ブックタイトル子どもと先生を育てる授業のABC
- ページ
- 5/52
このページは 子どもと先生を育てる授業のABC の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 子どもと先生を育てる授業のABC の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
子どもと先生を育てる授業のABC
はじめに幸福は力になる幸せって何でしょう。今から20年ほど前に,「子どもの夢」のアンケート調査で,東アジアの子どもたちの夢には「お父さんの仕事がほしい」「学校に清潔なトイレがほしい」など,自分のことより,他の幸せを願う夢が寄せられました。その時,日本の子どもたちからの回答は「ゲームがほしい」など,自分のことばかりでした。それを見て当時は,日本の子どもたちにがっかりしたことを覚えています。自分のことだけではなく,他の人たちの幸せを願う子どもたちになってほしいと思いました。それでもこのごろは,考え方によって自分の幸せや願いを表現できるのは,私たちの国が平和で,安心して生活できている現れではないか,と思えるようになりました。普通のことが普通にできる幸せは,「学校」にも普通に行くことができるという安心の上に成り立っているということです。その学校が,子どもたちにとって幸せを育む夢や希望に満ちていて,それも普通に得られるとしたら,この国はとても幸せなのではないかと思うのです。けれども,大人の都合で「幸せ」を感じることのできずにいる子どもたちが存在するのも事実です。真の「豊かさ」が問われています。学校や教育に対して,騒ぎ過ぎる大人が多いのではないでしょうか。教室では,今も夢や希望が育まれています。教室での営みを感じ取ることのできる大人が,教育の問題の是非を問えるのではないでしょうか。子どもたちは冷めた目で,騒ぎ過ぎの大人や社会を見るようになります。子どもは大人を見ています。大人は子どもの目を直視できているでしょうか。今,子どものまなざしをしっかりと受け止める大人の度量が試されています。こ吉野弘が誕生した娘に贈った詩があります。この願いは,私たち大人すべての願いと同じです。「お父さんがお前にあげたいものは健康と自分を愛する心だひとがひとでなくなるのは自分を愛することをやめるときだ。自分を愛することをやめるときひとは他人を愛することをやめ世界を見失ってしまう自分があるとき他人があり世界がある」*1)誰もが,自分を見失わず,人とともに生きることを願っています。私たち大人は,子どもに何を保障すると誓えるのでしょうか。求めるのはそれぞれの「幸福」です。幸福は力になるのです。*2)私たちには,子どもたちの幸福のために何ができるのか,問われています。*1)吉野弘『奈々子に(吉野弘詩集)』岩崎書店2009*2)三木清『人生論ノート(三木清全集第1巻)』岩波書店1966※暉峻淑子『豊かさとは何か』岩波新書1989※加藤秀俊『生きがいの周辺』文春文庫19763