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概要

教育情報No.7

教育クローズアップ!の現場未来に輝く子どもたちのために~熊本市の不登校対策「ユア・フレンド事業」~熊本市教育委員会事務局総合支援課教育相談室指導主事中島幹記現在全国の不登校児童生徒数は11万人を越え、不登校の問題は大きな教育課題の一つとなっている。本市においてもここ数年、600人を上回る児童生徒が不登校状態にあり、学校現場を中心に様々な対策がなされているが、その中でもこれまでの不登校対策とは異なる視点で取り組むユア・フレンド事業がある。熊本市のユア・フレンド事業とはユア・フレンド事業は、平成14年度に熊本市教育委員会と熊本大学教育学部が連携協力して行う不登校対策としてスタートした。本事業は、大学との連携という点でも全国から注目されているが、何と言っても特筆すべきは、他の不登校対策とは趣を異にするその目的「児童生徒と年齢の近い大学生を学校や家庭に派遣し、学生が話し相手・遊び相手となることで、子どもたちの心の居場所などをつくる」にある。つまり、ユア・フレンド事業とは、学校復帰を目的とせず、不登校となった児童生徒の『心に寄り添う』活動なのである。ユア・フレンドの派遣依頼は、まず保護者から学校を通して行われる。その後大学から推薦を受け、登録した学生を、状況に応じて熊本市教育委員会が各学校・家庭に派遣する形をとっている。これまでの成果としては「子どもの表情に笑顔が出た」「外出ができるようになった」等の報告が多数あがっている。また、「毎日ではなくとも登校できるようになった」「教室に入ることができるようになった」等の報告もあり、本事業が熊本市の不登校対策としていかに重要な役割を担っているかが分かる。学生たちの「意見交換会」昨年度(平成25年度)のユア・フレンド登録学生数は180人、総派遣回数が1978回にものぼる。その活動を支えているのが、学生たちに対する研修会の存在であり、その中でも年間2度実施する意見交換会は、活動をしていく中での悩みや考えを学生たちが出し合い、自らの活動を見直す貴重な場となっている。会の中では、「自分が自然体でいた方が、子どもが緊張しない」「相手を理解しようとする気持ちが大切」という学生自身の学びや、「半年間で20回の訪問を行ったが一度も子どもと会うことができなかった」等、粘り強く活動を行う学生の姿に触れることができる。こうした学生の一つ一つの発言に教育委員会職員・大学教授が耳を傾け、アドバイスをおくる風景が見られるのも、この研修会の特徴の一つと言える。【意見交換会班別協議の様子】熊本市の子どもたちのために現在活動を行っている学生の大半は、将来教職の道へ進んでいく。このユア・フレンドでの経験が、子ども一人ひとりの思いに寄り添う教師としての資質を高め、それがやがて本市の教育を支えていく力になるものと確信している。未来に輝く熊本市の子どもたちのために、今後も本事業のさらなる充実発展に全力で取り組んでいきたいと思う。No.7日文教育資料平成27年(2015年)1月1日発行CD33258