ブックタイトルいっしょに考えよう図工のABC
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いっしょに考えよう図工のABC
date:言葉にならないこと私たちが生活する上で言語活動が大切なのは,人に思いを伝える,人から言語を通して得られた情報を生かして,よりよい自己を目指すことにつながるからと言える。人に伝えるには,わかりやすく,そして正確に内容を伝える必要がある。そのためには,論理構成や言い回しなど考えなくてはならない。ここに「言語活動」に関する資質や能力が働くことになる。表現を伴う図工や美術は,手で考えると言われるほど,自身の感覚を総動員してつくり出す教科である。造形活動には,「言語活動」の源流がある。それは誰かに何かを伝える言語活動ではなく,きれいな花や夕焼けをみて「きれい」とつぶやいたり,ささやいたりする内部対話である。それは感性の働きによるものである。その上で,人に「あの花,きれいだね」「美しい夕焼けがみえるよ」と伝える言語活動が必要になる。相手に伝えるためには,知識のみならず方法や練習なども必要になる。現代思想家・吉本隆明の『芸術言語論』では,「ああ…」と思わずもらすような感嘆の言葉を「自己表出」といい,また,誰かに伝える言葉を「指示表出」に分けて表している。*自らの内面から生成される芸術は「自己表出」の世界を舞台とするとしている。五感を通じて発せられる「自己表出」や,言葉にもならない沈黙や溜息などが芸術の領分なのである。もし,相手に伝えることのみを重視した「指示表出」の言葉だけの言語活動に終始し,驚きや感動などの感性が伴わない,伝える技法だけの言語活動だとしたら虚しい。*吉本隆明『定本言語にとって美とはなにかⅠ』角川選書19906