ブックタイトルいっしょに考えよう図工のABC
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いっしょに考えよう図工のABC
むすびにかえて子どもたちの帰った教室で,子どもたちの机を眺めながら,今日,あの子は,「みんなの前で大きな声で発表したなあ。」,あの子は「鉄棒で,ひざを擦りむいたのに,泣くのを我慢したな。」と,その成長ぶりを確かめたりする。でも,「あの子は今日どうしていたかな?」,どうしても,様子が浮かばない子がいる。教師としての力のなさを悔やむ。机の傍まで行ってみる。机の中につくりかけの工作をみつける。「あっ」と心が躍る。「こんなところまで工夫している。」「これは家族だろうか。」などなど,その子の思いや工夫を見て取ることができる。明日は,この工作をつくり続けるだろうか。どんな気持ちでつくるのだろうか,楽しみが増えた。明日の子どもたちの笑顔を想像しながら,教師としての一日を終える。教師の仕事に際限はない,教材研究もまた,限りない子どもへの愛情を元に「この授業で,子どもたちは喜ぶだろうか。」と,あらかじめ子どもがつくるときと同じ条件で,つくりながら考える。自分自身に,つくる喜びが生まれないとしたら,子どもに喜びを強要することになる。この教材には,子どもの思いを引き出す魅力があるか,材料は集まるだろうか,丁寧につくるあの子にも時間も保障できるかと,子どもや授業のことで悩みは深まるばかりである。どうだろう。こんな至福の時間は,他にあるだろうか。明日の授業のことを考える教材研究の時間は,教師のための図工の時間ではないだろうか。また,事前につくることを通して,教師の思いをふくらませると同時に子どもの思いに考え巡らす時間でもある。その時,教師のまなざしだけで授業づくりを進めるとしたら,子どもに対して「教え」を強要することになりかねない。大切なのは,子どものまなざしを授業づくりに照射し,子どもの立場で何度も考えることである。それでも実際の授業では,子どもの考えや思いとの間にズレが起こる。そのズレを受け止めつつ判断し対応するのが授業の面白さである。図工の時間に発揮される子どもたちの魅力が,次の図工へと駆り立てる。図工は子どもの見方。子どもの味方は図工。学校は夢や希望をはぐくむところ。北海道教育大学岩見沢校阿部宏行abe.hiroyuki@i.hokkyodai.ac.jp発行日平成24年4月吉日1954年生まれ。北海道教育大学岩見沢校准教授。評価規準,評価方法等の研究開発に関する検討委員会(小学校図画工作)委員,学習指導要領の改善等に関する調査研究(小学校図画工作)協力者などを歴任。主著:『図画工作の指導と評価』(東洋館出版社,共著),『観点別学習状況の評価規準と判定基準(小学校図画工作)』(図書文化社,共著),『私がつくる図画工作の授業』(日本文教出版,共著)48