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概要

新・図工のABC

54なるほど4平成元年の学習指導要領に「生活科」が誕生しました。これまでにも,1・2 年に音楽と図工の学習を併せたような教科の案が浮上しました。教科とはいったい何なのでしょうか?宮脇理は,本末転倒の不条理の世を寺山修司の詩の一節を引きながら語ります。「肖像画に/まちがって髭(ひげ)を描いてしまったので,/仕方なく髭を生やすことにした/門番を雇ってしまったので/門を作ることにした(後略)」*1箱をつくると,中身を入れたがり,それも,あれもこれもと入れたがります。これもあったほうがいいといって,入れてしまいます。入れてしまったあとに,何が目的で箱を用意したのかも,入っているものさえわからなくなるという本末転倒の世界です。授業時間数の確保と教科の本質的な論議があって,目的が明確になるのであればまだしも,合理性や生き残りという名のものとに,「まちがって髭を描く」ようなことがあってはならないのです。「感性や想像力を働かせる」「つくりだす喜びを味わう」「創造しようとする態度」「情操を培う」「造形的な創造活動」など,教科存在の根本を見据えた上で論議でなくてはなりません。先の寺山修司の詩は次のように続きます。「一生はすべてあべこべで/わたしのための墓穴を掘り終わったら/すこし位早くても/死ぬつもりである」「もっと行動していたら」「もっとがんばっていれば」と「たら・れば」で終わることのないように図画工作の意味や価値を子どもから学びたいと思います。*1 宮脇理編『現代美術教育論』建帛社 1985 p 256失くしてしまったあとに「 たら・れば」にしない・ 宮脇理編『4本足のニワトリ 現代と子どもの表現』国土社 1998・宮脇理『感性による教育 学校教育の再生』国土社 1988参考文献