち人間は,正しいことができないかというと,それを実現しようとする「強さ」もあるのです。その中身が,「自分の誇り」「プライド」「良心」「逃げたくない自分」などではないでしょうか。中学生も,よりよい生き方を実現しようとする人に対して,憧れや尊敬の念を抱きます。また,純粋であるが故に,自らの誇りをかけて自分も実現しようと努力します。しかし,そう簡単にできるものではないため,弱さと強さの葛藤にさいなまれ,自信をなくしてしまったり,自分を肯定できなかったりすることもあるのです。ここに,中学校の道徳科のポイントがあるでしょう。まずは,教材の登場人物を通して,人間としての弱さに教師も含めてみんなで共感するのです。「自分だったらどうだろうか」「あなたたちならどうする」という投げ掛けを「さりげなく」するのです。そうすることで,教材を自分事として考えることができます。そして,正しい行いや行動をした登場人物を支えているものや後押しているものといった視点で,みんなで考え合うのです。このとき,あくまでも教材の登場人物を通しているので,中学生にとっては考えやすくなります。教材を使うことの効果です。そして最終的には,自分の中にも,正しい行いや行動へと向かう「自分の誇り」「プライド」「良心」「逃げたくない心」といったものがあることを,一人ひとりが自覚できるようにするのです。なお,小学校は,「自己の生き方についての考えを深め」ます。それは,自分の生き方を,多様な視点で考えられるようにすることです。つまり,様々な感じ方や考え方,生き方についての自覚を深めるようにすることです。