ブックタイトル子どもと先生を育てる授業のABC
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子どもと先生を育てる授業のABC
28子どもに見えても大人には見えない子どもと大人の見方のちがいは,「大人は見えるものしか見えない」が,「子どもは見えないものも想像しながら見ている」ということです。『星の王子さま』の冒頭のウワバミの絵もそうです。サン=テグジュペリや「アンパンマン」のやなせたかしには,見えないものも見えていたのかもしれません。「となりのトトロ」の宮崎駿にも見えるのかもしれません。トトロは子どもにしか見えないので,大人になるのは少しつまりません。大人は視覚優位になって,見えるものだけにとらわれ,子どものころに見えていたものが見えなくなっていることを自覚することです。ある1年生の図工の時間でした。ウサギの絵をかくために,子どもたちは事前にウサギ小屋を訪れ,ウサギを触ったり,餌を食べさせたりしました。そして先生が,「さあ,ウサギさんをだっこして,教室に戻って絵をかくよ」といいました。すると,子どもたちは,両手を胸の前で開いて移動をはじめたのです。大人には,子どもたちのウサギは見えません。子どもは自分の机の上に,そっとウサギを置きました。子どもたちは,クレヨンで自分のウサギをかき続けました。時折なでるような仕草もしながらかき上げました。授業終了後には,また,そのウサギを飼育小屋まで戻しにいったのはいうまでもありません。それでは,いくつまでが子どもなのでしょうか。映画「子ぎつねヘレン」の原作者竹田津実は,自然あふれる北海道で獣医をしていました。ある講演で,「先生,この子を助けて」と道端で倒れていた死にそうな小動物を抱えて獣医のところに来るのは,小学校5年生までで,65歳以上も同じようにやって来るといっていました。大人って何でしょう。ものや動物に無関心になることなのでしょうか。ものや動物に心を通わせることのできる素敵な子どもの時間をいつまでももち続けたいものです。3子どもがみえる子どもの時間は子どものものです。※サン・テグジュペリ,河野万里子訳『星の王子さま』新潮文庫2006※中村雄二郎『共通感覚論』岩波現代文庫200035