ブックタイトル教育情報No.7
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教育情報No.7
特集夢と挑戦、キャリア教育建築家の仕事と社会貢献建築家坂茂大工さんになりたかったいつから建築家になろうとしていたのだろうか。幼いときに家に来る大工さんの仕事ぶりに興味を持ち、また、材木のかけらをもらっていろんなものをつくるのが好きだった。小さいときには大工さんになりたかったのだ。家をつくるのは大工さんしか知らなかったからだが、「建築家」という職業を意識したのは中学生のときであった。当時、中学2年の技術・家庭科に自分の住む家を設計するという授業があった。夏休みの宿題ではその設計図をもとに模型までつくるのである。大部分の同級生がプランを立てるのにもたいへん苦労していたのに、わたし自身にはとても簡単に、楽にできてしまった。模型づくりも楽しかった。今も覚えているが、片方の屋根に勾配をつけた2階建ての住宅で、リビングには吹き抜けがあった。庭もつくり込んでいた。庭に植えた木をひねると室内の電気が点灯するような仕掛けまでつけていた。外壁にはさまざまなフェルトを貼り込んでいた。実を言うと、前年の1年生のときには近所の先輩の模型づくりの宿題を肩代わりして制作していた。2年生になって自分のプランを模型にするのが待ち遠しくてならなかった。それほど建物をつくるということに魅了されていたようだ。「建築家」と「建築士」の違い「建築家」と「建築士」を混同している人は多い。この違いは、料理の世界の料理人と調理師の違いに似ている。「調理師」とは国家資格であり、一定の衛生知識などを有しているので、給食センターに勤務する際などには取得が必要とされる。また、飲食店を開店する際にも1名は調理師の有資格者が従事しなければならないらしい。そしておいしい料理がつくれなくても調理師の資格は取得できる。一方「料理人」と名乗るのは、おいしい料理をつくることを目指し、またそれに自信を持つ者である。必ずしも調理師の資格は必要ではない。「建築士」というのは調理師と同じで国家資格の一つであり、大学院を卒業すれば一級建築士の受験資格が得られる。「一級建築士」になるのが夢だと言う学生も少なくないが、現場での建築経験がなくても、机上の学問を修めていれば、建築士にはなれる。「建築家」とはよい建築をつくることを目指し、またそれに自信を持っている者であり、料理人と同様、資格とは本質的には無関係である。建築を学ぶ学生には、建築家になるのを目指してほしいと考えている。よい建築とは感動を与えるものところで、おいしいものを食べたことがない人にはおいしい料理をつくることはできないのと同じく、よい建築体験のない人には、よい建築をつくることはできない。それでは、よい建築とはどんなものであろうか。ひとことで言えば、訪れるたびに新たな感動を生み出す建築である。それが古民家であったり、数寄屋造りの住宅であったりする場合もあるだろう。職人の技がすばらしかったり、建築家の趣旨がはっきりとわかるものである。使いやすさばかりを追求したものでもないのが面白いところだ。どこに感動するかは人それぞれだろうが、わたし自身は、気候や天気に呼応して、行くたびに違う体験ができるのが、環境と一体となったよい建築だと考えている。たとえば、ル・コルビュジエの設計したロンシャンの教会は、幾度訪れても、そのたびに新しい感動や発見がある。建築を目指す人はもちろん、そうでない人も多くのよい建築に04No.7