ブックタイトル道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

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概要

道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック

4 5小学校の低,中,高学年の違いさらに,小学校では,低学年と中学年,高学年の違いも重要です。例えば,低学年の子どもたちは,結果や具体の世界に生きています。中学年の子どもたちは,少しずつ抽象的な考え方ができるようになり,動機を大切に考えられるようになります。さらに,高学年の子どもたちは,自分を第三者的に俯瞰できるようになってきます。したがって,低学年の子どもに対しては,結果に注目させましょう。頑張った結果,親切にした結果,仲よくした結果,きまりを守った結果,「うれしかった」「いっぱいできるようになった」「自分が大きくなった」「やればできると思った」「つらかった」「悲しかった」「モヤモヤした」などです。一方,中学年の子どもには,動機のもつ意味です。「○○といった思いや願いがあったから」という理由を大切にしましょう。それが,正しいことをすることの理由です。しなければ,その思いや願いは消えてなくなってしまうのです。さらに,高学年の子どもたちには,動機に一歩踏み込み,正しいことをすることの理由や意義を,さらに広げて押さえることです。特に,自分を第三者的に俯瞰したり,置かれている状況を広い視野で捉えたりできる高学年です。正しいことをすることの意味や考え方を,より広く,深く考えることができるようにしましょう。なお,これらは,子どもたちの発達の段階に即したものです。道徳科がスタートするに当たって,「学習指導要領解説」では道徳の内容の解説の示し方が変わりました。これまでは,低学年,中学年,高学年別に示されていたものが,内容項目ごとに,同じページの中で低学年,中学年,高学年が示され,中学校の内容も補記されました。一度に,発達の違いを俯瞰できるようになったのです。授業の構想に当たっても,この発達の段階の違いを十分に生かし,ねらいも具体的にもちながら進めていきましょう。4つの視点の違い道徳の内容は,平成元年の「学習指導要領」の改訂以降,4つの視点で整理されています。道徳の内容を考える際,この4つの視点のそれぞれのまとまりの特徴がとても参考になります。それは,次のようなものです。Aの視点……自分との闘い。Bの視点……相手のことを最大限に大切に。Cの視点……集団の中に自分もいる。自分も仲間の一人。Dの視点……ちっぽけだけど,とてつもなく重く,大きなもの。【Aの視点】まず,Aの視点は,「主として自分自身に関すること」です。この内容は,概して,自分との闘いです。私たちはつい,自分の中にある弱さに負けてしまいがちです。でも,自分の中には,正しいことをしようとする心,自分のよさ,これではだめだという気持ちなどがきちんとあるのです。それを信じ,自分の弱さに打ち克つこと。そして,打ち克ったとき,心の中に,喜びや自分に対する自信をもち,成長して大きくなった自分を意識することができるのです。【Bの視点】続いて,Bの視点は,「主として人との関わりに関すること」です。私たちには,相手のことを考え,相手のために自分ができることをしようとする思いがあります。ところが,それを阻むのが,「自分」です。「自分のことを分かってほしい」「認めてほしい」「感謝してほしい」といった思いが,ムクムクと湧き起こってくるのです。しかし,自分は,相手のためにできることを懸命に考えていたはずです。相手のために自分を犠牲にするのではないのです。素直に,ひたすら相手のためを思っていたのです。さらに,相手は自分にないよさをたくさんもっています。相手から素直に学ぶことも大切です。これらのことを再認識し,相手に対して自分が今なすべきことを考えるのです。【Cの視点】Cの視点は,「主として集団や社会との関わりに関すること」です。私たちは,決して,一人で生きていくことはできません。必ず,何らかの集団や社会の中で生きています。しかし,私たちはそれを忘れ,自分一人で生きているように思ってしまいます。集団や社会の中で生きているということは,自分もまた,それを構成するメンバーの一人である,すなわち,自分も仲間の一人ということです。そうすると,誰かがすればよいと思っていることは,当然,自分自身にも向けられます。「誰か」の中に,自分がいるのです。集団や社会の向上の責任は,自分も担っているのです。【Dの視点】最後に,Dの視点は,「主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること」です。生命,自然,美しさ,人間は,とても小さく,弱いものです。しかし同時に,それらは,とてつもない大きさ,強さ,重さ,広さ,深さをもっているのです。このことを謙虚に受け止め,その大きさ,強さ,重さ,広さ,深さの内実を考えることが,それらを尊重する心へとつながっていくのです。道徳の内容をしっかりとつかもうでは,それぞれの道徳の内容を見ていきましょう。以下のページでは,内容項目ごとに「発達の段階ごとのキーワードとポイント」を述べています。授業構想,ねらいや教材の分析などに生かしていただけるものと思います。なお,キーワードは,授業において子どもたちの発言の中から学びを深める意見を見つけ,立ち止まるための指標にもなります。