ブックタイトル心の復興を支える アーク・ノヴァ
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心の復興を支える アーク・ノヴァ
■しなやかに順応上左:アーク・ノヴァ平面図、上右:アーク・ノヴァ断面図、右:構想段階での模型。ホール自体だけでなく、イベントを行うための周囲の環境も想定する。下:約500人収容のホール内はレイアウト自在で、多様なジャンルの公演が可能。ホール内上部には浮き雲のようにヘリウムバルーン照明が浮かべられ、音響のアシスト役も担っている。オーケストラ室内楽現代音楽のプロジェクトの経済的な支援を行う意向を固める一方、友人で建築家の磯崎新さんが『移動式のホールにしよう』という斬新なアイデアを出してくださいました。被災地では数々の建物が傷付き、使えない状態にあります。それなら自らホールを携えて被災地へと赴けばいい」移動式ホールのデザインとして磯崎氏が思い浮かべていたのは、彼の親友で彫刻家であるアニッシュ・カプーア氏の作品だった。その時カプーア氏がパリで展示会を催していると聞いた梶本さんは、すぐさま現地へと飛んだ。そこで目にしたのは、茄子色のPVC(ポリ塩化ビニル)素材による、大きな風船状のインスタレーション『リヴァイアサン』。聖書に登場する巨大な海の怪物の名を冠した作品だ。回転ドアをくぐってその内部に入ると、薄い膜を透過する陽光が周囲を赤く染め上げていた。「空間そのものがパワーを持っていましたね。生きていくモチベーションを得られる、そう感じました。家族を失い、街を失ってしまった人たちにも、この感覚を共有してもらえたら……と」磯崎氏はまた『まれびと』というコンセプトも携えていた。まれびと(稀人・客人)とは、民俗学者の折口信夫が「異界からの客人が信仰や祭事をもたらし、社会を活性化させてきた」という概念を表すために用いた言葉だ。移動式のホールでいくつもの被災地を訪れ、芸術を通じて人々の心を癒やしていく。業種の垣根を跳び越えた、そんなプロジェクトの全体像が見えてきた。文化・精神の長期的な復興に向けて、このプロジェクトは「新しい方舟」=アーク・ノヴァと名付けられた。「前例のない移動式ホールということで、実際につくることも、また行政との調整にも苦労しました。無いものをつくるというのは、やはり想像以上に大変でしたね。構造強度の問題、音響の問題、客席の椅子の問題。また雨が降ったら、雷が落ちたらどうなるのか。空気が抜けたときに中の人は逃げられるのかなど、それこそ考えなければならないことは山のようにありました」しかしそこは各分野の専門家が集まって立ち上げたプロジェクトである。山積されていた課題は一つひとつクリアされていき、そしてついに―2 0 1 3年9月2 7日、「ルツェルン・フェスティバルアーク・ノヴァ松島2013」が宮城県松島町の西行戻しの松公園にて開幕された。ホール内に設置されたベンチは、宮城県石巻市の「石